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めぐりあわせ6  作者: のぼり
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ままならない想い

「最近、保さんと会ってる?」いきなりの保に関する問い掛けに絵理子は慌ててさきをみる

「いきなり、何よ。保とは会ってない。心配ご無用」絵理子は、突き放すように答えた

「近所なのに顔も合わせないの?」「時間がずれてんじゃない?」「絵理子さんが避けてるのね。」「そんな事ないよ。どうして決定事項なのよ!」「だってそうでしょう?」「だから違うってば。」「保さんが言ってたわ、いつも、会う時間にすらスレ違う事も無いって」「何よ。いつもの時間って」「私に判るわけないでしょう?あなたたちの間なんだから」「兎に角、さきの邪魔はしてないよ」「そうね。有り難う、でも絵理子さんの事が二人の会話の大部分を占めているから絵理子さんの事が心配な保さんの気持ちは絵理子さんに向いているの。違う形で邪魔しているって事よ」「そう?私は無関係だと思うけど?勝手に心配しているのは保でしょ、こっちが頼んだ訳じゃない」「保さんと絵理子さんが良好な関係を築いてくれないと私の出番が永遠にやってこないのよねぇ…」「そんな…。私にどうしろって言うの?」「そうね。取り敢えず以前の様に連絡しあったり、食事したりする事ね」「はぁ?何で彼女のできた幼馴染みとご飯食べたり、連絡とらなきゃいけないのよ!」「まだ彼女じゃないわ。幼馴染み2号と言うところね。絵理子さんへの心配が消えない限り私との進展はないと思うの。絵理子さんは私と保さんが結婚したら良いって言ってたけれど、やはり嫌気がさした?」「そんな事ないよ」「では、先ず保さんと以前の様にご飯やらお酒やら付き合って上げて。私もそうそう訪ねていけないから。他の人に奪われるのも嫌だし」絵理子の目を見ながら話す「さきって意外にヤキもちやきなのね。イメージが変わる」「そうかしら。好きになったら積極的になるだけよ。今まで、素性のわからない自分が怖くて本気で誰も好きになれなかったから。」「さき…。わかった。協力するから」「有り難う。絵理子さん」ニッコリ笑って絵理子のてを握る「気になることがもうひとつあるの。」「何よ」不安そうな絵理子の手を握ったまま「絵理子さんは好きな人居ないの?」「居ないよ。」「私の為に犠牲になっては嫌だし、本当の事言ってください」「本当よ。職場にも尊敬する先輩はいるけど、恋愛感情はない。そんな余裕無いわよ!」「そうなの?もし、好きな人が出来たら教えてね。」「わかった」

一月たったある日、近江課長から研修の打診を受けた。半年間の長期間、他県の業務に着くのだ。交流するのでさきのポジションは他県の職員が務めるのだ。本来は岸川が該当だったが本人は、早退した後、有給をすべて使い、無給の休職申請を出していた。そんな岸川が復帰する気があるとは思えないのでさきに打診されたのだ

「清水さんが研修行くの?」先輩の高城から尋ねられた「はい、でも急なことなので両親にも相談してお返事することにしました。同期も居ないので相談仕様がなくて。」「自身はどう思ってるの?」「せっかくのチャンスですので挑んでみたい気がします。でも他県の業務をこなせるか経験が浅くて迷惑をお掛けしないか心配です」「清水さんが心配って言うなら全員そうだよ。俺よりよっぽどしっかりしているし、業務も理解しているし、何の不安も無い」「ありがとうございます。そんなにおだててもお茶しか出ませんよ?」「本当に誉めてるんの。でもさ、清水さんが淹れたお茶も飲めなくなるってことだな。淋しいなぁ」「自分で淹れろ」ポカッと音がして杉山班長が呆れている「高城じゃないけれど、清水さんの仕事ぶりは高評価するよ。もっと自信をもって良いと思う。僕らだって、人物を見て研修対象者の判断をしたんだ。近江課長も僕も高城もイチオシだった。勿論、一年早まったから予定していない事だから迷う事もあるだろうから、必ずじゃないし、来年以降もチャンスはある。無理にじゃないからね❗」杉山班長は、優しく諭すようにさきに話し掛けた「はい、良く考えてみます」

