白兎さんルート後(特殊IF)SS
本日12月7日はコミカライズを担当してくださっている加奈先生のお誕生日です。
加奈先生おめでとうございます!
……ということで、加奈先生に捧げるお祝いSSを書きました。
白兎さんルート後の特殊IFストーリーです。(※白兎さんの前世の姿が出てきます)
僕は登校するために、朝の身支度を終えた。
彼女である白兎さんと一緒に行くため、合流地点で待ち合わせをしている。
そろそろ出ようかなと思っていたところでインターホンが鳴った。
扉を開けると、見たことがない華四季園の制服を来たイケメンが立っていた。
僕よりも背が高いし、体格もしっかりしているから三年生だろうか。
背丈や体格は兄よりも春兄に近いかな。
少し目にかかった黒髪から見える赤い瞳が綺麗だ。
でも、この目は見たことがあるような……?
それにしても、こんなイケメン華四季園にいたかな?
「あの、どちら様でしょうか?」
「! よかった……」
「?」
誰かと聞いたのに安心されるなんて謎すぎる……。
兄の知り合いだろうかと考えていると、イケメンが生徒手帳を取り出し、僕に見せてきた。
「私は野兎愛美です」
「……は?」
この人は何を言っているのだろう……僕の白兎さんは銀髪美人な女の子だ。
こんな視線を上げないと目が合わないイケメンではない。
でも、イケメンが見せて来た生徒手帳には、確かに野兎と書いてあった。
しかし、名前が愛美じゃない。
「野兎渉? えっと……白兎さんのご親戚?」
従兄が転入してきた、とか?
「違います。本人です。朝起きたら、前世の姿になっていました。名前も……前世の私は榊渉という名前だったのですが、生徒手帳にもある通りに野兎渉になっていました。しかも、家族は私のことを元から渉だと言うんです……。それで、天地君もそうなっていたらどうしようと思って……」
「は? え?」
……何かのドッキリだろうか。
でも、転生のことを知っているし……どういうことだ!?
「じゃあ、野兎愛美にしか分からないことを……。付き合うきっかけになった告白は屋上で、私の方から言おうと思っていたのに、天地君から彼女になりませんかと言ってくれて……」
「ちょ、ちょっと! 待って、落ち着いて!」
「? 落ち着くのは天地君です」
あ、この返しはとても白兎さんっぽいけれど……!
でも、まだ信じられない。
もしかして白兎さんが、僕達のことをこのイケメンに話したのか!?
「兄さん!」
大混乱している僕の耳に、慣れ親しんだ澄んだ声と、駆け寄って来る足音が聞こえてきた。
「兄さん、いた! やっぱりここだったんだね」
僕とイケメンの元にやって来たのは、今日も背後が輝いて見える儚げ王子様な深雪君だ。
「深雪君、『兄さん』って……この人?」
「? そうですけど……」
深雪君の純粋な目が「なんでそんなことを聞くの?」と言っている……!
もしかして、このイケメンが言っていることは本当なのか?
「深雪君ってお姉さんいる? 『愛美』っていう……」
「愛美、ですか? おれの兄弟は、兄の渉だけです。親戚にも愛美って人はいないですよ?」
「兄さん……」
イケメンさんは、嬉しいような、寂しいような、複雑そうな顔をしている。
もし本当にこのイケメンが白兎さんなら……兄と呼ばれることは嬉しいけれど、元の自分を忘れられていることはつらい、とか?
「兄さんの様子がおかしいから追いかけて来たんですけど、あき兄が一緒なら大丈夫ですね。おれは先に学校に行きますね」
「あ、うん。いってらっしゃい……」
白兎さんだと名乗るイケメンを残されてとても混乱しているが、深雪君の方が登校に時間がかかるから引き留めるわけにはいかない。
「えっと……」
困っているような表情で立っているイケメンを改めて見る。
嘘を言っているとは思えないし、確かに雰囲気が白兎さんなんだよなあ。
「じゃあ……登校しながら話を聞こう、かな?」
僕がそう声をかけると、イケメンは少し安心した様子で頷いた。
鞄を持って来て、一緒に学園に向かって歩き出す。
すぐにイケメンは、自分の身に起こったことを話してくれたのだが……。
「えっと……まとめると、白兎さんが、朝起きたら前世の姿になっていて、家族の記憶も書き換わっていたってこと?」
「はい。生徒手帳も野兎渉になっていました。もしかしたら……同じ転生者の天地君なら、記憶が変わらずにいるのではないかと思い、家を飛び出したんです」
そんなことが本当に起こるのか? と思うけれど、僕だってゲームの世界に転生という不思議体験をしているわけだし、何より彼氏の僕が白兎さんを信じないと!
