複製(コピー)の赤宮
桃谷が寝たあと、部屋から出た僕は、基地内部の散策を始めた。
基地は、三階建てだが、かなり広く、どこにこんな物が建っているのか気になるほどだった。
1階は、生活スペースと、食料庫などの倉庫があった。
驚いたのは、倉庫の中に、銃や刀、剣などの武器が大量にあったことだ。
あんなもの、どこで使うのだろうか。
2階には、厨房、保健室などの業務用スペース的なものが多くあった。といっても、僕は料理も看護も出来ないので、使うというよりも、使われる方が多いだろう。
特に目立ったものもなく、僕は3階へと上がった。
「よっ!蒼野…だっけ?」
後ろから声がする。
僕がふっと後ろを向くと、そこには先程見た、赤宮が居た。
「赤宮さん。どうしたんですか?」
僕はそう尋ねる。
すると、赤宮は、
「いや、フラフラしてただけだよ。お前は?」
と、質問してくる。
「内部構造がどんなものか見てただけです。3階で最後です」
と、僕は答える。
「敬語は要らないよ。そっか、じゃあ、俺が案内するよ」
赤宮はそう提案する。
「じゃあ、案内してもらうよ」
僕はそう答える。
こうして、僕は赤宮と歩き出した。
「まあ、3階は特に部屋は無くて、大広間みたいになってるだけなんだけどな」
赤宮は説明する。
大広間は、3階全てが使われているようで、とても広かった。
ところどころにある家具がとても小さく見えた。
「家具は少ないけど、テレビとか使ってゲームとかも出来るから好きにやっていいぞ。なんなら、今からゲームでもするか?」
赤宮はそう提案してくる。
僕も、これ以上散策するような場所もなかったので、赤宮の提案に乗った。
しかし。
赤宮はゲームがド下手だった。
提案してきた側とは思えないほどのプレイに、接待プレイどころの話ではなかった。
「蒼野…おまえ、俺がゲーム下手だと思ってるだろ…」
赤宮がそう聞いてくる。
社交辞令としては、否定するところなのだろうが、否定もしにくい。
暫く僕が黙っていると、
「いいよ、じゃあ、俺は能力を使おうかな?」
と、赤宮が呟く。
赤宮の能力はゲームが上手くなる能力なのだろうか?
そんなことを思っていた。
すると、
「蒼野、こっちを向け」
と言われ、僕はいわれた通り赤宮の方を向く。
すると、赤宮と目が合った。
「よっしゃ!コピー出来た」
と、赤宮が言う。
(コピー?僕の能力を真似る能力?でもそしたら不死身になるだけなんじゃ…)
すると。
突然、赤宮のプレイが上手くなった。
上手くなったというより、まともになったような感じだ。
というかこのプレイの仕方は完全に…
「僕のプレイスタイルじゃないですか!?」
「ふっふっふっ、俺の能力は『人の身体、頭脳、精神的な能力をコピーする』能力なんだ!」
どういう事かよく分からず、僕は首を傾げる。
「つまり、今は蒼野のゲームスキルをコピーしたんだ。全てコピーするには体力がいるからな」
「そうなんですか…あと、精神的能力って何ですか?」
僕はそう質問する。
「性格とかだよ。優しい奴をコピーすれば優しくなれる」
僕はなるほどと思い、頷く。
「なんで、そんな能力を願ったんですか?」
僕は再び質問する。
しかし、赤宮は暫く黙り込む。
そして、
「それは、また今度な。今は教えられない」
と、断られてしまった。
無理に聞くのはどうかと思ったので僕はそこで聞くのをやめた。
「あ、もうこんな時間だ。俺は用事があるからじゃあな。蒼野」
と、赤宮は立ち上がり言った。
そのまま赤宮は去っていったが、その後ろ姿には、何か深い傷があるように見えた。