(正直、自身の出生や親の事が判明して色々な事を考えているので長期間自宅を離れることは得策では無い気がしていた。いつか受けなくてはいけない研修なら早く受けてしまった方が良いかもしれないとも考える。家庭を持ってから研修を受ける人もいる。さてどちらが優先されるべきか…家族にも相談してみなくては。)

「お疲れ様…。清水さん。」「足立さん、お疲れ様です。企画書残念でしたね。」「うん悔しいけど、経験がものを言うんだって実感したよ。おかげで通常の業務に戻れたし、僕の番じゃなかったんだよ」「そうね。またチャンスがあったら頑張りましょう」

さきと足立はイベント企画で先輩グループと競ったが勝てなかった。頭で考えても実際に言葉にすることの難しさ、実現させる事の難しさを痛感したのだった

「それが原因かわからないけれど、今度他所へ行くことになりそうだ」足立が呟く「他所へ?」さきが驚いて立ち止まる「そうだよ。本庁とは違う先に出向させられるらしい」「それって…。」「君は問題ないよ。僕だけだから」「企画書は二人の案ですよね?」「生意気だったのは僕だけだし。」「どうしてそんな事になるの?大体、楯突いた訳じゃないし、企画書を出すことは違反じゃないでしょう❗処分されるみたいな感があるのはどうしてなの?」「いやぁ。そういわれた訳じゃない。ただね、このタイミングだと処分された感があるからね。」「私も同じ様に処分されなきゃおかしいでしょ?」「君は、僕のサポートをしただけだし、主は僕だからさ」

「そんなのおかしいわ、誰かにそう言われたの?」「いや、違うけど」「ちょっと確認します」そう言ってさきは部署に戻って行った

「課長、班長お聞きしたいことがあるのですが?」ただならぬさきの言葉に上司二人が立ち上がった

「何だ。どうした?清水さん」「いつになく慌ててる?」二人の上司はいつもの通り穏やかである

「先程の研修のお話ですが、あれは企画書への当て付けなのですか?本当にこんな下らない事があるんですか?」「答はyes、な訳無いだろう。俺がそんな異動許すわけが無い。良いか、清水さんの早期の研修にヤッカミがあるのは事実だ。企画書の提出も自由なんだから問題も無い。かえって良い企画だったと評判だった。だから、早期の研修に二人とも選ばれたんだぞ」近江ははっきりと答えた「そうなのですか?足立さんは見せしめに異動させられるって落ち込んでいました」「清水さんでも見せしめはショックなんだ?」「いえ、私ならかえって見返す努力をします」「そう。頼もしいな、見せしめとは全く違うよ。二人とも、実力を認められたんだ。心無い人間がいるのも事実だ。情けないけれどね。」杉山はさきの顔をしっかり見て答えた「足立に誰が何を吹き込んだのか知らんがそれは事実ではない。」近江が大きなハッキリした声で答えた「ありがとうございました。大変失礼なことをして申し訳ないです。」「良いんだよ。こんな表情をした清水さんを視るのは新鮮だった」楽しそうに近江は笑った「はぁ?」戸惑うさきに杉山が「気にしないで良いよ帰ってゆっくり休みなさい」帰る様に促した「はい、お疲れ様でした。失礼します」

さきは急いで外に出て、足立を探した

「清水さん。何処に行ってたの?」「課長に伺ってきました」「何を?」「研修の事です」「研修?もしかして君も?言われているの?」「はい、課長と班長は信頼できる方達ですから」「君も信頼されてるんだね。直談判に行くなんて驚くよ」「こういうことは、ハッキリさせることが大事でしょう?今後の自分がどう対処するか対面してわかるもの」「君は怖いもの知らずだね、もし噂が本当だったらショックじゃないの?」「ショックだから確認に行ったんですよ、そのまま進む方が嫌じゃないですか?」「戻ってきた後に見返せる力をつけたいじゃないですか、そう思えばどうって事ないですよ」「強いなぁ」「そうでしょうか。どんな理由で異動させられても自分に課せられた事をこなしていけば良いんです。」「うん頭では割り切っていたんだ。でも色々聞こえてくると凹んじゃってさ。」

「優秀な足立さんも凹むんですね。」「そりゃあ。僕だって人間ですから。」「良かったです。反応が人間的である意味ホットしました」

「清水さんは何処に配属されても良いの?」「未だ決まってない事ですよ。足立さんはもう分かっているの?」「いや、でも関東近辺じゃないかって」「根拠は?」「僕らは急遽決まったから本格的な研修と違うからね」「私は思いっきり遠くでも良いわ。甘えないように、簡単には帰ってこれないところ」「そう言うものなのかなぁ」「人によるけれど、初めての研修だし、厳しい条件が良いと思う」

