第二話 告白から始まるストーリー
日本人ではないので、日本語が間違っているかも知れないです。その時は教えてください。
第二話 告白
「おい、聞いた覚えがないぞ」
「なんのことかな?」
「恍けるな、あいつのことだ」
休み時間になって、美月を探しに火焔は理事長室に来た。
理由はもちろんさっき初めて会った、彼のクラスに転入した少女と関わっている。
「愛のことか……って?」
と、美月はまるで火焔の意図がわからないかのように、問い返した。
「ってじゃねぇよ、あんなお嬢さんなのか? 今度連れてくるやつは」
「それで何が悪い?」
火焔の質問に対して、美月はまるで他人事のような口調で返した。
「あんなやつは戦いの邪魔になるだけだ」
「じゃあ彼女に戦い方を教えば? 彼女も一応『ユーザー』だし。それに、彼女みたいの人と一緒にいれば、お前も何かが変わるかも知れないぞ」
自分の仕事を進めながら、美月は火焔に答えた。
「そういうのはいらねぇって、何度も言ったはずだ」
火焔のそのセリフを聞いた瞬間、美月の手が一瞬止まった。
そして、事情が知らない人が見たら絶対二人の関係を勘違いしそうなほど、まるで母のような口調で美月は続ける、
「……まだあのことを乗り越えれないの?」
「出来るもんならとっくにやってた」
昔のある出来事から、火焔は今のように、いつも無表情で、何もかも興味がなさそうな顔と口調をしていた。
人との関わりを避けて、自分の感情も押し殺し、心を閉じ込めた。
自分のことに対しても、まるで他人事のような口調をしていた。
彼がこんなことになったことを、美月は知っていた。
というより火焔はこうなったことに彼女には責任がある、だからこそか、今の状況をどうにかしたい。
「だーかーらー、この機会でなんとかしてって」
「俺達に感情も仲間もいらないって、そう教えたのはお前じゃねぇか」
「――――」
言い返せる言葉はなかった、その通りだったからだ。
「だいたい今更……今の俺はもう、元には戻れないんだ。 四年前のあの時から――」
「あ、見つけた、美月ちゃ――ん、あっ野上くん……」
と火焔の話している途中、愛は理事長室に入ってきた。
美月を探しにきたのに、火焔もここにいることに愛は驚いた。
そして、美月への呼び方を聞いて、火焔もいつもの通りの無表情が少しは驚いた。
「ちゃん?」
生徒達の前では威厳がある理事長を、気安くにちゃん付けで呼ぶ者は火焔も初めて見た。
「学校では七瀬理事長だ」
それについて疑問を持った火焔は別として、美月も学校では自分のことをそんなに馴れ馴れしく呼ばないほうがいいと思ってはいるようだ。
「わかりました、では七瀬さんで」
理事長の威厳を守りたいという美月の思惑を気づき、愛は呼び方に変えた。
「なんかお前ら仲いいな」
「今までは七瀬さんのところに住まわせていただいてました」
「そして今日からお前んちへ引っ越しする」
と、驚かせることを美月は淡々と言い出した。
「そんなの聞いてない、勝手しすぎだろお前」
「いいじゃないか、お前んとこ空いてる部屋一杯あるだろう?」
「はぁ、家のことは俺に聞くな……っていうかさっきから聞きたいんだが――」
と言って、火焔は今度愛に向けて質問を問いただした。
「――なんで俺のことを知ってる? コイツが何か言ったか?」
さっきから火焔は気になっていた、初対面なのに、愛はいきなり自分のことを「野上くん」と呼んでくれた。
もしかすると美月から何か聞いたんじゃないかと、火焔は思って伺いた。
だが、それは違ったようだ。
「野上くんは私のこと知りませんが、私はずーーっと前から野上くんのことを知ってますよ!」
「は?」
火焔に出会えた前、いや、美月と出会えた前から、愛は既に火焔のことを知っていた。
それについて、美月はもちろん、火焔本人も知らない。
少なくとも自分が知ってる限りでは、火焔は一度も愛に会ったことない。
だから、彼女の話にどう返すべきかわからないのも当然。
当の本人もそれについて説明するつもりはなさそうで、ただ困惑しているだろうなぁと火焔を見て微笑むだけ。
「あ、いたいた、火焔くん!」
「こんなところにいらしゃったのですか、ご主人様」
火焔がまだ戸惑っていたその時、希と天音は彼を探して乱入してきた。
突如の二人の声を聞いて振り向いた愛は、とんでもないことを見てびっくりした。
「ご主人様? ってメイド服!?」
そう、火焔のメイドである希は学校でまで、メイド服を着ている。
さっき教室ではよく見ていないからか、今となって愛は初めてその事実を知った。
希の格好と自分への呼び方に驚いた愛を見て、火焔は少し説明をした。
「ああ、こいつは如月 希、うちでメイドをやってる」
「いやでも……学校でメイド服っていいんですか」