「でも、突然前世の姿になってしまうなんて……どうしてそんなことになったんだ? 心当たりは?」
「まったくないです。もしかしたら……バグ、みたいなものでしょうか。転生者同士の私達が、付き合ったりしたから……とか?」
「そういうこともある……のかな?」
そうだとしたら、僕や白兎さんが転生した原因もバグ、なのかな?
……。
…………。
………………。
考えてもまったく分からない!
「……さっぱり分からないですね。調べようもないですし」
「そうだね……」
二人で「うーん」と唸りつつも、ふと気になったことを口にする。
「そのビジュアルで白兎さん口調なのが、なんだか不思議」
「……確かに、前世の姿で今の話し方をしていると違和感がありますね。教室で浮くのも嫌ですし、この姿の間は前世の感じで話すようにします。まずは私じゃなくて俺、ですね。……あ、俺……だな」
「イケメン!」
白兎さんの話し方が前世バージョン――渉モードになると、イケメン度がグンと上がった気がした。
そんな僕を見て、白兎さんは顔を顰めている。
「あ、ごめん。今は本来女の子なのに、イケメンって言われたら複雑だよね」
「そういうことではありま――いや、そうじゃないんだ。天地君が男にイケメンと言うと、嫌な波動を感じるというか……」
それって……BLゲームの主人公である僕が男を褒めると、BLが香って来るってこと?
彼女にこんなこと言われる僕ってなんなのだ。
「ああああっ!!!!」
突然隣から上がった大声に、僕の肩がビクッと跳ねた。
「何!? どうした!?」
「私が元の姿に戻らなかったら……自らBLすることになってしまう!!!!」
愕然としている白兎さんを見ながら冷静に考える。
自らBL……つまり僕×渉(白兎さん前世フォルム)ってこと?
いや、白兎さんのこのビジュアルなら、左と右をチェンジした方が自然!?
……なんてことを思ったが、あることに気がついた僕は思わずニヤついてしまった。
「ははっ」
「何笑ってるんですか!? 笑い事じゃないですよ!!!!」
「また口調が戻ってるよ? いや、男になったから別れよう、とは言われないんだなってホッとして」
「!! そ、それはそうでしょう……」
指摘した瞬間は赤くなったけれど、気にしていない振りをすることにしたのか、平静を装う白兎さんを見て更にニヤつく。
照れ顔イケメンに癒されるし、しかもそれが白兎さんなのだからダブルで美味しい。
「……天地君は私が男のままだとどう思いますか?」
「? どうもしないと思うけど……」
強いて言えば、どっちが左か右か問題があるが……。
「白兎さんはどっちがいい? 戻りたい?」
「前は深雪を守るためにも、男の方が何かといいと思っていましたけど……。今は戻りたいです」
そうだよな……僕も天地央として生きて来たのに、今突然前世の姿になったら嫌だ。
「じゃあ、なんとか戻る方法を探そうか。……僕も見上げるより、元の身長差の方が、色々と都合がいいし?」
「!」
下から覗き込むように顔を近づけると、カッと目を見開いた白兎さんの頭が動いた。
高速で頭が接近してきたが……ときめく方向の接近ではない。
「……あっぶな! 頭突きしようとしたな!?」
「すみません。条件反射で」
「こわいって!」
姿は変わっても、スキンシップをするには勇気が必要らしい。
体が逞しくなった分、重傷を覚悟するべきか……。
なんとか早く元の白兎さんに戻ってもらわなければ……!
※
学園に到着して、先に僕が教室に入ると楓が駆け寄って来た。
「アキラ、おはよ! あ、野兎もおはよ」
女子には「さん」をつけて呼ぶ楓が、自然と呼び捨てにしているということは、楓の記憶も変わっているのか。
白兎さんも同じことを思ったのか、挨拶も返せず戸惑っている。
すると、僕の腕に絡んできた楓が、立ち止まっている白兎さんを見た。
「何ボーっとしてるの? アキラの隣、貰っていい?」
「駄目だ」
はっー! 瞬時にキリッと返す、渉モードな白兎さんかっこいい!
