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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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あけましておめでとうございます

 兄と年越しそばを食べ、その後はスマホに届く新年の挨拶に黙々と返事をしてから寝た……ということはなく徹夜でゲームをした。

 ゲームの中でも新年イベントがあって忙しいのだ。

 夜通し課金勢と戦い、朝日を浴びてからスヤスヤと眠っていたのだが――。


 バンッ!


 荒々しく扉が開く音に驚き、覚醒した。何事!?


「央、起きろ!!!!」

「ふあっ!?」


 布団を勢いよく捲られ寒くなった。

 眠い目を擦りながらも、こんなことをするのは誰かと前を見た。


「え……に、兄ちゃん?」


 エプロン姿のいつもの兄だが、視線が鋭すぎて人相が違う。

 もはや別人……誰ですか!


「……チッ」


 戸惑う僕を見て、兄なのか疑わしい人が舌打ちをした。

 兄ちゃんが舌打ち!?


「いつまで寝ているんだ。お前、さては遅くまでゲームをしたな?」

「『お前』!?」

「ゲームをしたのか、と聞いている!」

「はい! ……ゲーム、しました……」


 どう見ても兄だけど……この人誰!?

 怖いんですけどー!!


「ゲームなど時間の無駄だ。今日からはさっさと寝ろ!」

「兄ちゃん、どうしたの? 何か変なものでも食べた?」


 もしくは、人格が変わるぐらい衝撃的なプレイをされた……とか?


「馬鹿を言っていないで、早く降りてきて朝飯を食え!」


 そう言うと兄はまたバンッと扉を閉め、階段をドカドカ下りていった。


「えー……」


 もしかして、僕はまだ寝ているのか?

 頬をつねってみたが……痛い。

 叩いてみても痛い!

 やっぱり夢じゃない!


「とにかく、下に行くか……」


 謎の狂暴化した兄の怒りを買うわけにはいかない。

 急いで着替えてキッチンに向かった。


 テーブルに置かれている朝食は普通……むしろ、ホットサンド(僕の好物)なので機嫌がいいかもしれない。

 どういうことか、さっぱり分からない……。


 今兄は何か家事をしているのか、キッチンに姿はない。

 戻って来るまで待った方がいいか迷ったが、冷めないうちに食べることにした。


「頂きます。……美味しい!」


 料理の腕前も変わらない。

 さっきの狂暴な兄は見間違えだったかも……。

 そんなことを考えていると、兄が戻って来た。


「はっ! まだ食っているのか」


 僕を見て呆れた様子の兄は、乱暴にエプロンを取ると椅子に腰かけ長い足を組んだ。

 ……兄の狂暴化は幻覚ではなかったようだ。


 それにしても……なんだか既視感があるんだよなあ、この感じ。


「よく考えれば、何故オレばかり家事をしているんだ?」

「に、兄ちゃん?」

「お前に食事の準備をしろとは言わない。だが、洗濯くらいはできるだろう」

「う、うん……」


 確かに兄に甘えてばかりだから、僕もそれくらいはした方がいい。

 でも、こんなにストレートに言われたことがなかったからびっくりした。


 なんか……調子が狂うよー!


 狂暴化した兄の機嫌を伺いながらもそもそ食べていると、リビングの扉が開き、春兄が入って来た。

 救いの神来たーっ!!

 僕はこの鬼みたいな兄に疲れて来たところだった。


 ん? ……鬼?


「真、遅れてごめ――」

「遅いぞ! 随分待たせてくれたじゃないか」


 兄が春兄に向って怒鳴る。


「わ、悪い……」

「まあいい、座れ!」


 偉そうにそう言う兄と、あの人が重なって見えた。

 これは……。


「会長!!」


 兄ちゃんが会長化してる!!!!

 なんで!?

 狂暴化改め、会長化した兄がまだ春兄を叱っている。


「そもそもお前は、家ばかりじゃなくいい出かけ先を見つけられないのか!」

「いや、家が落ち着くだろ。一番都合がいいし……」

「頭が猿なだけだろ!」

「悪いか! お前が可愛いから仕方ないだろ!」


 立ち上がった二人が掴みかかる勢いで怒鳴り合う。

 これじゃケンカップルだ……仲直りのアレが盛り上がるやつ……!!

