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忍び寄る影

蒼野(あおの)が、病室に戻った頃──


「出てきたな…あれが新しいDCか。あまり強くなさそうだな」


病院の近くにあるビルの屋上、人が二人立っていた。


「油断はできない…でも…今日は帰ろう…」


もう一人が喋る。

活気のない喋り方は、まるで死んでいるかのようだった。

先に喋った方は、


「どうしてだ?」


と聞く。

すると、やはり活気はない状態で、


「もう疲れたから…」


と、答える。

先に喋った方は、少し呆れた笑みを見せると、


「まぁいいか。今回は()()をしろと言われただけだからな」


と、答えた。

そして、パチンといい音で指パッチンをすると、

二人は風で掻き消えたかのように消えた。

蒼野にとって、この二人が何者なのかなど、今は知る由もなかった。



「はぁ…」


僕は一つ、大きなため息をつく。

そりゃあ、突然現れた人間に悪魔に会ったでしょと言われ、更には異次元空間のような場所に連れてかれた挙句、天使軍と闘おうと言われたら、誰だって疲れるだろう。

その代わりに、僕は一つ、大きな約束をした。

桃谷とした、『いつか、僕を殺す』こと。


「蒼野さん、失礼します」


ふと、ノックと共にそんな声が聞こえる。

入ってきたのは、看護士さんだった。

すると、看護士さんは、部屋をキョロキョロ見渡してこう言う。


「あれ?面会で人来てませんでした?なんか凄いニコニコしてた人」


恐らく、灰坂(はいざか)の事だろう。

あの人はいつでもニコニコしていたが、何かいい事でもあるのだろうか?

僕はそんなこと思いながら、看護士さんにこう伝える。


「あの人は帰りましたよ」


勿論だが、灰坂のことを詳しく伝えても信じてなんかくれないだろう。それどころか、脳に異常があるのではと、終わったはずの精密検査を再びやるなどと言われたらたまらないので、僕は隠した。

そもそも、恐らく重要機密だろう。


「そう、ならいいんだけど」


と、看護士さんは言った。


「そうだ、蒼野さん。もうすぐ退院ですよ」


看護士さんは続けて言った。

僕は、


「じゃあ、もう必要なさそうな物はまとめちゃいますね」


と、言った。

看護士さんは笑顔でわかりましたとだけ言うと、そのまま病室を出ていった。


「ふう、病院から出るの忘れてたよ」


突然、何も無いところから灰坂が現れる。

僕は驚いて、灰坂を押し戻そうとする。


「痛い痛い!蒼野くん!離して!」


僕は、ハッとして力を弱める。

すると、灰坂はすぐに立ち上がる。


「すいません、驚きの余り…あと、病院の人には帰ったって伝えたので大丈夫で」


「き、君、結構凄いことするねぇ…」


苦笑しながら灰坂は言う。

すると、灰坂は思い出したように、ポケットの中から鍵のようなものを出す。


「あ、これ、あの場所に移動するためのスペアキー。これで、いつでも移動できるよ」


僕は、灰坂の差し出してきた鍵を受け取る。


「あ、ありがとうございます。あまり使わなそうですが…」


「そんなことは無いよ。逃げ道がない時にも使えるし、あちらの時間経過はこちらより遅いから、色んなことが出来るよ」


灰坂はニッコリ笑ってそう言った。


「じゃあ、僕は戻るよ。蒼野くん、お大事に」


灰坂はそう言って後ろを向く。

僕がお辞儀をして、ほんの一瞬、目を離すと、灰坂はもう居なかった。

……To be continued

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