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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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青桐兄弟ルート③

本日ニコニコ&CWでコミカライズ11話が公開されました!

みんな勢ぞろいで豪華です!


今日の更新内容は釣り翌日の昼食、青桐兄弟ルートVerです。

 昼食の時間になり、お腹が空いている僕はすぐにでも食堂に行きたかったのだが、先生に用事を頼まれてしまった。

 五分ほどで済ませ、先に食堂に行った楓と合流するために急いでいると、休日だった昨日も散々見た赤い髪が視界に入った。


「あ、会長」


 ――しまった。

 つい声に出してしまったが、今捕まったら食堂に行くのが遅くなってしまう。

 会長が僕に気づきませんように! と願ったが……時すでに遅し。

 すでにこちを見てニヤリと笑っていた。

 一瞬ダッシュで逃げることも考えたが、足で会長に勝てるわけがない。

 エンカウント回避失敗!


「会長、昨日ぶりですね! ではまたー……」


 顔でスルーして通り過ぎようとしたのだが、足で進路を塞がれてしまった。

 止め方が完全にカツアゲをするチンピラなのですが……。


「喜べ。ちゃんと学園内でも構ってやろう! 一日も早く、櫻井(あの馬鹿)よりも俺を好きになって貰わなければ困るからな」

「お気持ちだけ頂いておきますー……」

「遠慮するな。行くぞ」

「ああもうおお!」


 結局、昨日と同じように強制連行だ。


「分かりましたよ! ついて行きますから引っ張らないでください! 行くってどこに行くんですか?」

「昼飯を食わせてやる。黙ってついて来い」


 会長はそう言うと、スタスタと歩き始めた。

 今のうちに逃げたいけれど、ついて行かないとあとが怖い。

 仕方ないので、楓にメッセージで謝りを入れておいて、会長のあとについて行った。

 楓にもあとで絶対怒られるよなあ。つらい……。


「兄貴? 天地も……。どこかに行くのか?」

「夏緋先輩!」


 昇降口に向かっていると、夏緋先輩ともエンカウントした。

 夏緋先輩は数人の友人を連れていて、おそらくみんなで食堂に向かうところだろう。


「ああ。飯を食いに外へ連れて行くところだ」

「……オレも行く」

「お前も?」


 友達はいいんですか? と、聞くよりも早く、夏緋先輩は友達に断りを入れてこちらに来た。

 昨日に続き、連日で青桐兄弟に挟まれるのは心臓に悪い気がしたが、夏緋先輩は会長が暴走したら止めてくれるからいいか。


 会長は夏緋先輩が合流したことにどうやら不満がある様子だ。

 顰めた顔を夏緋先輩に向けている。


「わざわざ友人との約束を断ってくることはないだろう」

「別にいつもの流れだっただけで、約束してたわけじゃない。兄貴がまた暴走しないか見張った方がいいからな」

「ふん。……まあいい。行くぞ」


 ブレザーを肩に掛けた会長が、再び颯爽と歩き出した。

 その後を夏緋先輩と僕でついていく。

 ……どう見ても青桐組の『親分』と『兄貴』と『子分』だな。




 ※




 学校前の大通りから離れ、細い路地裏を進んでいく。

 生徒がよく行く飲食店は全て大通り沿いだから、こういうところに来たのは初めてだ。

 穴場の店でもあるのだろうか。


「会長、ちゃんと『僕達が行ってもいいところ』なんですよね?」

「当たり前だろ? 俺は生徒会長だぞ? 率先して校則を破るわけにはいかないだろ」

「そうですけど……。会長なら地下にある会員制のヤバいところとか知っていても不思議じゃないっていうか」

「なんだ、その『ヤバいところ』っていうのは……」

「うーん……高級クラブとか……そこで札束撒いてたり?」

「俺は昔の成金か!」

「……ふっ」


 会長と僕の会話を大人しく聞いていた夏緋先輩が少し笑った。


「わーい、夏緋先輩にウケた。ハハハッ!! て高笑いしながら札束撒いてる会長を想像したら面白いですよね!」

「…………」


 会長がジロリと睨んだからか、夏緋先輩がデフォルトのクールフェイスに戻ってしまった。

 笑っている夏緋先輩が好きなんだけどなあ。残念。


「あ、そういえば! テレビで見たんですけど、日本人だと手のひらに手裏剣を乗せてシュシュシュッて放っているように見えるアクションって、海外だとお金をばら撒いているアクションに見えるってほんとですか? 夏緋先輩が留学でいたところもそうでした?」

