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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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続・釣り日和

コミカライズ19話・後編が更新されました!

とうとう……とうとう……! 楓と夏緋推しの方は見て頂きたいです~!


今回のSSは『青桐兄弟ルート・夏緋エンド後』の話です。

青桐兄弟ルートが終わったのに、また青桐兄弟ですみません。

コミカライズを読んでいたら、夏緋を書くことを止められませんでした……。

 僕と夏緋先輩の関係は特別なものに変わったが、変わらず生徒会室に集まっている。

 明日は休日となった金曜日の放課後――。


「よし、明日釣りに行くぞ」


 会長が突然そんなことを言い始めた。 

 何が「よし」なのだ。

 全然よくない。


「急すぎる……嫌ですけど……」

「勘弁してくれ」


 インドアの僕に突然のアウトドアはキツイし、夏緋先輩にとっては海も釣りも苦行でしかない。

 二人で断ったのだが……。


「いいのか? 央と二人で行ってくるぞ?」

「僕が行くことは確定ですか」


 拒否権がないのも相変わらずだ。


「夏緋先輩……あなたの兄ですよ? あきらめましょう」


 夏緋先輩は全力で拒否したい顔をしているが、「言っても無駄」という血はあなたも持っているものなので、早々にあきらめてください。




 ※




 土曜日。雨天中止を願ったのだが、腹が立つくらい快晴になった。

 結局僕達は、会長の希望通りに釣りをするため、以前と同じ場所にきた。

 釣りの道具も同じショップで一式を借りた。


 海は変わらず凪いでいるが、前より日差しが強い気がする。

 そうなると、機嫌が悪くなるお嬢様がいるわけで……。


「臭い。暑い」


 聞いたことあるセリフだなあ。

 今日もパーカーのフードを被って日差しを防御している。

 前回で学習したのか、今日はネイビーのような濃い色ではなく白のパーカーだ。

 いつもと少し雰囲気が違って新鮮だ。

 海と爽やかなイケメン、似合うな……。


「なんだ?」

「あ、いや……お嬢様は今日も釣らないんですか?」

「誰がお嬢様だ。やるわけないだろ」


 見惚れていたとは言えないので誤魔化すと、心底嫌そうな顔をされた。

 まあ、やらないだろうなと思う。

 でも……。


「夏緋、お前もやるんだ」


 会長が夏緋先輩の前に竿を突き出した。


「断る」


 断る、は白兎さんの専売特許です。

 だから、夏緋先輩は使えません。


「負けた奴が帰りの荷物持ちだ。勝負をしない奴は負けだからな」


 会長はそう言うと、自分はさっさと準備を済ませ、釣れるスポットを探して離れていった。


「…………」

「ご愁傷さまです」


 絶望した顔で会長の背中を見送っている夏緋先輩に慰めの声をかける。

 レンタルを頼んでいるときに、会長が「釣り竿3つ」と言っていたので、僕は察していましたよ。

 夏緋先輩は「はあ」とため息をつくと覚悟をしたのか、釣りをする素振りを見せたが……僕に釣り竿を向けてきた。


「え、何?」

「餌をつけてくれ」


 今日も餌はエビ――オキアミを買ってきたのだが、夏緋先輩は触りたくないらしい。


「こんなところで姫プレイをしようとするのはやめて貰っていいですか」

「いいからつけろ」

「はいはい」


 お嬢様はお姫様に進化してしまったらしい。

 まったく、手がかかる。

 仕方なく餌をつけてあげると、夏緋先輩はしかめっ面のまま釣りを始めた。

 リールの扱いなどは、見ていたから分かるようだが……。


「立ったままで釣るんですか? 座っても汚れないようにまた僕の上着を敷いてあげましょうか?」


 やっぱり地べたに座るのは嫌らしい。

 前回もズボンが臭くなったとか、ぶつくさ文句言っていたもんなあ。


「オレのことは気にするな」


 そう言われても気になる。

 でも、お姫様の世話ばかりしていたら、僕の釣る時間がなくなって最下位になってしまう。

 しばらくは放っておこう。

 そう思って僕も釣り始めたのだが……。


「釣れたじゃないですか」


 夏緋先輩がリールを巻き始めたと思ったら、20センチくらいのカサゴが上がってきたので驚いた。

 僕は「おめでとうございます」とぱちぱち拍手をしたのだが、夏緋先輩は僕を見て停止している。


「何!?」

「これを取ってくれ」

「…………」


 そんな気はしてたけどね……!

 オキアミを触りたくない夏緋先輩が、生きた魚を触ることができるのかな、って!

 分かってたけど……めんどくせ~!!


「もおぉ……姫のお世話が忙しいわー! 今日はずっと、ひいちゃんって呼びますね」

「……海でひと泳ぎしたいのか?」


 え……仮にも恋人を海に突き落とすつもりか?

 冗談だろうけど、本当だったら一緒に落ちて貰うからな!


「ひいちゃんって呼ばれるのが嫌だって言うなら、取ってあげませんよ? 自分で魚を掴んで、針を外してくださいね」

「…………」


 顔をしかめたまま何も言わないが、早く取れと言わんばかりに釣り竿を突き出してきた。

 無言は了承と受け取り、魚を針から外してあげる。


「まったく、手のかかるひいちゃんですねー」


 釣りが再開できるように、もう一度餌をつけてあげようとしたのだが……。


「……やっぱりオレはいい」


 夏緋先輩は釣り竿を置いてしまった。

 お姫のひいちゃんが拗ねちゃった。


 でも、諦めたのか僕の隣に腰を下ろして座った。

 竿しか触っていないのに、アルコールのウエットティッシュで入念に手を拭いている。

 本当にくさいのが嫌なんだな、と笑ってしまった。


「釣れて楽しかったでしょ?」

「楽しそうに見えるか?」


 質問を質問で返さないでください。

 答えなくても分かるけどね!


