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一期一会

やられたなあ。


まさか、ヘアアクセサリーのお店の隣にジュエリーショップがあるとは思わなかった。

しかもショーウィンドウにドレスと同じ色合いの大きな石のついたネックレスが飾ってあるとも思わなかった。

案内してくれたセルジュ様も目的のお店の隣にジュエリーショップがある事は知っていたそうだけど、ドレスにぴったりなジュエリーがある事は予想していなかったらしい。

ドレスを決めたのもついさっきの事だし…。


カフェではしっかりプレタルを食べて、お会計も「ここは私が」と押し切って支払いを済ませ、腹ごなしにヘアアクセサリーのお店へと歩いていたところまでは順調だと思っていたのに。



「良いんじゃないか。よく似合ってるし」

「でも…」

と言っても、試着までさせて貰っては説得力にかけている。


気が付かずに素通りすれば良かったかもしれない。

でもショーウィンドウ越しにネックレスを見た後、お店に入って行こうと私を引っ張ったセルジュ様に一切の迷いは無かった。


「少しシンプルな気もするが、これなら普段でも着けられるし迷惑でなければ贈らせてもらえないだろうか…?」

「迷惑なんてそんな事ありません…でも…」

二人でショーウィンドウを覗きこんでいた時にばっちり値段も見てしまっている。

しかもこれからまだヘアアクセサリーを揃えると言うのに…だ。


でも帝国所蔵のアクセサリーを預けられるのもよく考えてみれば恐ろしい。

今試着しているネックレスもそれなりのものだけど、ルアノーブ帝国所蔵のアクセサリーってどんなものだろうか…もしかするとこれよりも豪華かもしれない。万が一傷でもつけてしまったら…と思うと素直に受け取った方が良い気もする…。



「レイチェル、気に入ってはいない?」

「あ、いいえ。気に入ってはいます」

「なら、決まりだ。これにします」

「はい!有難う御座います。着けたままになさいますか?」

「はい、着けたままで」

「では値札をお外し致しますね」

「お願いします」

どうやら気に入っていると言った時点で決まってしまったらしい。

セルジュ様が持っている黒い革のお財布から出ていくお札を見守りながら、手に入れてしまった大振りのストーンを持ち上げて見る。

幾重にもカットが施されて、淡い紫色がキラキラ光っている。

「なかなかそのサイズでその透明度のものはないんですよ。当店ではお直しも致しておりますので何か御座いましたら」

店員のお姉さんが後ろを向いた私の着けているネックレスから値札を外すと、作業台の下から名刺と店の紙袋に入った細長い紺のジュエリーケースを取り出して、私に渡してくれた。


「ありがとうございます」


「良かったな、合うアクセサリーが見つかって」

セルジュ様が満足そうだ。

「あ、はい。セルジュ様、ありがとうございます、大切にしますね」

「喜んで貰えたなら私も嬉しい。あとは髪飾りだな…」



またも「ありがとうございました」の声を背にして、いくらも歩かないうちに目的のお店に着く。


髪飾り専門店かと思えば、少しのジュエリーや服飾雑貨、帽子なんかも置いてあるお店だった。


さっきのジュエリーショップもそうだけど、このあたりのお店は狭く小さめのお店が多いようではあった。

大通りから少し入って、裏路地のような雰囲気もあるけど舗装された石畳は綺麗で靴の音がよく響く。


このお店はその狭いスペースの中で三階建てにつくられたわりと近代的な佇まいのお店で、店舗は一階部分だけのようで階段にはスタッフオンリーの立て札があった。



「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

個性的な感じのする坊主頭のお兄さんが話し掛けてきた。

「夜会用の髪飾りを探している。髪型の相談にものってもらえると有り難いのだが」

「そういう事でしたら、少々お待ち下さい。上に適任者がおりますので呼んで参ります」

階段をパタパタと登っていく後ろ姿を見送らないうちに、近くに飾ってあった帽子をかぶって楕円形の鏡を覗いてみる。

「どうですか?」

「それよりこちらの方が似合いそうだな」

そう言われて、手にしていた茶色い帽子を置いて、セルジュ様が渡してくれた深緑の帽子をかぶってみる。

「あ、本当だ。セルジュ様も何かかぶってみませんか?」

「そうだな。私はそれよりもゴムが欲しいかな」

「セルジュ様の髪も長いですもんね」

胸下あたりまで伸びた艶のある紺の髪。


髪飾りと言えば、ヴィリン様に頂いたものも重宝している。練習のかいあって、扱うのも上手くなったと思う。


でも、ここのお店は女性ものの方が多そうだ。

セルジュ様に似合いそうなゴムはないかなーと、狭い店内に所狭しと置かれた髪飾りのコーナーを探してみる。


「あ、これなんてどうですか?」

控え目な銀色の金属の飾りがついたゴムをセルジュ様に見せてみるものの、首を横に振られてしまった。

「無理に探す事はないよ」

「そういうわけでもないのですが、セルジュ様にはちょっとテイストが違いますね…」

可愛いけど、女性ものだからなあ。



「すみません、お待たせ致しました」

その時、階段の方から二つの足音が近付いてくるのがわかった。

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