「清水さんって受け身なタイプだと思ってた。でも勝手な思い込みだった。」「それこそ勝手な思い込みじゃないですか?」さきは笑って答えた「では、君も研修を受けるんだね?」「いえ、私は未だ決めていません。今日課長から打診があって考えさせて下さいって返事しました」「僕の上司は打診じゃなくて受けるのが当たり前って感じだった」「それで勘違いしたのね?」「うーんそうなのかなぁ?」「もう。人騒がせな人ね」さきはため息を着いた「ではまた明日ねお疲れ様でした」立ち去るさきに足立は追い付いた「一緒に帰ろうよ。今日は電車でしょ?」「ええ、今朝は雨が降っていたので自転車通勤は、諦めました」「方向一緒だから」そう言って足立はさきと並んで歩く

 企画書の件ではよく一緒に帰っていたのだが久し振りであった。

「どこかでお茶でもどう?」「いえ今日は家族で相談することもあるので遠慮します」「そっか…。研修の事、親御さんは心配するよね?若い女性に単身で半年も離れるなんて」「ええまぁ。心配性でもあるので徐々に説得していこうかと思っているので」「清水さんは行きたいの?」「いずれ行くなら今の方が面倒事も少ないかと…。」「面倒事ねぇ…。」「僕は行くのが当然だと思っていたから家族は二の次だよ」「食事の事とか親御さんは心配なのでは?」電車が来て二人が乗り込んだ車両は各駅停車である。混むのが嫌で少しでも空いている各駅停車に乗るのだ「僕に親は居ないよ」「えっ、初めて聞きました。そうだったの?」「正しくは居るけど居ないよ」「どういう意味ですか?」「僕と姉は祖父母に育てられたんだ」「お姉さんがいらっしゃるのね。羨ましいわ」「ちっとも…有り難くないよ」「実際にいる人は皆そう言うのよね、でもきっと有り難みに気付いていないだけ」ふっと笑ったさき「本当に面倒な姉と母親なんだ。一緒に居なくて静かでいられる。あの人たちが傍に居たら頭が痛くなるよ」「賑やかな方達なのね」「賑やかと言うより騒音だよ。関わり合いたくない」「女性は賑やかなものよ」「君の様に静かな人が好きなんだ」「好みはそれぞれですものね」

「父のセンスを疑うよ。一体どこが良いのか僕にはわからない」「酷い言い方するのね。」「本当にそう思っているから。祖父母も母が居ると煩いって言ってる」「別々にすんでいるの?」「両親は関西に住んでいるんだよ。僕が四歳の頃から」「そんなに幼い時から?」「だからさ、居ないのが日常化しているのさ。でも三つ上の姉が居たから充分賑やかだったけれど。姉も口が達者でさ、たまに帰ってきた母と喧嘩ばかりしていた」「そうだったの。コミュニケーションのひとつだったとか?」「僕が感情表現が苦手なのはそのせいだと思っている。決して心地よい雰囲気ではなかった」「…。」「でも姉は今、海外に拠点を移しているからほとんど会うことはないよ。メールはやたら来るけど。」「良いお姉さんじゃないですか、弟が心配なんでしょう。」「僕も充分大人だけどね」「三つ違いは縮まらないもの。」横浜駅を過ぎてさきの降りる駅に近づく「ではまた、お疲れ様でした」さきは、昇降口に立った「待って送るよ」足立が一緒に降りてきた「うちは駅の近くなの。送って貰うほど遅い時間でもないわ。ありがとう。」「送っていきたいんだ。君の帰りを遅らせたから」「どうして?」「課長のところにワザワザ戻って聞きに行ってくれたじゃない」「あれは自分の為でもあるのよ。足立さんの為って訳じゃないです。次の電車が来るまでここで待つわ」さきがベンチに腰掛けようとしたとき「さきちゃん、良かった。今帰り?」反対のホームから保が手を振っている「保さん。今日うちへいらっしゃる予定だったかしら?」保は小走りでさきのいるベンチの近くまでやって来た「この近所で勤務だったんだ、さきちゃんの顔でも見て帰ろうかと思ってさ、最近ご両院にもお会いしてないし。でもお連れさんがいたんだね。僕は遠慮しておこうか」「待って保さん紹介するわ。こちら同期の足立さんです、足立さんこちらは幼馴染みの遠藤保さんです」「初めまして、足立 透です」足立は名乗って右手を出した「初めまして、遠藤 保です」そう言って二人は握手した