 夏緋先輩は海も釣りも嫌だろうし、僕も最初は気が重かったけれど――。

 また三人で釣りに来られてよかったなあと思う。

 思わずにこにこしていると、こちらを見ていた夏緋先輩が「ふっ」と笑った。


「まあ、お前とのんびりするのはいいな」

「! ひいちゃんがデレた」

「…………」


 まだ呼び方が気に入らないのか、しかめ面に変わってしまった。

 それは残念だが……。

 こんなにもここにいるのが嫌なのに、僕とのんびりするのはいいと言って微笑んだ、綺麗な横顔を見れて嬉しい。


「僕も一緒にのんびりできて楽しいです」


 竿にあたりはなくて、全然釣れる気配がないけれどニコニコしてしまう。


「暑い……帰りたい」

「!」


 釣り竿を支えながら海を見ていると、夏緋先輩がもたれ掛かってきた。

 僕の肩に頭を乗せてくる。

 えっと……重いのですが……。

 っていうか、ちょっと甘えてます?

 もしくは、くさくてうんざりしてます? どっち!?


「僕にくっついたら臭いんじゃないですか?」

「餌に触れていないところはいい。手で触ってきたら……どうなるか分かっているだろうな」


 態度と言葉の温度差が激しすぎる。

 姫の情緒、どうなってますか?

 僕の情緒も色んな意味でドキドキして大変なのですが!


「何をイチャついている。お前ら、蹴り落とされたいか?」

「! 会長!」


 いつの間にか、背後に会長が立っていてびっくりした。

 僕が驚いている一方で、夏緋先輩はのんびりともたれていた頭を戻し、めんどくさそうに会長を見ている。

 そんな夏緋先輩を見て、会長は顔をしかめていたが、フッ……と自信たっぷりなどや顔になった。


「見ろ」

「え? ……わあっ!」


 得意げにそう言って見せてきたのは、30センチくらいの綺麗な鯛だった。すごい!


「大物じゃないですか! ここで鯛なんて釣れるんですね!?」

「夏緋も釣ったようだが……俺が優勝だな」


 夏緋先輩をちらりと見ながら、会長はニヤリと笑っている。

 煽っているようだが、夏緋先輩はもう釣りをしたくないのか、完全スルーだ。

 まあ、一匹釣っているから余裕はあるか。

 あと釣っていないのは僕だけだ……。


「僕が今のところ最下位ですね……くそっ、絶対釣る! もう、ひいちゃんのお世話はしませんからね!」

「!」

「……ひいちゃん?」


 夏緋先輩が「余計なことを言うな」という視線を送ってくるが、僕は黙りません。


「『餌つけて』とか『釣れた魚を取って』とかお世話が大変なんで、今日は一日『ひいちゃん』です」

「ははっ! それはいい! 一日じゃなくて、ずっとでもいいんじゃないか?」


 チッと舌打ちをする夏緋先輩を見て、会長は更にニヤニヤにする。


「では、俺はより大きな獲物を狙ってこよう。お前もがんばれよ、『ひいちゃん』」


 鯛を見せびらかしたかっただけなのか、会長はまた離れて行った。

 それにしても……会長のひいちゃん呼びは胸にくるものがある。

 ぜひ今後も続けて頂きたい。




 ※




「暑い」「くさい」と零す愚痴ロボットと化した夏緋先輩を宥めつつ釣りを続けた結果――。


「僕も釣れてよかったです!」


 夏緋先輩のカサゴより、一回り大きいカサゴを釣り上げることができた。


「夏緋先輩、最下位ですね……」

「ふっ、荷物を頼むぞ」

「…………」


 餌に触れた僕と会長が触ったうえ、汚れた釣り竿や荷物のすべてを渡され、夏緋先輩は絶望している。

 わあ……可哀想……。

 少しは手伝おうと、荷物をいくつか貰おうと思っていたら、ぐいっと会長に肩を抱かれた。


「央は俺に任せろ」

「はい?」


 僕は荷物でないのですが!


「それはいい」


 反論する前に、夏緋先輩に手を引かれ――。

 僕達は手をつないだ状態で歩き出した。

 会長を置いて行ってしまうので振り返ると、呆れたように笑ってこちらを見ている会長がいた。


「会長、笑ってないで早くこないと、『ぼっち』に『置いてけぼり』も追加されちゃいますよ! あと、やっぱり荷物は分けて持ちましょう! 会長は夏緋先輩と手をつないでください!」

「「馬鹿を言うな」」


 すごい、隣と後ろでハモった!

 妙な感動をしているうちに、追いついてきた会長と夏緋先輩が荷物を半分こして――。

 気づけば、既視感のある二人に両手を引かれるスタイルになっていた。


「どういうこと??」

「これが一番しっくりくるだろ? お前が一番、歩幅が狭くて遅いからな」

「それ、僕の足が短いって言ってるだろ!」


 会長の言葉に反論したら、夏緋先輩まで笑ったのだが! 許せん!

 でもまあ、手を引いてもらうのは楽だし……今度は僕が世話して貰う姫プレイということで……!

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