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詩集 寂しさにたへたる人の

魚の涙

作者: 小日向冬子

裏切りにさえ足りないほどの

かすかな爪痕が


儚く消えてしまう前に

息の根を止めてみせる


はやる気持ちを宥めすかして

尖った心を粉々に砕いて

やり切れなさと折り合いをつけて

淋しさを言いくるめて


どこでもないどこかに

そっと手放せば


深い水の底で

目の見えない魚たちは

散りばめられた僕の欠片を

ごくりごくりと

飲み込んでいくだろう


そして

重い腹を抱えたままで

静かな泥に埋もれて眠り


硬い鱗を揺らしながら

正体のない悲しみに

ひっそりと涙を流してくれるだろう


僕は

過ぎ去った季節になど

てんで気付かないふりで


何食わぬ顔をして

遠く水面に散った

淡い花びらを眺めていればいい

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― 新着の感想 ―
[良い点] 深い海の底で口を開けている魚の姿が浮かんできました。 作品全体にひろがる静けさが好きです。 どうしようもできないやり場のない深い悲しみを感じ、 本当に悲しい時には、人は泣くこともできな…
[良い点] 「重い腹を抱えたままで 静かな泥に埋もれて眠り」 が良かったです。沈鬱な重みを感じます。 [一言] もっといろんな詩を読ませて下さい。楽しみにしています。
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