新しい仲間
不思議な空間を通っている時、灰坂は僕にこう言った。
「これから、僕達の基地に連れていくよ。大丈夫。みんな、君を快く迎えてくれるはずだ」
灰坂は微笑んでそう言った。
「もうすぐ出口だ!ほら、準備はいいかい!?」
「は、はい。大丈夫です」
一際眩しく、辺りが光る。
眩しさに目を瞑る。
ようやく周りの明るさが落ち着いた頃、僕は目を開けた。
そこには、数人の人がこちらを向いていた。
「灰坂、そいつが新しいDCか?」
一人が、灰坂に向かってそう言う。
「ああ!この子は蒼野 ソラ君!蒼野君、彼は赤宮 セツナ君だよ!口は少し悪いけど、根はいい奴だから仲良くしてあげてね!」
灰坂は僕の紹介と共にさっき、こちらに声を掛けた一人の紹介もする。
すると、赤宮と呼ばれた大学生程度の年齢に見える青年はこちらへ来て、手を出した。
「灰坂は余計なこと言うんじゃねぇよ。まぁいい、蒼野、これから宜しくな」
僕は差しのべられた手を握り返す。
すると、再び灰坂が、
「よし!次いこうか!あっちにいる、高校生ぐらいの女の子が、緑葉 シオリちゃん!あの子も気が強いけど優しい心の持ち主だから安心してね」
名前を呼ばれたのに反応して、緑葉がこちらに手を振る。
僕は軽く手を振りかえす。
「で、あそこに居る背の高い男性が、黒雨 シンヤ君。一見怖そうに見えるけど、普通に話せる子だよ!最後に、そこで寝てる女の子が、桃谷 チトセちゃん!あの子が寝てる時はあまり起こさないであげてね」
黒雨はこちらをじっと見つめて微動だにしない。
桃谷は名前を呼ばれても聞こえてないようで寝たままだ。
「これぐらいかな!紹介は。まあ、もう何人かいるけど、またいる時でいいかな。あ、あとみんな君みたいに能力を持っているけど、それはまあ知りたければ自分で聞いて回ってくれればいいかな」
「はい。ありがとうございます。というか、この組織って、いったい何をする組織なんですか?」
僕は、お礼と共に、最も気になっていたことを質問する。
灰坂の顔がフッと、真剣味を増す。
「ここの活動内容は、相対している組織、A B Uを倒すことだ。我々は、悪魔に呪いをかけられたが、彼らは、天使に祝福された。しかし、その天使の祝福は虚偽のものだった。祝福は幸福と共に破壊衝動を滾らせるものだったんだ。最近、不思議なニュースが多いだろう?あれもABUの団員によるものが多い」
真剣な表情で灰坂は言う。
しかし、その表情も直ぐに緩み、今までの灰坂の表情に戻った。
そして、灰坂は僕に聞いた。
「そうだ。君が願ったことを聞いていなかったね。君は何を願ったんだい?」
僕はただ、
「心の最深部の願いだったらしいですが、僕は死ぬことだと思っていたのに、全く逆の願いがかなってしまったんです」
と、答えるだけだった。
「それはきっと、君が心の底では、生きたいと願っているということじゃないかな?」
灰坂が言う。
ありえない、そんなことは。
「僕は死にたかった。死にたがりだった筈なんだ。だから、もしこの組織が解散する時は、誰か、僕を殺してください」
僕は真剣な表情でそう言った。
それ以外は認めないかのように。
灰坂は微笑んではいるが、目が笑っていない。
ほかの人も僕の発言に対して、少し、個々の闇が出ているように見える。
「いいよ、じゃあ、私が、殺して、あげるよ」
聞いたことのない声と共に文の切れ目が目立つ喋り方が聞こえる。
「おや、チトセちゃん。起きてたのかい?」
灰坂がそう彼女に聞く。
「ふわぁぁ…、今さっき、ね」
彼女は欠伸をしながら言う。
虫も殺せなさそうな彼女が僕を殺すという発言に僕は少々、驚いたが、再び落ち着きこう言った。
「ありがとうございます。ではよろしくお願いしますね」
こうして僕は、彼らの仲間になった。
自らの死を約束して。