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突然、ビーッ!と騒がしい警報がなる。

その後、放送がかかった。


A(Angel)B(Blessing)が出現。直ちに無力化に向かう』


放送の声の主は灰坂のようだった。

すると、廊下を走る音が聞こえる。

音の主は、藍川ヒトミだった。

脇には、抱えられるように藍川レイナが運ばれていた。


「あ!ソラさん!緊急招集ですよ!連れていきますよ!」


と、緊急事態とは思えない明朗さで、ヒトミは、


僕を担ぎあげた。


「えっ、ちょっ、うわぁぁぁ!?」


叫ぶ僕を無視し、ヒトミは僕を担いで全力疾走した。

そして、あっという間に廊下を過ぎ、以前会議を行った部屋に辿り着く

レイナは見た目通りに軽そうだが、それでも僕と同時に担いで全力疾走してこの速度とは、ヒトミの身体能力はとてつもないようだ。

疲れ果てた様子のレイナは、当たり前だが、気持ち悪そうにしていた。

部屋には既に、何人かの人が集まっていた。しかし、緊急だったせいか、集まりが悪いようだ。


「おっ!蒼野じゃん!その様子から見ると、藍川妹に担ぎ上げられたな?」


話しかけてきたのは赤宮だった。

こちらの気もしれず面白げに笑っている。


「は、はい…ヒトミさん、パワーが凄いですね…」


僕は息を切らしながらそう言った。

すると、赤宮はさも当然かのように、


「だってあいつ、DCUの中で一番腕相撲強いからな」


と言う。

その事実に納得しつつも唖然としていると、部屋に既にいた灰坂が、


「まぁ、そろそろいいかな?じゃあ皆さん、緊急招集に集まってくれてありがとう。…単刀直入に事実を述べます。殺人鬼のABが出現したようです」


灰坂が述べた言葉には、抑揚や感情は薄いものの、確かな危機感がこもっていた。

ABになると、恐ろしい破壊衝動にかられると、以前灰坂は言っていた。

つまり、殺人鬼がABになると、今まで以上に危険なことになるのは間違いない。


「そいつはABUの一員じゃないんだよな?最近出たみたいな言い方してるし。ってことは、今までの状況からDCのやつも一人出現してるってことだよな?」


と、質問をしたのは赤宮だった。

灰坂は軽く頷くと、


「うん。天使と悪魔が出てくるのはほぼ同時期。つまり、ABが増えればDCも増えるはずだよ。でも今は先に、この殺人鬼ABをどうにかしないと」


と答えた。

そのまま続けて今現在入っている情報を提示する。


「今のところわかっているのは、殺人鬼の名前と能力、あと一応見た目もわかっているから教えるね。名前は朱浜(あけはま) トウハ。罪は殺人と死体遺棄。死体をバラバラにして楽しむ快楽殺人者。あと、死体遺棄といっても、こいつの快楽のために使ったあとの後処理だけどね。能力は『あらゆるものを切り離す能力』。牢屋に入っても変わることは無かったんだね…。見た目は、今から写真を配るよ」