「さあな。金をばら撒くことについて話したことなんてないからな。見たこともないし」

「そうですか。会長、今度ばら撒くときは手裏剣方式でやってみてくださいよ」

「俺がいつもやっていることのように言うな!」


 そんな雑談をしながら進んで行くと、会長はこじんまりとした小料理屋の前で足を止めた。

 木の格子がついた、和風の落ち着いた佇まいだ。

 看板には『きこり』と書いていて、扉には『準備中』の札がかかってある。


「やっぱり叔母さんの店か」

「おばさん?」


 夏緋先輩は知っている店の様だ。

 会長は準備中と書かれた札がついた扉を遠慮なく開けて、堂々と店の中に入って行った。

 僕も入っていいのかためらっていると、夏緋先輩が声をかけてくれた。


「心配するな。親戚の店だ。行くぞ」

「あ、はい」


 夏緋先輩の後ろにくっついて店に入る。

 店の中も綺麗で『大人』な雰囲気がした。

 こんなところに制服を着た高校生は場違いだ。

 居辛くてそわそわしてしまう。


 先に入った会長の方を見ると、誰かと話していた。

 それは小豆色の着物姿の女性で、この店の女将さんのようだ。

 二十代後半……三十歳前後に見える上品そうな和風美人だ。


「あら! 今日は夏希ちゃんだけじゃなくてひいちゃんも来てくれたのね! お友達まで!」

「夏希ちゃん!? ひいちゃん!?」


 誰ですか、それ!

 ここに『ちゃん』呼びされそうな人はいませんが!?

 いや、想像はつくけど……あまりにも似合わなくて信じられない。


「夏希ちゃん……ひいちゃん……とは……痛いあああぁ!?」


 呆然としていると、会長に耳を引っ張られた。

 そのまま奥の方へと連行されてしまう。


「会長、僕の耳がちぎれます!」

「兄貴、片方の耳はオレに残してくれ」

「こわっ!! 兄弟で僕の耳を半分こするなー!」

「ふふふ。元気いっぱいねえ」


 女将さんの和風美人はニコニコしながら僕らを見守っている。

 いや……貴方誰ですか……!

 叔母さんだとは聞きましたけども!


