魚の涙
裏切りにさえ足りないほどの
かすかな爪痕が
儚く消えてしまう前に
息の根を止めてみせる
はやる気持ちを宥めすかして
尖った心を粉々に砕いて
やり切れなさと折り合いをつけて
淋しさを言いくるめて
どこでもないどこかに
そっと手放せば
深い水の底で
目の見えない魚たちは
散りばめられた僕の欠片を
ごくりごくりと
飲み込んでいくだろう
そして
重い腹を抱えたままで
静かな泥に埋もれて眠り
硬い鱗を揺らしながら
正体のない悲しみに
ひっそりと涙を流してくれるだろう
僕は
過ぎ去った季節になど
てんで気付かないふりで
何食わぬ顔をして
遠く水面に散った
淡い花びらを眺めていればいい