愛が気になっているのは、希がメイド服を理由ではなく、メイド服の格好のままで学校に来ていいのか、校則違反していないかのこと、それを美月に聞いてみたが――
「可愛いからいいじゃん」
どうやら、その理由で美月から許可を下りたらしい。
理事長だからこそ、美月はやりたい放題に希の制服を許した。
つまり、本人公認の職権濫用。
美月の答えを聞いて、「だよね~」と思った愛は「あはは」と苦笑しかできなかった。
昨日の夜にあったことを思い出して、それを吐息として吐き出したら、愛はまた素敵な笑顔を見せて、希に挨拶をした。
「これからはよろしくお願いします、如月さん」
「こちらこそ、よろしくお願いします、飛鳥姫さん」
「そーしーて、私が天宮天音、同じクラスだからよろしくね、愛ちゃん~」
希が挨拶をした後、天音も愛に自己紹介をした、しかも「愛ちゃん」と早速あだ名をつけた。
「さっき見てました、よ、よろしくお願いします、天宮さん」
反応から見ると、どうやら愛は天音みたいなタイプが苦手のようだ。
三人がお互い紹介しているうち、美月は勝手にさっきの話を進めようとして、希に声をかけた。
「希、君にやらせたいことがあるんだが……」
「何ですか? 美月様」
「愛をお前らの家に住ませたい、後で部屋を用意できるか?」
「かしこまりました」
火焔の専属メイドというタイトルだが、希は実は野上家のほぼ全部のことを取り仕切る、メイド長みたいな役割が持っている。
愛に部屋を分けることに、希は早速OKを出した。
ちょうどその時に、ベルが鳴って、次の授業が始まる時間になった、そこで、天音が次の授業について希に聞いた。
「あれ? 次の授業、なんだっけ?」
「選択授業だと思います」
「じゃあ、愛ちゃんはどっち?」
この学校は生徒を戦闘科と一般科に分けている、次の授業となる選択授業の時間では、生徒はその二つに分けてそれぞれ違うところで授業をする。
転入生である愛はどっちにしたか、天音はそれを聞いていた。
白の制服を着ていた愛だが、間違った制服を買った生徒が前例としていたから、念のために。
「あのう、なんのことでしょうか?」
ただし、当のご本人は質問の意味を理解していない。
「入学の資料にあったはずよ、ほら、一般科か戦闘科を選ぶやつ!」
「それなら、一般科を選択したと――」
「戦闘科に変えてあげた」
愛の話が終わる前に、美月が遮った。
「「「え?」」」
美月の言葉に驚いた、三人の女子。
生徒の学科を無断で変えることは大問題、しかし美月本人はそのことになんとも思っていない模様。
美月に勝手に事を話を進められることに慣れた火焔はただ、またか、と思いながら息を吐いた。
それに、彼女がその行動を取った訳を火焔は知ったからだ。
「ユーザー」だから、戦闘科。
「まあ、細かいことを気にせずに授業を受けろ!」
「はーーい」「かしこまりました」と美月に答えながら、二人は愛を連れて授業へ行こうとした。
だが、授業の時間なのに、全然理事長室から出ようと思わないように立っていた火焔のことが愛は気になる。
「えっ、でも野上くんは?」
「ああ、彼のことはいいから!」「ご主人様は特権持ちなんですから」と。
流石にここままだと授業に大遅刻になるから、二人は適当に説明し、愛を引っ張って、理事長室から離れた。
三人も減って、一瞬で静かになった理事長室。
「じゃっ、俺もこれで――」
「お前はまだだ」
無所属な故選択授業になるとやる事がないから、屋上に暇つぶしに行くつもりだった火焔はだが、美月に止められた。
「今度はなんだ?」
「あいつがまた出たっていう情報が入った、気をつけろ」
「あいつって?」
「『悪魔』」
「悪魔」、それはとあるEMに対するコードネームや名前みたいなもの。
それは、火焔が決して忘れない名前。
その名を持つあの一体のEMだけは、彼がどうしても倒さなければならない。
その一体のEMを倒すために、火焔は十年間も、色んな怪物と戦ってきていた。
すべてはそいつに――復讐するため。
美月の口からその名を聞いた瞬間、火焔の目に怒りが満ちた。
「十年待ってたぜ。 今度こそ……」
そして、血が出そうなほど、強く拳を握った。
「――倒す!」
* * *
放課後、火焔は家へ帰れず屋上に来た。
ひとりきりで屋上で誰かを待っていた火焔は三十分ほど前のことを思い出した。
「あ、あのう、野上くん……もう帰るんですか?」
下校のべるが鳴って、いつも通りに下校しようとした火焔はだが、愛に止められた。
愛の疑問に肯定して、だが愛の質問の意味を察した火焔は「どうした?」と問い返した。
「お話がありますが……」
周りのなに転校生を独り占めすんだよ! 的な視線を感じて、愛は戸惑った。
いつの間にか、機会があればみんなが転校生に囲まって質問することが定番になっていた。
