賢者の末裔の戸塚あみさん
貴女は誇り高き「賢者」の末裔なのよ!もっとしゃんとしなさい!!
幼い頃から私は母のこの言葉を聞き続け育った。
母はとても厳しい人だった、一度でも魔術に失敗すれば金属製の杖で殴られた。
「どうしてこんな簡単なことも出来ないの!?」
「………ごめんなさい……お母さん。」
こんなやり取りが一日に百回は繰り返される。
殴る、殴る、殴る、殴る………なんでこんな事もできないの、と狂ったように母は私を毎日殴りつけた。
そんな母が私は怖かった、嫌いだった、気持ち悪かった、憎かった、殺したかった
……だから、私は母を---------
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「諸君!まずは入社おめでとう!私達エルクシアは君たちを歓迎する!」
壇上の上で社長の加藤千和が大きな声で入社式開会の宣言をした。
今年の春に私は賢者の末裔だけで構成された組織、通称“エルクシア”に入社した。
理由はただ単に他の職業に比べて給料が高かったから、それと母の_____
「では!入社試験トップの成績の戸塚あみさんに挨拶をしてもらおう!」
……呼ばれた、事前に知らされていたもののすっかり忘れていた。私はできる限り大きな声で返事をし、壇上にゆっくり上がる。
壇上を登りきると私は周りを見渡し言葉を紡ぐ
「戸塚あみです、以後お見知りおきを……まず私達新入社員の為にこの様な盛大な式を催して頂き誠にありがとうございます。先程は社長の温かい言葉を頂き身にしみて感激しているところであります。新入社員一同を代表して心からお礼申し上げます……」
そんなテンプレートな言葉で埋め尽くされた代表挨拶を終え、私は元の席につく。
「では!賢者に栄光を!!」
エルクシアの入社式はそんな言葉で締められた、やっと開放された……と思ったのも束の間
「きゃぁぁぁぁぁああ!!」
悲鳴がすぐ後ろから聞こえた、声の高さからして女性だろう。悲鳴が伝染する……
ゆっくりと私は振り返る。
そこには……腕のもげた女性と、そのもげた腕をしゃぶる魔族がいた。
「お前……!どこからきた!?」
魔族は基本アメリカの方に巣を作ってるはずなのに……なぜ?
「お前も…喰う!」
魔族が悪魔的な速さで私に迫ってきた、完全に不意打ちだ。
-----これは、避けられないなぁ
私が最後に見た光景は大きな口を開けた醜い醜い魔族の顔面だった。




