動物園のパラドックス
私は動物園の飼育員。毎日毎日、動物のお世話に追われてる。
ここの動物園はとても人気。なぜなら動物たちが元気だから。他の動物園みたいに、動物たちをオリに入れない。とっても広い場所に、野生と同じような場所に、動物たちを入れている。
お客は言う。「ごらん、動物たちが動いてる。とても元気に動いてる。ここは良い動物園だね。動物に優しい、良い動物園だね」
だけど私はいつも思う。「良い動物園? ナニソレ?」
私は動物が好き。だから飼育員になった。だけど決してぬぐえない疑問がひとつ。
「私が懸命に奉仕しているのは、動物? それとも、人間?」
仲間は言う。「動物たちのために」
私は思う。「本当に?」
動物が元気になればなるほど、お客は笑う。だって誰も、動物たちの悲しい姿を見たくない。オリに閉じこめられた姿を見たくない。お客が見たいのは、動物たちの自由な姿。楽しい姿。面白い姿。
動物たちを野生から連れてきて、野生に似た場所に入れる。誰かが聞く。「何のため?」仲間は言う。「動物のため」
「ナニソレ? おかしい」
私は思う。そして笑う。
「私が懸命に奉仕しているのは、動物?それとも、人間?」
決してぬぐえないパラドックス。
制作時間約10分です。ちなみに作者は飼育員じゃありません。すいません。テレビを見ていて感じたことを、詩っぽく書いてみただけです。読んでくださり、ありがとうございました。