答えなければ、みんなはすぐ気が冷めて聞かなくなるが、よりにもよって、愛はクラスメイトからの質問を一々答えるほどの人良しだから、その状況が悪化している。
「ちょっと待っててくれますか?」
まだいっぱい質問したい、そんな視線を感じた愛は声を控えて火焔に待ってってお願いをした。
「屋上で待ってる」と言ったらすぐ去っていった火焔の代わりにクラスメイトがまた愛を囲んで、愛のプロフィールを全て暴き出すかのように、いろいろ質問をした。
「すみません、遅くなりました。お待たせしましたか?」
ようやく屋上に着いた愛の呼び声が、火焔を今に連れ戻した。
「いや、ちょっとだけ」
「なら良かった……」
クラスメイトから逃げるために走ってきたのだろう、愛は疲れそうに喘いだ。
彼女が呼吸を整えるのをちょっと待ってたら、火焔は話を進めた。
「で? 話って?」
「えっあっうん……えっと、その……」
自分から話があるから火焔を呼んだのに、いざとなれば、愛は躊躇した。
これから言う言葉に、緊張した。
大きく深呼吸をした後、彼女はついに勇気を出して――
「野上くんのことが……好きです! 付き合ってください!」
火焔に告白した。
そう、告白。
他の事でもない、告白。 まして己の罪を告白、というような言葉遊びではなく、恋の告白。
出会ったばかりの相手に突然告白されて、誰だって真っ先に驚くだろう、しかし火焔は相変わらずの無表情ところか、全然驚いていない。
ただおかしい人を見ているような目で、「はぁ?」と返した。
「なにを話したいかと思えば、そんなことか……」
愛を待っていたこの半時間、愛の話について火焔はいろんな可能性を考えた。
だが、まさか告白をするとは、さすがに火焔も想定していなかったか。
しかし、過去の出来ことで心を閉じ込めた火焔やはり、この告白を断るしかない。
初めて会ってから半日、まだよく知らない人と付き合うのは常識で考えても不可能、火焔ではなくても、普通は断るのだろう。
もっとも、愛の世話をしてくれ、と、美月の言葉がなければそもそも話をしない相手の告白など、受けるはずがない。
「っ――――――――!?」
だがその返事しようとしたその瞬間に、心臓に突然強烈な痛みを感じた。
「うっあっ…………」
前回と違って、心臓が握られたような痛みとは比べられないほど、刃物に刺された上に炎に焼きつくされているような、とんでもない痛み。
それによって、火焔の顔に苦しい表情が浮かんできて、彼は不意に跪いた。
それを見て、彼を支えようとして愛はすぐ彼の元までいった。
そして、まるでタイミングを合わせたように、警報はこの時「うーうー」と鳴り始めた。
警報が鳴るなったら、まもなく建物が封鎖され、その前に建物の中まで逃げなければならない危険だ。
そんなことは分かっているはずなんだが、彼女は苦しそうな火焔をほっておけない。
「大丈夫ですか? 野上くん」
「……大丈夫から、お前は早く逃げろ!」
痛みならEMに会ったら消える、彼女の心配は無用だ。
EMはもうすぐ現れる、建物が封鎖されたらもう逃げ場がない。
愛がここにいると危険。
いや、それどころか戦いに邪魔だ。
「そんな、野上くんをほっておくなんてできません!」
そんなことを言うのももう遅かった。
この時、島全体が特殊な物質に包まれて真っ白くなった。
それによって、学園の屋上の扉も封鎖された。
前回と比べて、今回は妙に早かった、まるでこれから現れるEMがどれほど危険なのかを示しているように。
そして、突然の爆発と共に、空から一体のEMが落ちてきた。
全身が黒く、頭上と肩にそれぞれ二本の角があって、背中にはマントみたいな大きな翼が生えていた人型の怪物。
その身には紫色の柄が纏って、何もかも、悪魔のような禍々しさが伝わってくる。
その手に持っている剣は、刃にトゲのように短い刃がいっぱい付いている、独特な造形になっていて、それがまたEMの凶悪さを倍増させた。
「か、怪物……」
そんな異形の存在を見るのが初めてであろう愛は驚いて、そう呟いた。
痛みが段々緩めてきて、火焔は目の前のEMを確認することが出来た。
そのEMの姿を見た瞬間、火焔は驚いた。
そして、表情の変化が少ないが、その開いた瞳孔と、力入りすぎて震えている拳から見ると、彼に怒りが沸いてきたことがわかる。
その怒りによって、彼の声も少し震えた。
「てめぇ……『悪魔』!」
そう、目の前に居るこの怪物こそがさっき美月が気をつけるよう忠告した――「悪魔」の名を持つEM。
「久しぶりだな、あの時の少年」
「俺も会いたかったぜ、この十年間ずっと」
数年ぶりの友達が話し合っているようなセリフ、だがとんでもない緊張感が溢れ出ている。
そして、「ふっ」と冷笑した「悪魔」は次の瞬間、こっちに向けて走り出した。
