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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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81/100

SS+ボイスコミックのお知らせ

コミカライズ『BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました①巻』が、YouTubeチャンネル『アンジェンテ』様にてボイスコミック化します!

第1話の配信が、本日12/1 20時からとなっております。


【豪華キャスト様】

天地央・佐藤元 様 / 楓秋人・天﨑滉平 様 / 柊冬眞・笠間淳 様

天地真・田丸篤志 様 / 櫻井春樹・深町寿成 様


とっても素敵な動画に仕上げてくださっているので、ぜひご覧いただけると嬉しいです!


※SSはボイコミにちなんだ感じにしてみました。

 放課後、楓と一緒にいつものゲームセンターに来た。

 今日はクレーンゲームで、声を録音できるクマのぬいぐるみをゲット!


「僕はクマ。今、ゲームセンターにいるの」

『僕はクマ。今、ゲームセンターにいるの』


「僕はクマ。今、あなたの前にいるの」

『僕はクマ。今、あなたの前にいるの』


 早速試してみると、ちゃんと録音できていた。


「おおっ、すごいな」

「可愛いクマを都市伝説のメリーさんみたいにしないでよ」

「じゃあ、楓が何か録音して」


 無茶ぶりをして楓に渡す。


「えー? 何かって何?」


 受け取った楓は困り顔でクマを見ている。

 ぬいぐるみと楓の組み合わせは強い。

 約束された可愛さに恐れ入る。


「んー……。挨拶? おはよう、とか。おやすみとか? 何でもいいよ」


 適当に答えると、楓は何か閃いたようで録音し始めた。


「『アキラ、今日も一日おつかれさま! 明日はもっとボクを好きになってね。おやすみなさい』」

「…………!」


 にっこりと「はい」と渡されたクマを受け取る。

 クマ――お前、とんでもないものになって帰ってきたな……。


「アキラ、なんで顔を隠してるの」

「いたたまれない」


 熱くなった顔を両手で覆う。

 照れるというか、恥ずかしいというか……!

 こんな直球を投げられて、無傷でいられるわけがないだろ!


「それ、消さないでよ?」

「消し、たいなあ……?」


 家でもこれを聞くたびに、僕は顔を覆うことになりそうなのだが……。


「……せっかく録ったのに」


 楓が拗ねたように呟いた。

 ぷいっと逸らした顔が、一瞬悲しんだように見えて――。

 うっ……罪悪感がっ!!


「はあ……残しておけばいいんだろ」

「うん!」


 悲しそうな顔なんてどこに行った? というくらい、素晴らしいにっこり笑顔の楓—―。

 もしかして、嵌められた?


「……僕ってちょろいのか?」

「…………」

「おい、今頃気がついたの? みたいな顔をするな」

「えへへ」


 家に帰ってからもう一度再生してみたが、やっぱり顔を覆った僕だった。



 ※



 翌日――。


 録音できるクマぬいぐるみだが、声を三つ録ることができる。

 ……ということで。


「兄ちゃん、何か言って」


 クマの説明をしたあと、兄の顔の前に差し出した。


「3、2、1、キュー!」

「『央。ゲームはほどほどにして、夜は早く寝なさ――』」

「他のをください。……あ、じゃあ、春兄の好きなところ言って」

「……はあ?」


 お母さんモードで笑顔だった兄が、一気に照れを隠したツン顔になった。

 思わず僕はにんまりだ。


「ほら、早く考えて! カウントとるよ?」

「そんなこと、央に言ってどうするんだ……」

「恋愛の参考にします。言ったって減るものじゃないんだからさ。ね?」

「…………」


 兄は絶対に言わない、という顔をしている。

 どうしたものか……。

 こうなると絶対に聞きたい、言わせたい!


「あ、そうか。春兄を呼んできて、本人の前で言って貰った方が盛り上が――」

「余計に言わないからな? それに春樹を巻きこむな」


 照れぷんすこする兄に叱られてしまう。

 あまりやり過ぎたら本当に怒りを買ってしまうから、もうだめかなあ。


「でも聞きたい……」

「…………」


 しょんぼりしていると、兄が少し考える様子を見せ始めた。

 お? これは押せばいけるも!?


「夜更かしもほどほどにするし、録音しないから!」

「…………」

「お願いします!」

「…………」


 ジーッと見つめてひたすら訴えていると、兄は「はー……」と息を吐いた。

 これは、もしや……!?


「春樹には言うなよ?」

「うんうん!」

「……まあ、一緒にいて――」

「ちわーっす、上がらせて貰……」

「!」


 突然、リビングに春兄が入ってきた。

 その瞬間に兄は、何事もなかったかのようにキッチンへ行ってしまった。

 動揺したようで、無駄に冷蔵庫を開け閉めしているが……。


 ……くっそー! 春兄、タイミング最悪!


「……俺、何かやった?」


 春兄を睨むと、申し訳なさそうに聞いてきたが、絶対に許せない!


「せっかく兄ちゃんの『春兄の好きなところ発表』を録音できると思ったのに……! 一緒にいて、しか言ってないのに……!」

「え? 真のオレの好きなところ!?」

「央」

「あ」


 気づけば、キッチンにいるはずの兄が目の前に立っていた。


「……央、春樹に言うなって言ったよね? 録音しないって言ったよね?」

「その、出来心といいますか……」


 笑顔でジリジリと詰め寄ってくる兄が怖い……!


「没収」

「ああああっ!!!! クマアアアアッ!!」


 なんてことだ……クマが兄に連れ去られてしまった……!

 一瞬とはいえ、「一緒にいて……」と言う照れボイスが入っているのに……楓のアレも入っているのに……!!


「春兄! 取り返して!!」


 縋りついて頼むと、春兄は「期待するなよ?」と言って、キッチンに戻った兄へ挑んでいった。


「真。それ、俺が預かったらだめ……だめかあ……」


 春兄は兄のひと睨みでとぼとぼと帰ってきた。諦めるの早っ!


「もっと戦ってよ!」

「俺には無理だ……」


 頼りにならない旦那さんだなあ!

 仕方ない、自分で取り戻そう。


「兄ちゃん、返してええええ」


 ……としばらく泣きついた結果――。


 夜には無事、返して貰いました。


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