「どうやらエスコートする人はいるようだね」足立は、ホームに入ってきた電車に乗り込んだ「また明日お疲れ様でした」さきは電車を見送り保と改札口へと向かった

一方動き出した電車の空いてる席へ腰掛けた「お疲れ~足立」向かいにシートに座っていたのは近江課長と杉山班長である「お疲れ様です」「あれ誰だ?」足立の傍に移動して近江が尋ねた「まさか、彼氏か」「余計な詮索しなくて良いでしょ」杉山は、近江に突っ込む「気になるだろう?」「年頃の女性なんだからそっとしておいた方が良いと思うけどね」軽口にやり取りにポカーンとしている足立は「いつもと感じが違いますね?」「あぁ?」「プライベートだからね」杉山が笑って答えた「でも上司と部下ですよね」「俺達学生時代からの付き合いだからね。帰るとこ一緒だし…。」「えっどうしてですか?」「つまり、俺の妹が杉山班長の嫁なんだよ。公にしてないから黙ってろよ」「…そうなんですか?」「うちの班員は知ってるけれどね。驚いた?」「はい、びっくりです」「全くなぁお前の趣味が解らんよ。口うるさい奴なのにさ、どこが良いのかね」「優しいですよ。よく気が付くし、うちのお袋は、僕には勿体ないと言ってます」「うまく言ってるなら良いけどな。」「一緒に住んでるんですか?」「まさか、冗談だろう?近くに住んではいるが同居じゃないぞ」「今日は、妻のお父さん、つまり近江課長の父上の誕生日なんだ。これからお祝いするんだ。そうだ、君も来るかい?」「えっ、いえ」「次いでだ、来いよ。命令だぁ」「そんなぁ。」「予定あるの?なかったらお出でよ。うちの妻は料理も上手いんだよ」「はぁそうですか、でも、うちで夕飯準備がされているので遠慮します」「そうか、足立もお母さんが…」「いえ、祖母です。祖父母と一緒に暮らしているので…」近江が尋ねるのを遮って足立が答えた「ふーんそうか。では今度前もって誘うよ」「ありがとうございます」「菊名駅なので僕はここで降ります。お疲れ様でした」「お疲れ様~」言葉を交わしてホームに降り、見送る。「好い人達だなぁ。清水さんが羨ましいよ」独り呟き改札口へと歩く

一方、動き出した電車の中で「足立は親はいないのか?」ふと、近江が杉山に尋ねた「聞いた事無いですね。今度それとなく聞いてみます」「ところで清水さんと一緒に居たのは彼氏かなぁ?」「良いじゃないですかどっちでも」「気になるだろう?」「それより、自分の結婚を考えてくださいよ」「俺は独りが良い」「歳を取ったら寂しくなりますよ。ちゃんとお相手を見つけてくださいましたお義母さんも心配してるんですよ」「気楽にとしを取りたいんだよ。」「長男ですよ?忘れていませんか」「覚えてるよ。良いじゃん嫁が居なくても生きていけるぞ。無理に結婚してうまくいかない方が憐れだろう?」「失敗前提で結婚相手探さないでください。」「ハイハイ。面倒くさいな。最近、鈴に似てきたんじゃないか?」「いつも我が家の話題にしてますよ」「止せよ、俺の事はほっといてくれ、今更結婚してどうする」「幸せになるんですよ。決まっているでしょう?」「おごった考えだな。結婚して幸せになるとは限らないだろう?」「お兄さんが独りでいることが心配なんですよ」