その動機に気づいた火焔はすると、邪魔な愛を力強く後ろへ推して、そして呟いた。
「来い、『紅蓮』」
――一瞬で手に現れた「紅蓮」で「悪魔」の攻撃を防せいた。
剣と剣がぶつかり合ってEM斬撃を止めたが、その独特な刃が火焔の防御を越えて彼の腰にダメージを与えた。
しかし、「悪魔」の剣が火焔の腰を刺したこの瞬間はまさに好機。
「捕まえた!」
言って火焔は、片手で「悪魔」の剣の刃を素手で掴んで、逃がさないように固定した。
続いて「悪魔」の剣とぶつかり合っていた「紅蓮」の向きを調整しつつ、そのまま前を突き刺した、狙い先は「悪魔」の胸。
しかし、「悪魔」は空いていた左手で「紅蓮」の刃を掴んで、その襲いを止めた。
「相変わらず甘いな」
火焔の反撃を防いたと確信し、「悪魔」は煽った。
「それはどうかな?」
だが、「悪魔」は気づいていなかった、この攻撃はフェイクで、本命は別たと。
さっきの襲撃への防御に集中している一瞬を狙って、火焔はもう一つ攻撃を仕掛けた。
いつの間にかEMの太ももに移動していた掌から炎を放出し、ゼロ距離により内部から「悪魔」の脚を燃やした。
その痛みで「悪魔」は剣を握っていた右手を放した。。
「うぁっ……」
その一撃で大きなダメージを受けて、「悪魔」は少し後ろへ下がった。
この隙に火焔は剣を握った手に力を入れて腰に刺した「悪魔」の剣を弾き飛ばし、そしてこの隙に「悪魔」を追い詰めようとした。
「俺はもうあの時の俺じゃないんだよ」
しかし、焦ったからか、彼はこの一瞬隙を見せた。
「強くなった……が、やはり甘い」
「うっ……」
次の瞬間、さっき火焔にフェンスまで弾き飛ばされたはずだった「悪魔」の剣が、後ろから火焔のお腹を。
「悪魔」には自分の剣を遠距離で操縦できる能力があるようだ、それを計らなかった火焔は後ろからの攻撃を避けることできなかった、という状況になった。
「うっ……」
「悪魔」は続いて剣を操縦して、火焔の体から剣を抜いた。
刃物は刺すときはもちろん、抜く時もかなり痛い、しかも大出血が伴う。
増して、抜くときの出血量を倍増させるような独特な構造を持つ「悪魔」の剣が作り出した痛みは、通常のそれを何十倍も上回る。
「あっ……うっ――」
その強烈な痛さで、火焔は倒れた。
ここは相手が確実に死なせるために追撃すべき場面なのに、EMは追撃どころか逆に後ろへ下がった。
長年戦ってきた火焔の体の頑丈さは一般人と違うことを「悪魔」は知っていた。
この一撃で彼を倒せると思わないから、罠だと警戒して、倒れた火焔と距離を取ったのだろう。
警戒されていることに気づいたからか、それとも本当に気絶したからか、うつぶせに倒れる火焔は何の動きもしなかった。
この現状、誰か壊さなければ、永遠に続くかも知れない。
しかし、屋上にはもうひとりいた。
ずっと側にいた愛は火焔の「敗北」を見届けた。
逃げ場がなく、怪物と戦う能力もない彼女はそうすることしかできなかった。
「嘘……」
倒された火焔を見て、あまりにものショックと脱力感で愛はその場にへたり込んだ。
そして、彼女は泣き出して、独り言を呟き始めた。
「せっかく会えたのに……また……失うの? 嫌だ……嫌だ……嫌あああああああああああああああああああああああああああっ―――――――――――――っ」
目の前に起こった事実を受け入れたくない、そんな感情が、彼女を壊した。
……そのはずなのに。
愛の絶叫は数秒間しか続いていなかった。
その後、彼女は突然冷静さを取り戻した。
まるで、何も起こったことないように、平静に。
さっきまであんなに泣いていたのに、今の愛はゆっくりと立ち上がり火焔の側まで移動した。
跪いて両手で火焔の腰部を覆った。
すると緑色の光を浴びて、火焔の傷は自分でとんでもない速度で治り始めた。
これを見て「悪魔」はふっ! と冷笑をしていたが、別に彼女を止めるつもりは無さそうで、ただ見ていた。
火焔の傷が完全に治ったと確認したら、さっきと全く雰囲気が違った愛は「悪魔」を見ながら立ち上がった。
ポニーテールを外し、髪をサラサラにした。
よく見ると、本来碧色なはずの瞳が血のような赤色に変わった。
そしてなにより、渾身から殺気が溢れ出ていた。
まるで、別人に変わったみたい。
まるで誰かに体を操られたように、表情が、動きが、何もかもが、十数秒前のと同じ人物とは思われないほど、全然変わった。
今の愛は愛と呼んでいいだろうか、この愛のような少女は数秒を使って目の前に立っていたEMをちょっと観察をした。
そうした後、彼女は呟いた。
「来なさい、『氷花』」
さっきまでみたいな甘くて癒されるような天使のような声ではなく、今は冷酷と無情を感じさせる、氷のような冷たい声になっていた。
その言葉を発した後、剣くらいのサイズの氷柱が彼女の手に現れた。