 ……なんて興奮している場合じゃない。

 これはこれで最高だけど、兄カップルは仲良しラブラブじゃなきゃいやだ!


「兄ちゃん、会長になんかならないで!!」

「うるさい! お前は黙ってろ!」

「…………っ! もうやだ、会長過ぎる~! いつもの兄ちゃんに戻ってよー!!!!」




 ※




「はっ……!」


 バッと目が開き、自分のベッドにいることが分かった。


「今のは……夢? 初夢がこれ?」


 思考が追い付かず、ぼんやり天井を見ていたら段々と落ち着いて来た。


 兄ちゃんが会長化するなんて、恐ろしい夢だった……。

 手で額の汗を拭っていると、コンコンとノックの音がした。

 カチャという音のあと、兄がひょっこりと顔をのぞかせた。


「あ、起きてる。央、おはよう。さっき大きな声が聞こえた気がしたけど大丈夫?」

「!! 兄ちゃ~ん!」

「うん?」


 情けない声を出すと、兄がベッドまで来てくれた。


「どうした? 怖い夢でも見た?」


 ベッド脇に腰かけ、心配してくれる兄に抱き着く。

 やっぱり僕の兄はこうじゃないと……!


「兄ちゃんはずっとこの家にいて! 春兄のお嫁さんにならないで! あ、やっぱりお嫁に……というか、春兄にお婿さんになって貰って三人でここで暮らそ!」

「なっ……! まったく……まだ寝ぼけてるだろ。おせちもお雑煮もあるから、下に来て食べるんだよ。あ。あけましておめでとう」

「あけましておめでとう! 兄ちゃん、一生よろしくお願いします!」

「はいはい。分かったから着替えておいで」


 やっぱり天地家長男ばんざい!

 僕の兄ちゃんが一番だ。




 ※




「――っていう夢を、今日見まして……。初夢が悪夢過ぎました」


 兄の美味しいおせちを食べ、落ち着いた僕は電話をかけた。


『お前、どういうつもりでそれをオレに話しているんだ?』


 電話の相手は会長の弟、夏緋先輩だ。


「深い意味はないです。夏緋先輩は大変だなあと思ったら、なんとなく夏緋先輩の声が聞きたくなって……」

『……それならいいが』


 決して「僕の兄ちゃんが最高!」という戦争を起こしたかったわけじゃない。

 ちょっと気の毒だと思ってるけど……。


「あと、新年の挨拶したかったんです。あけましておめでとうございます!」

『ああ。まあ、去年はお前にも世話に…………なったか?』

「疑問形はやめてください! 世話になったな、でいいじゃないですか」

『そういうことにしておいてやるよ』


 この上からクオリティは、会長も夏緋先輩も一緒……。

 やっぱり兄弟だな。


「あ、そうだ。夏緋先輩、空いてる日ありませんか? 一緒に初詣とか行きません?」

『明日なら空いてるが……どこも混んでるだろ?』

「初詣が嫌なら他のところでもいいですよ? とりあえず、明日……」

『央、生徒会長である俺にまず挨拶をして、俺を誘うべき――』

「やっぱりキャンセルでー!!」


 慌てて通話終了ボタンを押す。


 ……あっぶなー!

 会長が近くにいたー!

 正月だし、家にいて当然か……。


 今の流れだと、夏緋先輩を誘うと会長がセットついて来るところだった。

 ギリギリ回避できてよかった。

 会長は圧倒的にかっこいいし、すごいけれど……。

 正月早々、しかもあんな初夢を見たあとの会長は体に悪い。

 胃も心もお休みしたいから、せめて三が日が過ぎてからにして欲しい。


「あ、でも、会長にもちゃんと挨拶しておかなきゃ。メッセージにしておこう。『あけましておめでとうございます。僕は三が日まで面会謝絶です』っと……これでよし!」


 今年もいい年になったらいいな!




あけましておめでとうございます!

12月27日にコミカライズ二巻が発売しました。

コミカライズ共々、今年もよろしくお願いいたします!


※初詣は夏緋の方から掛け直して一緒に行きました!

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