「ハイハイありがとうございました」「先輩、朋子さんの事が…」「違う。朋子の事は関係ない。考えたって何も変わらんだろう?」「そうですね」「気持ちはとっくに吹っ切れてるよ。俺の気持ちが動く程の相手に巡り会えていないだけだ」「そうですか…」二人は黙ってしまった。黙々と家族が待つ家に向かって歩いている。門扉の前で近江は立ち止まって義理の弟を見ていった「心配かけて悪いな。でもまだ…まだ誰かを好きになれない。朋子の事はどうにもならない。病気を恨んでも仕方ないんだ」「先輩…余計なことを口にしてすみませんでした。」「うん。もういいよ忘れてくれ。さあ家に入ろうか?お姫様が待ってるぞ」そう言って玄関のドアを開けた「ただいま…」「お帰り、パパ、おいちゃん」「ただいま。お姫さま。皆揃ってるかい?」「うん。パパ抱っこ」鞄を右脇に抱え3才の娘を優しく抱き上げた杉山は近江の後を付いていく「お待たせしたかな?」「お帰り。いつもよりはやい位でしょう?」母親が笑って迎える。台所では妹が母と二人で食器の準備をしていた「まぁ、華子はパパに抱っこされてご機嫌ねぇ」「パパの抱っこ大好き‼」「いつまで言ってくれるかしらね」「さぁさ始めましょう。お腹もすいてきた」

その頃さきは保とリビングで食後のお茶を飲みながら絵理子の事を報告しあっていた

「最近は、顔を会わせれば声を描ける様になったよ。さきちゃんのお母さんが今の家の長女だったって?驚いたよ」「ええ本当に、私を横浜に独り残した理由が知りたいわ。最初から実家に預けてくれれば記憶をなくすほどのショックを受けずに済んだかもしれない。もっと違った生活をおくれたかも」さきは、ふっとため息をついて黙り込む

保は、黙って見ていることしかできなかった「絵理子ならさきちゃんを元気にする言葉を掛けられるんだろうなぁ…」「保さん、ありがとう。大丈夫です。答が出ないことなのに、つい考えてしまうの。私が両親を困らせることをしたんじゃないか?だからね、置いていっちゃったんじゃないか?自分を責めてしまうのよ。」「少なくともそれは違う。六歳になったばかりの子供に何ができる?親が我が子を手離す事は大ごとだ。一番に守りたい宝物の筈だよ、ましてやあんなに優しかったおじさんとおばさんがそんな事するとは思えない。事件か事故に巻き込まれたとしか思えない」「私自身は全く記憶にないから分からないわ」「絵理子もその当時の事件性がないと判断された案件を調べているらしい。地域も僕達の町、さきちゃんの保護された町、範囲は幾つか絞っているらしい‼」「そうですか…何か分かると良いな。でもね、今まで何も分からなかったの。今、この展開が十分有難い位、わかってきて本当に嬉しいの。感謝しているのよ」「うん僕らだって同じだよ。さきちゃんに会えたし、こうして話しているんだから。西寺さんの身に何が起きたのかは心配だけど。君が無事に居たことを絵理子も僕も凄く嬉しいんだ」「ありがとう。保さん」「だからね、さきちゃん、ここまで清水さきとして時間がが無くなる訳じゃないし、ずっと続いて行くんだから。無責任な言い方だけど、西寺さんの事は分かっただけで幸運位で受け止めないと。苦しい事や悲しい事が起こる可能性だって有るんだから」「ええ。頭では理解しているのよ。欲張りになるのよね。もっと知りたいって気持ちが強くなって…たった六年間親子だった。ましてや記憶もない。何が知りたいのか?知りたくないのか、もう母のルーツは判明しているしね。」「びっくりしたよ。あのさえ子おばさんがこの清水家の行方不明の娘さんだなんて❗」

「養父母が本当は血の繋がった祖父母と孫の関係だなんてね。もっと身近に感じる関係を過ごせた筈だと思っても充分大事にしてもらったから不満は無いのよ。」「愛されてた?」「ええ、とても。これからはその恩返しをしなきゃね。」

ドアの外で清水夫妻が二人の会話を耳にして涙ぐむ

(さきは、一人娘の忘れ形見である。もはや、沙依子は生きていない可能性もあるのだ、沙依子に何があったかはわからない。だからこそ守る❗と強く思った)

「ところで話は全然違うけれど、駅で一緒だった人は彼氏?」「まさか、違いますよ。彼は同期の方で一緒に企画書を作っていたので…」「仲良さそうだったよ。僕を見る顔はなかなか強いものを感じたけどね、違うんだ?」「誰かわからないいから用心したのでは?」「いや、ちょっと違うけど(紹介後の方が睨んでたし。さきちゃんは気付いてないんだな)」

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