そして、彼女がその氷の塊を握った瞬間に氷が溶け、中から「氷花」という剣が現れた。
戦う気になった愛を見て、「悪魔」もいよいよ動いた。
しかし「悪魔」の行動より先に愛は片手で床を叩いた。
そこをはじめとして、屋上は一層の氷に覆われた。
そしてその氷は「悪魔」の足元まで登って、足を凍らせた。
「悪魔」の行動力を封じた後すぐ、愛は剣で「悪魔」を突き刺しながら、また呟いた。
「〈メテオ・ストライク〉」
その言葉に応えるように、「氷花」の剣身が光った。それと共に愛の周りにいくつもの剣の幻影が現れて、まるで降り注ぐ流星群のように、一斉に「悪魔」に向かった。
幻影であっても、実際に悪魔にダメージを与えた。
一撃もらって、剣の幻はそして消えていなくった、だが“愛”の攻撃はまだ続いている。
さっきの突き刺しの衝撃力を使って愛はぐるっと一回転して、再び同じように突き刺した、すると幻影がまた現れた。
二回目が終わった瞬間、また同じ動きをもう一回繰り返した。
このような攻撃を三回もすると、今度は逆方向に回って横払い。
この最後の一撃で、愛が繰り出した技は終わった。
幻影と共に三連続の突き刺しに最後の横払い。
その名の通りに流星のような怒涛な攻撃であった。
この技は間違いなく「悪魔」に多くのダメージを与えた。
だが同時に、一擊だけで体力を使い切ったらしく、技が終わった瞬間、床の氷が消え、愛は力が抜けて地に跪いた。
幸い、負傷した「悪魔」は継戦するつもりがなく、この隙に逃げた。
敵の撤退を見届けた後、ふっと安心したように、愛はその場で倒れた。
するとこの時、隣で倒れていた火焔は起き上がって、彼女の様子を確認しに来た。
「おい、大丈夫か? 飛鳥姫」
しかし意識を失っていた愛は、返事することができなかった。
このまま半時間が過ぎた。
「うっ……」
「ようやく起きたか?」
半時間くらい休んだら、愛はついに目覚めた、この時島は既に元に戻っていた。
「あれ、野上くん?」
目覚めったら目の前に火焔がいて、ピックリした愛はすごい勢いで体を起こした。
「……うっ……痛い……」
すると、突然強烈な痛みを感じた。
彼女の苦しそうな顔を見て、無言で迅速に火焔は彼女の右の靴下を脱がせた。
「ちょ、ちょっと待ってください! 何してるんですか!」
急に靴下を脱がされ、恥じた愛は慌てて火焔を止めた。
「騒ぐな、ここが痛いか?」
言って、火焔は彼女の踝あたりに少し力を入れた。
そしたら、「あっ!」と愛は唸いた。
答えてもらわなくても、「痛い」だとわかる。
本人は気づいていないが、踝の辺りがひどく腫れていた。
どうやら、さっき「悪魔」に攻撃した時に、足をくじいたようだ。
「とりあえず、手当てをするか」
「わ、わかりました」
桜見島にくるときと同じように前へ手を伸ばし、火焔はまた例の光の扉を開いた。
まだ目の前に起きたことを理解できていなくて呆然とした愛に、火焔は説明もせずに愛を抱き上げて、そのまま「ゲート」へ向かった。
「えっ! お、お姫様抱っこ……」
火焔に抱えられる姿が恥ずかしくて、愛は小さな声で呟いて、顔が赤くなった。
「なんか言った?」
「ううん、何も……」
「どうしましたのご主人様? 姫さんも……」
腹部の服が一部破っていて、血に染められている火焔。
そしてそんな自分の主にお姫様抱っこで家まで運んできた、今朝の授業であだ名で呼び合えるようになった愛。
光の扉を通って、家に帰ってきた二人の姿を見て、希は愕然とした。
「ちょっと戦っただけだ、俺より、こいつが足を怪我したようだ、手当てしてあげられるか?」
「か、かしこまりました」
驚いてながらも、火焔の”命令”に対して希は素早かに対応し、椅子を持ってきて愛を座らせた。
「なんか、すみません……」
希に迷惑を掛けたと思って、愛は不意にお詫びを言った。
この時、さっき話を聞いた美空は救急箱を持ってきた。
だが、そんな彼女の好意は火焔に頭を振って断られた。
それでも、渾身血まみれの火焔を見て、やはりほっておけないだろう、美空は改めて何かあったかと聞いた。
「焔ちゃん、一体何があったの?」
「なんでもない、心配すんな」
「そう……気をつけてね」
でも、家族に心配させたくないからか、やはり「悪魔」について何も話さない火焔に、美空はそれしか言えなかった。
「ああ……服が血まみれで気持ち悪いから、風呂に行ってくる」
話したくないことを、無理やりに言わせようとしても無駄、昔から火焔はそうだった。
それを美空は一番知っている。
だから、風呂へ逃げた火焔の後ろ姿を見守るしか、彼女はできなかった。
* * *
(逃げられた、か……)
風呂に入りながら、さっきのことについて色々考え始めた火焔であった。
「悪魔」の警戒は正しかった。
