SS+ボイスコミックのお知らせ
コミカライズ『BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました①巻』が、YouTubeチャンネル『アンジェンテ』様にてボイスコミック化します!
第1話の配信が、本日12/1 20時からとなっております。
【豪華キャスト様】
天地央・佐藤元 様 / 楓秋人・天﨑滉平 様 / 柊冬眞・笠間淳 様
天地真・田丸篤志 様 / 櫻井春樹・深町寿成 様
とっても素敵な動画に仕上げてくださっているので、ぜひご覧いただけると嬉しいです!
※SSはボイコミにちなんだ感じにしてみました。
放課後、楓と一緒にいつものゲームセンターに来た。
今日はクレーンゲームで、声を録音できるクマのぬいぐるみをゲット!
「僕はクマ。今、ゲームセンターにいるの」
『僕はクマ。今、ゲームセンターにいるの』
「僕はクマ。今、あなたの前にいるの」
『僕はクマ。今、あなたの前にいるの』
早速試してみると、ちゃんと録音できていた。
「おおっ、すごいな」
「可愛いクマを都市伝説のメリーさんみたいにしないでよ」
「じゃあ、楓が何か録音して」
無茶ぶりをして楓に渡す。
「えー? 何かって何?」
受け取った楓は困り顔でクマを見ている。
ぬいぐるみと楓の組み合わせは強い。
約束された可愛さに恐れ入る。
「んー……。挨拶? おはよう、とか。おやすみとか? 何でもいいよ」
適当に答えると、楓は何か閃いたようで録音し始めた。
「『アキラ、今日も一日おつかれさま! 明日はもっとボクを好きになってね。おやすみなさい』」
「…………!」
にっこりと「はい」と渡されたクマを受け取る。
クマ――お前、とんでもないものになって帰ってきたな……。
「アキラ、なんで顔を隠してるの」
「いたたまれない」
熱くなった顔を両手で覆う。
照れるというか、恥ずかしいというか……!
こんな直球を投げられて、無傷でいられるわけがないだろ!
「それ、消さないでよ?」
「消し、たいなあ……?」
家でもこれを聞くたびに、僕は顔を覆うことになりそうなのだが……。
「……せっかく録ったのに」
楓が拗ねたように呟いた。
ぷいっと逸らした顔が、一瞬悲しんだように見えて――。
うっ……罪悪感がっ!!
「はあ……残しておけばいいんだろ」
「うん!」
悲しそうな顔なんてどこに行った? というくらい、素晴らしいにっこり笑顔の楓—―。
もしかして、嵌められた?
「……僕ってちょろいのか?」
「…………」
「おい、今頃気がついたの? みたいな顔をするな」
「えへへ」
家に帰ってからもう一度再生してみたが、やっぱり顔を覆った僕だった。
※
翌日――。
録音できるクマぬいぐるみだが、声を三つ録ることができる。
……ということで。
「兄ちゃん、何か言って」
クマの説明をしたあと、兄の顔の前に差し出した。
「3、2、1、キュー!」
「『央。ゲームはほどほどにして、夜は早く寝なさ――』」
「他のをください。……あ、じゃあ、春兄の好きなところ言って」
「……はあ?」
お母さんモードで笑顔だった兄が、一気に照れを隠したツン顔になった。
思わず僕はにんまりだ。
「ほら、早く考えて! カウントとるよ?」
「そんなこと、央に言ってどうするんだ……」
「恋愛の参考にします。言ったって減るものじゃないんだからさ。ね?」
「…………」
兄は絶対に言わない、という顔をしている。
どうしたものか……。
こうなると絶対に聞きたい、言わせたい!
「あ、そうか。春兄を呼んできて、本人の前で言って貰った方が盛り上が――」
「余計に言わないからな? それに春樹を巻きこむな」
照れぷんすこする兄に叱られてしまう。
あまりやり過ぎたら本当に怒りを買ってしまうから、もうだめかなあ。
「でも聞きたい……」
「…………」
しょんぼりしていると、兄が少し考える様子を見せ始めた。
お? これは押せばいけるも!?
「夜更かしもほどほどにするし、録音しないから!」
「…………」
「お願いします!」
「…………」
ジーッと見つめてひたすら訴えていると、兄は「はー……」と息を吐いた。
これは、もしや……!?
「春樹には言うなよ?」
「うんうん!」
「……まあ、一緒にいて――」
「ちわーっす、上がらせて貰……」
「!」
突然、リビングに春兄が入ってきた。
その瞬間に兄は、何事もなかったかのようにキッチンへ行ってしまった。
動揺したようで、無駄に冷蔵庫を開け閉めしているが……。
……くっそー! 春兄、タイミング最悪!
「……俺、何かやった?」
春兄を睨むと、申し訳なさそうに聞いてきたが、絶対に許せない!
「せっかく兄ちゃんの『春兄の好きなところ発表』を録音できると思ったのに……! 一緒にいて、しか言ってないのに……!」
「え? 真のオレの好きなところ!?」
「央」
「あ」
気づけば、キッチンにいるはずの兄が目の前に立っていた。
「……央、春樹に言うなって言ったよね? 録音しないって言ったよね?」
「その、出来心といいますか……」
笑顔でジリジリと詰め寄ってくる兄が怖い……!
「没収」
「ああああっ!!!! クマアアアアッ!!」
なんてことだ……クマが兄に連れ去られてしまった……!
一瞬とはいえ、「一緒にいて……」と言う照れボイスが入っているのに……楓のアレも入っているのに……!!
「春兄! 取り返して!!」
縋りついて頼むと、春兄は「期待するなよ?」と言って、キッチンに戻った兄へ挑んでいった。
「真。それ、俺が預かったらだめ……だめかあ……」
春兄は兄のひと睨みでとぼとぼと帰ってきた。諦めるの早っ!
「もっと戦ってよ!」
「俺には無理だ……」
頼りにならない旦那さんだなあ!
仕方ない、自分で取り戻そう。
「兄ちゃん、返してええええ」
……としばらく泣きついた結果――。
夜には無事、返して貰いました。