 詳しい説明もないまま奥にあった座敷に上がれと言われ、大人しく従った。

 置かれていたテーブルを挟み、会長がドカッと腰を下ろした。


「痛いなあ、もう……僕の耳、あります? 耳無し央になってません?」

「まだなってないぞ」

「まだっていうな!」


 夏緋先輩に抗議していると、お盆に急須と湯飲みを乗せた和風美人がくすくすと笑いながら現れた。


「賑やかねでいいわね」

「あ、すいません。煩くして……」


 つい騒いでしまって申し訳ない。

 そもそも開店していない店に、部外者の僕まで入ってきて良かったのだろうか。


「ああ、いいのよ。悪い意味で言ったんじゃないの。いつも一人で来る夏希ちゃんが楽しそうで嬉しいの」


 一度聞いていたけれど、やっぱり『夏希ちゃん』という響きの破壊力は恐ろしい。

 ……というか、「いつも一人で来る夏希ちゃん」という、とても悲しくてせつないパワーワードが頭に残った。


「あ、僕は二人の後輩で天地央といいます。会長と夏緋先輩の叔母さん、なんですよね?」

「そうよ。希里子といいます。このお店は、私の名前をもじって『きこり』なの。みんな、お昼ご飯を食べて行くのよね? 用意してくるから待っていてね」

「オレも手伝うよ」


 座っていた夏緋先輩がスッと立ち上がった。

 夏緋先輩が自主的にお手伝いをするなんて意外で、少しびっくりした。


「あら。助かるわ。少し手伝って貰おうかしら」

「あ、僕も……」

「ありがとう。厨房は狭いから、ひいちゃんがいてくれたら十分よ。央君は座っていて頂戴」


 そう言うと、希里子さんと夏緋先輩は厨房へ向かった。

 お手伝いができるひいちゃんはとってもいい子だ。

 それに比べてこの親分は……! ふんぞり返って寛いている。

 僕もお言葉に甘えてのんびりさせて貰っているけれどさ。


「あ、会長。僕、財布が寂しいんですけど……」


 食堂で食券を買える分のお金しかないから、こんな上品なお店の支払いができるか心配だ。


「あ? ここで出されるのは残り物だ。支払いなんていらん」

「え、でも……」

「逆に支払いした方があの人も気を使う。だから気にするな」

「……そうですか? じゃあ……ごちそうになります」


 このお店の佇まいから察するに、残り物でも上品で美味しいに決まっている。

 そんな料理を休憩時間に食べられるなんて豪勢だ。


「会長はいつもここに来ているんですか?」

「ああ。ここは静かで寛げる。おまけに学校から近い。ここ以上に良いところはない」

「もう! 夏希ちゃんったら、『叔母さんに会いたいから』くらい言えるようになって欲しいわね」


 早速料理を運んできてくれた希里子さんがしみじみと呟いている。


「あと、ひいちゃんみたいにスマートにお手伝いしてくれたりね。夏希ちゃん、そういうところは大事よ?」


 希里子さんに指摘された会長は難しい顔をしている。

 拗ねているわけではないようだが、色々思うところがあるのだろうか。


「気づかいに欠ける夏希ちゃん……ってなんでもないです!」


 寝転がっていた会長が、僕をロックオンしたまま起き上がってきたのですぐに謝った。


「お前はどうしてそう一言多いんだ」


 希里子さんに続いて料理を持ってきてくれた夏緋先輩が僕を見て呆れている。

 イケメンが料理を運んでくれる小料理屋さん……すごく繁盛しそうだ。

 和装をしたり、エプロンをつけてくれたらもっといいのだが、今の夏緋先輩はパーカーを脱いで服の袖を捲っているだけだ。

 でも、いつもパーカー姿ばかり見ていたから、シャツ姿も新鮮だ。

 そんなことを思いつつ、次々とテーブルに並べられていくのを呆然と見守っていたが、これは……。


「残っていた料理って聞いたけど、そんなレベルじゃ……」

「央君が来てくれたから、ちょっと張り切っちゃった」


 鰹やイカの刺身、鮪の角煮などの魚類に、ステーキや牛すじ煮込み、焼き鳥などの肉類、その上蒸し鶏のサラダやトマトなどの野菜もあればおにぎりや炊き込みご飯などご飯物もある。

 更に絶対残り物じゃない天ぷらなどの揚げ物もあって、テーブルの上が料理で埋め尽くされた。


「豪華すぎる……美味しそう! 本当に頂いていいんですか?」

「もちろん! 足りなかったら遠慮なく言って頂戴ね」

「ありがとうございます! 頂きます!」

「じゃあ、ごゆっくり。私はお店の開店準備をしてくるから、席を外すわね」


 そう言い残し、希里子さんは笑顔で去っていた。


「さあ、食うか!」

「叔母さんの料理、久しぶりだな」

「あ、ちゃんと『頂きます』してくださいよ! しないと兄ちゃんに嫌われますよ」


 ガツガツと食べはじめようとした会長に注意すると、兄の名前を出したからか大人しく「頂きます」を言っていた。

 会長がやったからか、いつもやっているからか分からないが、夏緋先輩もやっていた。

 よくできました!


「ふふっ」

「?」


 笑い声が聞こえてそちらを見ると、何かを取りに来たのか近くにいた希里子さんが口を押えて笑っていた。


「夏緋ちゃんとひいちゃんに、央君みたいな後輩がいて嬉しいわ」

「ありがとうございます?」


 よく分からないが、喜んでくれたようなのでよかった。


 会長と夏緋先輩食べ始めたので、僕も遠慮せずご馳走になることにした。

 とりあえず、目の前にあったおにぎりに手を伸ばした。


「美味い……」


 鰹節を混ぜて海苔を巻いただけのシンプルなものだと思ったのだが、ほのかにごま油の香りがして予想以上に美味しくて吃驚した。

 おにぎりってこんなに美味しくなるの!?


「だろ?」


 身内を褒められたから、会長は得意げに微笑んだ。


「会長、いつもこんないいところでご飯を食べているなんてずるいですよ」

「気に入ったなら……たまに付き合え」

「え? でも、邪魔になりません?」

「邪魔なら最初から連れて来ない」

「そうですか」


 僕って案外会長に気に入られているのだろうか。

 迷惑なこともあるけど、ちょっと嬉しいな。


「じゃあ、来るときは三人で来ましょうね!」


 笑顔で会長に言うと、何故か眉間に皺を寄せて夏緋先輩を見た。


「……お前はいつも一緒に食ってる連れがいるだろう」

「ここに来るときは断ればいいだけだ。当然、オレも一緒に来る。兄貴こそたまには食堂に行ってもいいんだぞ? その時はオレがここに天地を連れて来る」


 涼しい顔をする夏緋先輩を会長が睨んでいる。

 こんな目を向けられて平気そうな夏緋先輩がすごい。

 いつもは大体会長にはビビっているのに、こうして立ち向かっている時もあるのは不思議だ。

 それはともかく、今は食事中だ。


「仲良くしてくださいよー。ここでも食堂でも、三人一緒で行きましょうよ」


 料理をもぐもぐ食べながら注意すると、二人とも僕を呆れた感じで見ていた。

 え? …………何?