「悪魔」には武器を遠距離操作できるがあると火焔はとっくに知っていた、いや、知らざるを得なかった。
十年前も前に、「悪魔」がその能力を使ったところを火焔は見ていたから。
剣の移動が早く、予兆なない。 隙がないとてつもなく強力な能力だった。
だからこそ、対策を考えて態々引き出したのだった。
が、すべては第三者の介入によって必要が無くなった。
「悪魔」が自分の罠にハマる前に、愛が突然戦闘に加えた。
元々のお姫様のような雰囲気と違って、殺意が溢れていて、全く同じ人物だと思えないくらいイメージがすっかり変わった。
(戦う時に起こるあのギャップ、面白いなあ……)
その豹変するさまに、火焔は興味を持った。
腹の傷を探したが、いつの間にか治ってもう消えてなくなった。
(これもやつの仕業か……)
火焔はものを考えているこのとき、ガラガラと浴室のドアが突然開かれて、誰かが入ってきた。
「えっ、野上くん!?」
警戒して火焔がその人物を確認しようと振り向いた時、その人も驚いて声を上げた。
声からすると、それはまさかの愛だった。
服を全部脱いて、間違いなくお風呂に入るつもりだろうが、先着がいると思わなかった。
反射的に、愛は体を隠してしゃがみこんだ。
「なんでお前がここに入ったんだ?」
そう言って火焔も慌てて愛に背を向けた。
「希ちゃんが風呂を使っていいって連れてきましたから……」
恥ずかしくて、今でも泣きそうな愛は頑張って火焔の質問に答えた。
「アイツ……俺は先に出る!」
自分はまだ風呂入っているとわかっているはずの希が、敢えて愛に浴室に入らせた。
絶対何かを企んでいる、今すぐにでも彼女を問い詰めるために火焔は浴室から出ようとした――
「待ってください!」
が、いつの間にどこから持ってきたタオルを巻いて、愛を見ないように彼女の隣を通るその時、火焔は腕を掴まれた。
「ちょっとだけ、お話してもいいですか……」
「はぁ? ここで!?」
そんな訳で、二人は今お互い背を向けて風呂場の真ん中に座って、どう考えてもシュールな光景になった。
二人とも火焔がどこから持ち出したタオルを巻いていて、混浴する温泉みたいになって、少しはこの状況の気まずさをなくせるか。
「あ、あのう、えっと……浴室広いですね」
「…………」
自分から提案を出したとは言え、恥ずかしくてまともに話せなかった。
気まずすぎて、二人共黙ってしまった。
「……………………」
「……………………」
そしてこの辛い空気を破ったのは、深呼吸をして落ち着いた愛。
「あのう……さっきのことですか……返事を聞かせてくれますか?」
「返事? あっ、告白のことが」
さっきのことと言えば、愛が戦った時のインパクトが強すぎて、告白のことを忘れるとこだった。
「えっ、他に何かあったのですか?」
だが、まるで「悪魔」が現れなかったみたいに、愛は逆に問いだした。
その言葉も、それを言い出した愛の口調もおかしい。
まるで、さっき屋上であったことが全部知らなかったように。
そこで、彼女はとぼけているのかを確かめるために、質問で彼女を試した。
「足、どうやって怪我したのか覚えてる?」
「ううん、覚えていません。 昔からよく、突然記憶が飛んでいっちゃうことがありますが……」
自分の不器用さを嘲笑っているような口調。
どうやら、本当に告白以降のことを忘れたようだ。
しかしそれがおかしい。
「悪魔」が出現し、自分と戦った。 そんなことを何故忘れるのか。
「……もしかして、野上くんなにか知ってますか?」
そして、ひょっとしたら、自分がなくなった記憶について何か知っているじゃないかと思って、愛は逆に伺いた。
「あ、いや……それより、足、歩けるようになったな?」
「うん、ちょっと休んだら、もう痛くなくなりました」
“心因性記憶障害”、そのワードが一瞬、火焔の頭に浮かんだ。
ストレスやパニックによって記憶が失われてしまう障害、もし本当にそうだったら、無理に思い出させないほうがいい。
だから、ここは敢えて誤魔化した。
「って、誤魔化さないでください!」
が、気が利く愛はその手には乗らなかった――でもない。
「……告白の返事、まだ聞かされていません!」
彼女が言っている、火焔が誤魔化したことは、そのことではなく、告白のことだった。
告白の返事を誤魔化されて、愛は火焔に不満な声を上げた。
「そっか……じゃあ……」
もう逃げられないとわかって、火焔はきちんと彼女の告白に返事をした。
「……断る」
告白を断った、きちんと。
「やっぱり……突然すぎだからですか?」
自分の告白がどれほど突然だったのか、愛はちゃんと自覚があるみたい。
「ああ、初対面で、お互いの何もかもまだ知らない相手の告白を受け入れるわけがない」
正論で、愛はなにも言い返せなかった。
「それとも、誰かと付き合わないといけない理由でもあったのか?」
