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光の緑葉

病院の中をえも言われぬ緊張感が包む。

ピリピリとした、張り詰めた空気が、体を刺すような感覚。

前にいる二人も緊張に顔を歪ませて、一言も喋らない。


「待って……」


一番前にいた緑葉(りょくは)が、手を横にして静止を促す。


「居た…!」


緑葉はしゃがんで壁に張り付き、少し覗くように曲がり角を見る。

僕もはみ出さないようまがり角から目を出す。

黒雨(くろさめ)も覗く。


「うん、アイツだ。」


「ここから狙う?」


「そうした方がいいんじゃないですか?」


3人で小声で話す。

すると、男がふと、こちらを向く。

そしてこっちに歩いてくる。


「やばい!見つかる!」


「黒雨さんの能力を使うしか…」


「ダメ…僕の能力は少し時間がかかる。今からじゃ間に合わない。」


その間にも、男と3人の距離は縮まっていく。


「わかった、私が一度目くらましをするからその間に少し離れるわよ。これ、掛けておいて」


緑葉はそう言って僕と黒雨にサングラスを渡す。


蒼野(あおの)くん、君もこれ掛けておいて。シオリの能力は範囲が広いから。」


「もうすぐやるわよ…!」


男が丁度曲がり角にたどり着き、こちらを向く。

その瞬間。

世界が瞬き、目の前が薄い灰色になる。

恐らく何かが光ったのだろう。

すると、


「逃げるわよ!」


と、緑葉の声。

その声につられるように、僕は後ろを向いて走り出す。


階段や曲がり角をしばらく走った後、


「今のは…緑葉さんの能力ですか?」


と、僕は聞いた。


「ええ、『光を操る能力』」


緑葉は言った。

つまり、さっきのは閃光弾の要領で目くらましをしたのだ。


「ていうか、シオリ。なんで攻撃しなかったの?」


黒雨が尋ねる。

何故、黒雨は緑葉の事だけ名前呼びするのか少々疑問に思ったが、取り敢えず質問するのは辞めた。


「私の能力の攻撃射程は遠距離から中距離よ?あんなに、近いと、私は勿論、蒼野くんやシンヤにも被害が出るわよ?」


緑葉は少々強い口調でそう言った。


「わかったわかった。大丈夫、次は攻撃できるよ。」


「そうね。じゃあ、アイツを探しに行くわよ」


黒雨と緑葉は合意して再び歩き出した。



歩き出して、しばらく経った後、


「居た…今度こそ仕留めるわよ」


再び、緊迫感のある緑葉の声が聴こえる。

そして、緑葉は右の人差し指をピンと立て、そこをじっと見つめる。

すると、緑葉の右の人差し指が光を帯びる。

緑葉はそれを保った状態で指示を出す。


「私が奴の足を撃ち抜く。その瞬間に二人は奴を取り押さえて、捕縛して」


「分かった。」


「りょ、了解です」


緑葉の指示に、黒雨が返事したのを聞いて、慌てて返事をする。

そして、緑葉は指示の了解を聞くと、廊下から光を帯びた指先を近づける。

そして、


「いくわよ…!」


と、緑葉が言った瞬間、緑葉の指先の光がほんの一瞬、細長くなり、廊下の曲がり角のその先に飛んでいくのが見えた。


「行くよ!蒼野くん!」


黒雨にそう言われ、急いで付いていく。

曲がり角を曲がると、そこには先程の男が足を抑えて、痛みに悶えている。

男の足の下にはかなりの量の血が出ている。


「蒼野くん、そっち抑えて。」


黒雨がそう指示する。

すると、男が、


「俺に触るなぁっ!」


と叫ぶ。

僕はそれを無視して押さえつけようとする。

しかし、

押さえつけようとした僕の手は、男の少し手前で止まってしまう。

黒雨の方も同じことが起きている。


「能力か。でも、無駄だよ。」


黒雨がそう言うと、緑葉が近づいてくる。

緑葉は、男に銃を構えるように指さしてこう言い放つ。


「今すぐ能力を解きなさい。さもなければ、さっきの数倍の熱量を持った光線で貴方を撃つわ。銃弾は止められても、秒速30万kmの光を止めることは出来ないはずよ」


感情の欠片も見えないその言葉に、僕は寒気を感じる。

しかし、そんな言葉を聞いても、男は能力を解かない。


「そう、残念ね。じゃあ、さよなら」


その時、男が、


「吹っ飛べ!」


叫んだ。

そして、今まで、男の少し手前だった見えない壁が突然、こちらに迫ってきた。

周りにいた僕達3人は全員吹っ飛ばされ、壁にぶつかる。

男は、大きくなった壁の反作用によって、僕達とは逆方向へと飛んでいく。

男は着地した後、こちらを向くと、


「逃げるぞ!霧を撒いてくれ!」


と、再び叫ぶ。

すると、何処からか霧が出てくる。


「逃がすかぁっ!」


緑葉が再び光を細長くして飛ばすが、霧によって光の力は弱くなり消えてしまった。

僕達3人は、しばらく何も出来ないまま、霧が晴れるのを待った。


そして、霧が晴れた頃。

そこにはもう誰もいなかった。

残っているのは、悔しそうな緑葉と無言で霧のあった場所を睨む黒雨、そして、ただ唖然とする僕だけだった。


……To be continued

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