出逢い
僕は飛び降りたあと、直ぐに救急車で近くの病院に運ばれた。
しかし、僕の身体には飛び降りによる怪我どころか、かすり傷一つなかった。
勿論、医者も親も驚いていたが、神様が助けてくれたのだ、と言って終わった。
その後、僕は、念の為の脳内スキャンなどをするため、一週間の入院になった。
そんな、入院中。四日目頃の話。
四日目の昼過ぎ。
ガララッ
ドアが開く音がした。
親は、毎日見舞いに来ているが、この時間には来ない。
誰だろう、と僕が顔を出すと、そこには中年程の男性が立っていた。
すると、中年男性は口を開く。
「やあ、君が蒼野 ソラ君だね?」
「は、はい。そうですが…」
と、僕はそう答える。
「良かった!君を探していたんだよ!ビルの屋上から飛び降りて、まさかの無傷の生還を果たした子って聞いてね!」
男は嬉しそうにそう言った。
「えっと…なんの御用でしょうか?」
僕がそう問いかけると、男は思い出した様に、
「そうだそうだ!忘れてたよ!僕の名前は灰坂 タツミって言うんだ!はい、これ、名刺ね」
そう言いながら、灰坂と名乗った男はスーツの胸ポケットから1枚の紙切れを取り出し、それを僕に渡す。
僕はそれに書いてある言葉を口に出して読む。
「DCU…?聞いたことありませんが、なんの略ですか?」
と、僕は質問する。
「Demon Cursed Unionの略だよ。君、悪魔に出会ったでしょう?」
そう問われ、僕はビクリとする。
灰坂の顔にも、先程の明るさは無く、こちらの瞳に奥を見るような顔でこちらを見ていた。
たしかに僕は、あの時、悪魔に出会った。
しかし、それは只の走馬灯の中の夢なのかと思っていた。
しかし、あれが本当だったのなら、この灰坂という男は何かを知っている。
あの日、僕の身体に起きた何かを。
「はい、会いました。黒スーツの執事風の悪魔のようなものに」
僕は、彼にそう言う。
「やっぱりね。じゃあ、行こうか」
と、灰坂はこちらに手を差し出す。
僕は、おもむろに、その手を掴んだ。
すると、周りの色が枯れていき、一際、明るく彩られている扉が、灰坂の目の前に現れた。
彼は、それを開くと、僕をグイッと引っ張る。
今、1羽の不死鳥が飛び立った。
自分の死に場所を探す為に。