愛は本気で告白しにきたと信じていない火焔は、そして彼女が彼氏を作らないといけない訳でもあるかと予想した、が――
「ううん」
その考えが否定された。
「そんなことないよ」と、淡々と。
「私は野上くんのことが好きなだけ、それがすべて、好きな相手に告白するのなにかおかしいですか?」
好きな人に好きだと言うのはおかしいか? 否。
そんなのおかしいわけがない、ただ、なぜ自分なのか。
会ってまだ半日も過ぎてないのに? まだお互いの何もかも知らないのに? そしてなにより火焔自身はわかっている。
自分が好かれる要素など一つもない、と。
考えてもわからない故、火焔は愛に答えを求めた。
「なんで俺を、好きなのか」、と。
「誰かを好きになることは、理由など要りません。 だって、愛情自体が理屈じゃないですから」
だが返された言葉は答えになっていなかった。
正論にも詭弁にもなっていないその説明に火焔はただ冷笑をした。
「フッ、なんだそれは」
「野上くんもいつか理解できると思いますよ」
「……」
そしてまた、二人は沈黙に帰った。
いろいろ考えて、火焔は再度彼女を断った。
「……お前の気持ちはありがたいが、やはり断る」
「理由を、聞かせてもらえますか?」
「世の中には知らないほうがいいこともあるんだ」
そう言って、愛の質問から逃げようとした火焔だったが、そううまくは行かなかった。
「……教えてください、私、野上くんのことをもっと知りたいの……」
追い詰めてくる愛に、火焔は目を閉じた。
彼女の質問から逃げる方法を考えているか、それともほかの何かを考えているか、火焔はまた沈黙に入った。
そんな火焔に、何も言わずに静かに彼の言葉を待った。
すると――
「……俺は……もう、悲劇を繰り返したくないんだ……」
愛を前にして、何故か本音を吐き出しちゃう。
「何が……あったんですか?」
「…………」
「話したくないなら無理しなくていいですが……」
愛の質問に答えるためにも、火焔は自分の過去を語り始めた。
最初の言葉から、重い重い事実。
「……十年前、俺のせいで、大切な人が死んだ」
そう、十年前、火焔の幼馴染が彼の目の前に殺された。
その場にいたのに、守れなかった、何もできなかった。
「ごめん、なさい……」
まさか火焔の悲しい過去に触れると知らずに言わせていた愛は、反射的に謝った。
「いいんだ」
今でも泣きそうな声で、火焔は続けた。
「あいつの死は俺が招いたことだ、俺に相応しい罪だから……」
火焔の言葉が針のように愛の胸に刺さった、火焔は幼馴染の死を自分のせいだと思い込んでいた、全ては自分の罪だ、と。
火焔の言葉を聞いて、愛は心の中で呟いた、火焔くんも、過去に囚われてたのね……と。
だから、彼女は言う。
「……私はね、思うんだ、別になにかすれば、亡くなった人が蘇るわけではないから、過去のことは過去に残されるべきで、大事なのは今だよ」
彼女が知っている限り、過去にとらわれた人を救えるかも知れない一言。
「だから、火焔くんも過去に囚われすぎないで――」
「お前に何がわかるっ!!」
だがそんな言葉を聞いて、火焔は怒りが沸いてきた。
「大切な人が目の前に死んだ苦しみを、お前にわかるのかっ!!」
大声で叫んだ、久しぶりに。
感情を押し殺してきたはずの彼が、目の前の少女に怒りをぶつけた。
お前のようなやつが、俺の感情をわかるはずがないと。
そして、また十年前のことを覚え出した火焔は自分を責めて――
「全部俺のせいなんだ……あの時、俺があいつを倒せば、あんなところに連れて行ってなかったら……あいつは、楓は死ななくて済んだんだ」
涙を流して続けた。
「……怪物にですか? 大切の人は……」
またもおかしい。
愛は「ユーザー」であると、美月は言っていた。
だったら彼女も「EM」のことを知っているはず。 なのに、『怪物』だと。
だが今の火焔にはそれに構わう暇はない。
「ああ」
なぜなら、愛に言い当てられているからだ。
さっき学園の屋上に現れた「悪魔」という名の怪物こそが、十年前、火焔の幼馴染を殺した張本人。
「あの日から俺は決めた。 俺は戦う、あいつに復讐するために……」
「だから、」と、一気に口調を変えた、脅すような口調に。
「死にたくないなら俺に近づくな」
「…………」
そんな火焔に、愛は返す言葉がなかった。
「俺はお前と関わる暇なんてないんだ。俺の隣にいると、お前も危険な目に遭うぞ」
「……なら」
なにを考えているか、平然と。
「戦い方を教えて、私が自分を守れるように!」
「まだわかんらないのか! 下手したら死ぬんだぞ、命が惜しいなら俺と関わ――っ」
怒りを抑えられなくなった火焔は無意識に振り返った。
すると、こっちを見ている愛の顔が目の前にいた。
まるで自分の全てが見破られたみたいに。