推しのファンサを受けたファン状態になっている僕の隣で、楓はつまらなさそうな顔をしている。
そして、僕の腕から離れると……。
「うかうかしてると取っちゃうからね!」
ニヤリと笑うと、楓を呼ぶ他のクラスメイトのところへ行った。
今のニヤリ顔、小悪魔っぽかった……可愛――。
「可愛いって、思ったな?」
「…………。……ハイ」
白兎さんは真顔なのだが、圧を感じて小さくなった。
すると、そんな僕を見て白兎さんが呟いた。
「怒ってない。香ってきただけ」
……多分、僕が気まずそうにしていたからフォローのつもりで言ってくれたんだと思うけれど、全然フォローになってないですよ。
フォローとはこうするのだ。
「好きなのは白兎さんだけどね」
コソッと伝えると、キッと鋭い眼光で睨まれた。
教室だから、条件反射の武力は抑えられているらしい。
照れ隠しで睨まれるだけで済んだ。
それにしても、照れるイケメンは素晴らしい。
でも……やっぱり、元の白兎さんの姿も恋しいな。
※
授業が終わり、次の授業の予定を見る。
「次は体育か……だるい……。ん?」
白兎さんを見ると、体操着が入ったカバンを持ってむずかしい顔をしていた。
「あ、更衣室での着替え問題か」
「全部脱ぐわけじゃないし、大丈夫だが……」
前世で男だからといって昨日まで女の子だった人が、男が着替えしているところに入るのは気まずいか。
「わた……俺はあまり人が来ない離れたところのトイレで着替えてくる」
「じゃあ、僕もそうするよ」
白兎さんはついてこなくてもいい、という顔をしたが、一人で行かせるのは嫌だ。
二人で離れたところにあるトイレに向かう。
すると、途中の階段に近いところで見慣れたイケメンに遭遇した。
「あ、夏緋先輩」
僕に気づいた夏緋先輩が足を止め、こちらを見た。
「体育か」
「はい。…………? あ」
夏緋先輩と視線が合わないなと思ったら、隣にいる白兎さんのことを見ていた。
僕は夏緋先輩の告白を断って、白兎さんと付き合うことになったけれど、白兎さんが前世の姿になったことで何か記憶に変化があったりするのだろうか。
多分、白兎さんが『渉』に変わっただけだと思うけれど……。
そもそも夏緋先輩は僕と白兎さんの関係を知っているのだろうか。
直接報告したことはないけれど、どこからか耳に入っているとは思うのだが……。
「…………チッ」
夏緋先輩は舌打ちをすると、近くにあった階段を上って行った。
あの反応だと、僕達の関係をやっぱり知っていたのかな。
「おい、今の腑抜けた態度はなんだ!」
「うん?」
夏緋先輩が上った階段から、何故か会長の声が聞こえて来た。
姿は見えないけれど、近くにいるみたいだ。
「俺みたいに言ってこい! 正々堂々とあきらめない、とな!」
「はあ……頼むから放っておいてくれ……」
聞いたことがあるセリフと、心底めんどくさそうな夏緋先輩の声が聞こえたような……?
階段で何を揉めているんだ。
「お前が言えないなら、俺が代わりに言って来てやろう!」
「……余計なことするなって!」
騒がしい声と共に、得意げな顔の会長とイラついている様子の夏緋先輩が降りて来た。
「会長? 夏緋先輩?」
「央、聞け! 夏緋はお前――」
「いいから気にするな」
「?」
一体何だ? とぽかんとする僕の前で、何やら夏緋先輩が会長を説得している……。
少しすると、会長はちらりと僕を見た後、不満げな顔で去っていった。
よく分からないが、会長が何も言わなかったってことは……説得に成功した?
会長って説得できる生き物だったんだ! 夏緋先輩すごい!
そう感動していると、この場に残っていた夏緋先輩が心底嫌そうにしながら頭をガシガシしていた。
「……ったく、今言うタイミングじゃないんだけどな」
「?」
夏緋先輩が何かボヤいているが……。
会長を説得するために身売りでもしましたか?
気の毒に……になんて思っていると、夏緋先輩が僕を見た」
「お前のことはあきらめないからな。覚悟してろよ」
「!」
そう吐き捨てると、夏緋先輩も去って行った。
……何だったのだ?