そう言うと、灰坂は全員の手元に能力で写真を移動させる。

僕は手元にも移動してきた写真を見る。

殺人鬼と呼ばれた男は、見た目は普通の一般人だった。

こけた頬と痩せ型な体型が強いて挙げる特徴だった。


「いまから、連絡があった場所に行って捜索を行います。見つけたら場所を強く頭に思い浮かべてください」


灰坂は言い終わると、初めて出会った時のように、扉を開け、先に行ってしまった。

僕も行こうとすると、ヒトミとレイナが残っているのに気がついた。


「どうしたの?ヒトミとレイナは行かないの?」


僕がそう聞くと、


「私たち二人は情報発信役なんです。お姉ちゃんが受け取って私が発信する。それで情報を伝えているんです」


と、ヒトミが答える。

すると、レイナがぶっきらぼうに、


「早く見つけてこいよ…」


と言う。

僕は、頷いて扉へ向かう。

すると最後にヒトミが、


「ソラさん!死なないでくださいね!」


と叫んだ。

僕は後ろを振り向き笑いながら、


「死にたくても死ねないんですよ」


とだけ言って、扉の中に消えた。



再び、世界が明るくなると、そこは以前までいた世界だった。

久しぶりに見た外の景色は、思ってた以上につまらなかった。

周りを確認すると、既にほかの人達は探索に行ってしまったようだ。

すると、まだ残っていた灰坂が声をかけてきた。


「蒼野君は、ここから南東から南にかけてのエリアを中心にお願いできるかな」


僕はそれを了承して、すぐに探索を始めようとする。

すると、灰坂が、


「気をつけて、いくら不死身とは言え、痛いのは嫌だろうからね。そっち側にはシオリちゃんも行ってるからきっと大丈夫だとは思うけど…」


と心配そうに言う。

僕は気を使わせないように、笑顔で、


「大丈夫ですよ」


とだけ答え、探索を始めた。



人通りの少ない道を主として探していると、


「あら、蒼野くん。あなたもこっちの探索を任されたのね」


緑葉に会った。


「緑葉さん。殺人鬼は見つけましたか?」


「いいえ、全然。そもそもこの犯人、一般人との差異が全然ないのよね」


緑葉が面倒くさそうに言ったので、僕もそれを首肯する。

すると、緑葉が洋服のポケットから何かを取り出す。

それはなにかの破片だった。


「なんですかこれ?」


「これ、さっきそこら辺で拾ったの。周りにあるものに比べて、断面が恐ろしいほど滑らかだから…」


その先は言わずとも察することが出来た。

ここら辺に殺人鬼が潜んでいる可能性が高いということが。

反射的に、辺りを見渡す。

意識したせいか、至る所から気配がするような気がする。

しかし、周りには緑葉しかいない。

それが分かると、僕は少し気を抜いた。


「まぁ、蒼野くんも気をつけてねとしか言いようがないのだけれどね」


僕が軽く頷くと、緑葉は再び捜索を始めた。

緑葉が歩いていった方向とは逆の方向に歩き始める。


しばらく捜索した後、僕は木陰で休んでいた。

緑葉に見つかったら怒られそうだがあまりにも殺人鬼が見つからないので休憩していた。


すると、突然後ろから声がする。


「そこの青年」


僕が驚き、後ろを振り向くとそこには動きやすそうな服装で纏めた、細身の男性が立っていた。

ここら辺を走っているジョガーかなにかだろうと思い、注意を促す。


「ここら辺に今、殺人鬼がいるそうです。遭遇する前に避難を…」


「それよりも、君は、細切れ肉とミンチ肉どっちが好きかな?」


突拍子もない質問に一瞬呆気に取られる。

とりあえず、


「どちらかというと細切れですかね」


と答えた。

すると男性はスッとこちらに手を伸ばす。

伸ばした手が僕の体に触れる寸前。

僕は、何か禍々しい気配が、体に触れたような気がして仰け反った。

男性の手は僕に当たらず、後ろにあった木に触れた。


その瞬間だった。


触れた木が、全て細切れになったのだ。

驚きとともに後ろへさらに下がる。

そして叫んだ。


「お前が殺人鬼の朱浜トウハか!」


男は舌打ちをする。


「バレてしまってはしょうがない。足を切らせて逃げれないようになってもらう」


そうはさせまいと、さらに後ろへ。

そして、言われた通りに、この場所のことを強く思い浮かべる。

すると、頭からなにかが抜き取られた感覚と共に、ヒトミから、


[情報受信、発信しました!]


とテレパシーが入る。

しかし、しばらくの間は耐えなければならない。

早くても緑葉でさえ、数分はかかるはずだ。

と思っていると。


「待たせたね」


灰坂が現れた。

灰坂は次元的なワープが可能なので距離とかは関係なく来られる。

と言っても、灰坂もあまり戦闘向きではないから、状況はあまり変わらない。


「増えましたね?まぁ、どちらにしろ細切れにしますが」


朱浜が冷酷に睨んでそう言った。

そして、朱浜は意外と軽快な走りでこちらに近づくと、サッと右手を伸ばす。


「蒼野くん、避けるよ!」


「はい!」


短い返事とともに、2人はそれぞれ反対方向に飛び退く。

朱浜は僕の方を追いかけるようだ。

それに気づくと僕はできるだけ朱浜から離れようと逃げ続けた。

しかし、久しぶりに激しく動かした体は、体力の低下が著しかった。


そして──


朱浜に追いつかれ、その手が触れようとしたその瞬間。


[ソラさん!目をつぶってください!]


頭の中に、ヒトミの声が響く。

咄嗟に目をつぶった。


「グァッ!?」


朱浜の驚愕と苦痛の入り混じった声。

そっと、目を開けるとそこには腕に怪我を負い、血を流している朱浜がいた。

朱浜が後退する。

すると、後退する朱浜を狙って、光の線が振り下ろされた。


「これは…」


[シオリさんが遠距離から光線を撃ってくれています!これを機に体勢を立て直してください!]


ヒトミの声が聞こえなくなったあと、僕はさらに距離を離した。

朱浜は未だに緑葉のレーザーに追われている。


すると──


「遠くからしつこいですね!?届かなくなればどうってことないですよ!」


朱浜は、光線の飛んでくる方向に手をかざした。

突然、朱浜のかざした手の延長線上の空が、黒く染まった。

例えではなく、ただただ何も無い黒が現れたのだ。

そして、さっきまで降り注いでいた光の雨がパタリと止んだ。


「ほかも邪魔できないように、切ってしまえ!」


朱浜が足を地面に強く踏みつける。

すると──

周りを囲むように、先程空を黒く塗った何かが現れた。


(まさか…空間的な接続を切られた…!?)


「これで…逃げられないでしょう?」


朱浜が再びこちらに近づく。

逃げようとするが、先程より動きが鈍くなった気がした。

再び追いつかれ、今度こそ四肢を絶たれるかと思ったその時。


何処からか声がした。


……To be continued

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