心の底まで覗かれてしまいそうなほど。
碧い瞳がまっすぐと見つめてきている。
不意に、彼は口を止めた。
自分の何もかもをお見通しのような。
「ならば、賭けてみます? 一ヶ月間、私が死んでなければ、付き合うことをもう一度考えてください!」
火焔が美月と話していたことを、愛は実は聞いていたんだ。
自分はただ戦いの邪魔になるだけだとか火焔は人と関わりたくないとかなんだか、全部。
そんな火焔のことを助けたい、力になりたい。
色々な考えを詰め込んで、意味のわからない約束を火焔に提案した。
「はぁ?」
もちろん、火焔はこの約束に秘めた意味を知る由もない。
「これで約束! 先に出ますね!」
自分の言葉の意味をわからなくて戸惑っている火焔に、愛はただ微笑んでその場から逃げた。
「おい、待って、俺はまだ……」
火焔の言葉を待たずに、彼女は浴室から出た。
そして、彼は拳で床を叩いた。
どいつもこいつも……勝手しすぎだろ、と。
* * *
浴室から出て家の大門の前を通る時、そこで会話をしている愛、希、美月の三人に気づいた。
三人のもとへ行って、火焔は美月に話し掛けた。
「こんな時間に珍しいな、七瀬」
「愛の荷物を届けに来ただけだ」
言って、彼女の隣に色んなものが一瞬で現れた。
言われてみれば、今日から愛はこっちに引越しすると美月が言っていた。
元々は放課後、美月の家で荷物を取った後、美月が愛を連れてくるって予定だったが。
屋上の一連のことによって、その予定が狂って、美月が直に愛の荷物を搬送してくるようになった。
その荷物の中、一番目立っているのは、背もたれがとにかく厚い椅子型のマシーンだった。
いや、その横には目立たない造型だが車輪がついているから、椅子というよりも車椅子と言うべきだろうか。
「なんだこれは?」
「これは、美月ちゃんが作ってくれました、普段から髪の手入れもできる特製の椅子です」
答えてきたのは愛。
確かに、それほど長くて綺麗な髪はやはり保養が大切だな、と、納得した火焔。
「それじゃ希、荷物を彼女の部屋に持ってけ」
野上家のメイドなのに、自分のものみたいに美月は希に指示をだした。
そして何故か、希が彼女の指示通りに、愛の荷物を運び始めた。
「いえいえ、自分でやりますから」
自分のものの運びを他人に任せて、恥ずかしいと思い、愛は瞬時に拒んだ。
すると、希も意地を張った。
「これはメイドの仕事です、姫さん」
「そんな! 迷惑掛けたくありません」
「いやいや、ここは譲れません」
こうして二人は争い始めた。
「はぁ……」
その光景を見て、思わず一息吐いた後、火焔は一つ提案をだした。
「一緒にやれば?」
「そ、そうしましょう!」
「かしこまりました、ご主人様、姫さん」
火焔の提案に一瞬で受け入れた愛と希はそして、一緒に部屋に向かった。
「七瀬」
「何が聞きたい?」
遠く行った二人の後ろ姿を見ながら、火焔は美月の名前を呼んだ。
すると、彼の行動を予想していたように、美月は彼に即答をした。
「飛鳥姫のことを教えろ」
「ふっ、ようやく彼女に興味が出たみたいだね」
今朝まで愛を拒んだ火焔に変わりに、美月は微笑んだ。
「そう思うなら勝手にしろ」
「じゃあ、何が知りたい?」
「あいつの戦いを見た。あいつ、二重人格だな」
火焔が言い出す言葉を聞いて、美月の顔に一瞬だけ驚きを見せた。
さっき屋上のことと、風呂場での会話から、“愛は二重人格”だと、火焔は結論を導き出した、そして――
「もうそこまでわかったか、流石だ……」
その考えが美月の肯定によって確かめられた。
「やっばり先にお前に言っとくべきだったか」
「何を……」
火焔からの更なる質問に、美月はどこか悲しそうな表情で答えた。
「彼女は……飛鳥姫 愛は『呪われた子』だ」
あとがきになんで書くべきかわからないので、次回予告とたまたま雑談書こうかな――
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(ちょっとした雑談)ラ○ダー時代の名残その一、ヒロインの愛ちゃんのことを最初から二号ラ○ダーとして描く、女性ラ○ダーってやはりロマンですね
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――『呪われた子』。 ――「なんですかこの女は!」 ――「愛のおねえちゃん!」
「好きな人の傍にいたいのは当たり前だと思いますけど?」
愛と火焔を巡る新生活が始まった。
だがそもそも――
謎の怪物、その怪物たちと戦う火焔が持っている謎の力。
あれらは一体何なのか?この世界は一体どうなっているのか?
「呪われた子」には何の意味が秘めているのか?
そのすべてが、解き明かされる。 かも知れない。
次回、第三話、「飛鳥姫」