もしかして、ツン告白の再来……!?
混乱していると、隣にいる白兎さんが動いた……って、ええ!?
「白兎さん、その拳は何!?」
明らかに僕に向かって拳を構えているのですが!
暴行事件が起ころうとしている……!
「天地君の記憶を消した方がいい気がしたから……」
「武力で何とかしようとしないで!」
どう収集をつけようかと迷っているところで、ちょうど授業開始を知らせるチャイムが鳴った。
チャイム、ありがとう!
荒ぶる白兎さんをなんとか抑えて、急いでグラウンドに向かう。
……それにしても、びっくりしたなあ。
※
そんな衝撃に出来事がありつつ、体育の授業が始まったのだが、体育教師の第一声でげんなりした。
「今日は長距離走だ。トラック十周な」
「まじか……」
400メートルトラックを十周だから、4キロ!
昨夜は0時開始のゲームイベントをやってしまったため、少し寝不足だ。
まあ、軽く走って乗り切るか。
歩かなかったらセーフということで……。
「天地君……いや、天地」
「! はい」
凛々しい渉モードの白兎さんに呼ばれ、つい僕が敬語になってしまった。
「絶対に負けない」
「!」
白兎さんの目が本気だ……!
全力で挑んでくるなら……僕も手を抜けない!
「僕だって」
そう言い返すと、白兎さんがニヤリと笑った。
僕の彼女……いや、今は彼氏? 一々かっこいいぞ!
でも、負けないからな!
少し緊張するような、わくわくするような気持ちでスタートラインに立つ。
成績評価の材料になるタイム計測の時より気合が入るな。
先生がホイッスルを鳴らし、僕らは一斉に走り出した。
負けたくないから、出だしから飛ばしたのだが……白兎さん、早っ!
僕よりも前に出た白兎さんに追いつき、横に並ぶ。
「白兎さん、最初から飛ばして大丈夫?」
「そっちこそ、無理しない方がいいよ」
ニヤリと笑う白兎さんがさらに加速していく。
まじか……これで10周は正直キツい!
結構自信があったのだが、引き離されそうだ。
周を重ねて行くに連れて、僕らについて来ていた他の生徒達が離脱していく。
8周まで来ると、白兎さんと僕が独立してトップになった。
「天地君~!」
「渉君がんばって~!」
遠くで女子達が応援してくれている。
白兎さんの方ががきゃーきゃー言われているように思うのは気のせいか?
僕よりかっこいいのは彼氏として凹むものがあるが、運動が好きなのか、クールにしていても活き活きとしている白兎さんは本当にかっこいい。
本来の白兎さんでも、綺麗になってから女子の中でもファンがいるみたいだし。
そんなことを考えている間に、また引き離されそうになる。
「アキラ! がんばれ~!」
「おう!」
一周差で追い抜いた楓から応援して貰いながら、白兎さんに食らいついたが――。
「クソッ……負けた……!」
ラストスパートで追い抜くつもりだったのに、白兎さんの方が最後も早かった。
「今のわた――俺は、前世だと高三くらいの背丈だから、リーチの差かな」
三年対一年となると、仕方ないのかなと思う面もあるが……。
「どっちにしろ悔しい!」
「ははっ」
フォローなんていらないぞ! と睨むと、白兎さんがさわやかな笑顔で笑った。
前世の姿でこんな笑顔を見たのは初めてだったので、少しドキッとした。
「それに、天地君は寝不足だろ?」
「あれ? 言ったっけ?」
「朝、眠そうな顔してる時は、ゲームをして夜更かしした時だから」
なんと……白兎さんはお見通しだったか。
ああー、体調万全で挑んで勝ちたかったー!
……なんて言い訳ができてちょっとラッキーだったかも……。
渉モードな白兎さんには、勝てる気がしないぞ!
※
僕はクラスメイトと話をしていると、白兎さんは手洗い場に行った。
話が終わったので、僕も手洗い場に向かっていると、突然僕の前に影が現れた。
誰かが近くにいるのだと分かり、そちらを見る。
すると、そこには作業着姿の柊が立っていた。
つけていた軍手を外しているが……花壇で作業でもしていたのだろうか。
ニコニコこちらを見ている柊に、とりあえず挨拶をする。
昼が近いけど、まだ午前中だから「おはよう」でいいかな?
「おはようございます……」
「おはよう。作業をしていたら、がんばって走っている可愛い央が見えたよ」
「はあ……」
必死に走る帰宅部を見て何が可愛いのだ……。
なんて呆れていると、突然柊に抱き抱えられ、体が地面から離れた。
「うわっ」
何故に突然のお姫様抱っこ!
「疲れただろう? 用務員室で休憩していった方がいいんじゃないかな」
「いやいやいやいや……」
そんな危険地帯では絶対に休まらない!
むしろ絶対に逃げなければいけない場所だ。
「休憩しなくても大丈夫です! 下ろしてください!」
「遠慮せずに」
「全力で遠慮します! PTA〜!!」
「またそういう………。…………っ」
急に柊の膝がカクンとなり、僕は落ちそうになった。
……今だ!
チャンスを察知した僕は、なんとか柊の腕から逃れることができた。
「……またオトモダチ君か」
「? あ、楓!」
顔を顰める柊の前には、眼光が鋭い楓が立っていた。
どうやら楓が柊の膝裏を蹴って、僕を助けてくれたようだ。
王子様〜!
「友達ですらない奴がアキラを連れて行くとか、ただの誘拐じゃん」
「ほんとにそれ!」
誘拐、の部分に激しく同意する。
「ひどいな。俺と央の仲じゃないか」
「どんな仲だよ!」
「アキラも気をつけなきゃダメでしょ? そんなことより、どこかに行こうとしてたんじゃないの?」
「! そうだった、ありがとな!」
柊がまだ何か言いたげにしていたが、楓が睨んでいるからか、あきらめてくれたようだ。
……本当にあきらめただろうか。
今日はもうなくても、今後誘拐事案が発生するかもしれないから気をつけよう。
※
手洗い場に着くと、白兎さんの銀髪……じゃなくて、黒髪が見えたので駆け寄ろうとしたが、誰かと話していた。
相手を見ると、見覚えがある女子だった。
「あの子は……白兎さんに塩対応だった桃色ツインテールの女子か」
彼女の記憶でも白兎さんの性別が変わっただけなら、僕と白兎さんはBLとして認識されているということかな?
近づくと二人の話声がはっきり聞こえた。
桃色ツインテール女子の声は荒々しい。
「いい加減、天地君から離れてよ! 天地君が変な目で見られるじゃない!」
おっと、屋上イベントの再来か?
やれやれと思いながら仲裁に入ろうとしたら――。
「それはできない」
「!」
まっすぐに言い切る渉モード白兎さんにキュンとしてしまった。
このまま前世の姿から戻らないなら、左側を譲ってもいいかなと思ってしまうかっこよさだ。
「前から思っていたが、あなたは可愛いんだから、もっと素直にしていたら誰からも好かれると思う」
「なっ、なっ……! …………っ」
桃色ツインテールの女子は言い返そうとしていたが、何も言えないまま去って行った。
攻撃されても自分は武器を持たないところが、やっぱり白兎さんだよなあ。
「? いたんですか。あ、いたのか……。緩い顔して、どうしたんだ?」
「いやあ、白兎さんなら、どっちの姿でも好きだなって思って」
そう言うと、白兎さんは苦虫を嚙み潰したような顔になった。
「なんでだよ! そこは照れるところだろ!」
「また香ってきたので……」
まったく……ブレないところも好きだけどさ!
※
結局、元に戻る方法が分からないまま迎えた翌朝――。
「戻りました」
インターホンが鳴り、扉を開けると立っていたのは、銀髪美人な僕の彼女の白兎さんだった。
「白兎さん!」
思わず抱きしめようとしたのだが……何故かサッとかわされた。
「すみません、つい、条件反射で」
「うん、なんとなく察してた……。…………!」
しょんぼりしていると、今かわしたのに白兎さんの方から抱きしめてくれた。
「前世の姿では、こういうことをしづらいので、戻ってよかったです」
どんな姿の白兎さんでも好きだと思ったけれど、やっぱり今がいい。
お互い転生してよかった。
……あえて言うと、今はお母さんに抱きしめられている子供みたいになっているから、僕は抱きしめる側がよかったけどね!
「もう一回、僕からしたら駄目?」
「自力でやってみてください」
「いやっ、やってみてるけど! 力がっ、強いって!」
「軟弱な」
明日はコミカライズ12話の更新日です!