「早く食べないと、僕が全部食べちゃいますよ?」


 そう伝えると、二人はため息をついてから食べ始めた。

 なんだかそのため息は、僕に対して出たように感じたのですが、気のせいですか?


 それからも「美味い! 美味い!」と連呼しながら箸を進め、気が付けばテーブルの上に乗ったお皿は空になっていた。

 夢中で食べてしまった……お腹がいっぱいだ。


「あ、食器下げるのは僕がやりますね」

「……いい。お前達は座っていろ」


 今度は僕がやる番だとお盆に食器を乗せようとしたのだが、何故か会長に止められてしまった。


「俺が持って行く」

「会長が!?」

「兄貴が!?」


 びっくりした僕と夏緋先輩の声が重なった。

 それが不満だったのか怖い顔をしていた会長だったが、黙々と片付けると食器を持って厨房へ行ってしまった。


「会長が雑用をしている……! このびっくりする状況を激写していいですか?」

「これだけ貴重だと、動画でもいいかもな……」

「撮ってるのバレたら、夏緋先輩庇ってくれます?」

「どうしてオレが? お前が勝手にやったことだろう?」

「裏切りがひどい!」


 一人では会長と戦えないので、激写は諦めてスマホを片付けた。

 撮れれば激レア映像なんだけどなあ。

 大人しく座っていると、希里子さんがやって来た。


「ごはん食べ終わったようだから、お茶を入れ直したわ」

「ありがとうございます! ごはん、どれも美味しかったです。ご馳走様でした」

「お粗末様です。嬉しいわ、綺麗に食べてくれて。それにしても、夏希ちゃんがみんなの分も食器を下げて来てびっくりしちゃった」


 会長の行動に驚いたのは僕達だけじゃなかったようだ。

 普段から会長を見ている希里子さんから見ても意外なようだ。


「ひいちゃんなら分かると思うけど、姉は『人は使うモノ』で友達なんてものは必要ない! って感じの人なのよ。夏希ちゃんは姉の期待に応える子に育ったけど……つい口を挟みたくなっちゃう時があるのよねえ」


 ……なんか分かる気がする。

 会長の兄への想いを聞いたときに、人との付き合い方に悩んでいるようなことを言っていたけれど、そういう風に育ってきたことも要因かもしれない。


「ひいちゃんはその点、うまくやってるわね」

「え?」


 希里子さんに言われ、夏緋先輩がびっくりしている。


「ひいちゃんは人づきあいが上手でしょう? だから留学することになっても、あまり心配しなかったわ。それじゃあ、私は厨房に戻るわね」


 希里子さんは素敵な笑顔を見せた後、厨房に戻って行った。


「夏緋先輩?」


 静かだなと思ったら、何か考え込んでいる様子だった。


「いや、オレが褒められて、兄貴心配されているなんて滅多にないから……変な感じがしてな」

「確かに、夏緋先輩は気づかいや思いやりで行動することができますよね。だから友達も多いんじゃないですか?」


 夏緋先輩は何も言わないが、照れているのか顔をそらした。

 照れ顔見たい! と思って覗き込んだら、凍りそうなほど睨まれた。

 すみません……もうしません!


「兄貴は褒められて、オレはもっとしっかりしろと言われる、逆はよくあるが……」

「それ、僕もです! 分かる~~」


 夏緋先輩がぽつりと零した言葉に激しく共感した。

 兄をベタ褒めされて、「央君も真君みたいにがんばらないと!」って言われ続けた人生を歩んできた。

 兄ばかり褒められて拗ねたこともあったけど、実際に兄は凄いし、兄を褒められると僕も嬉しいから今ではまったく気にならない。

 むしろ「そうなんですよ! うちのにいちゃんすごいんですよ!」とかぶせていく。

 いや、でも……僕はともかく……。


「夏緋先輩が心配されるようなことあるんです? 会長に負けないくらいかっこいいし、狂暴で恐ろしいですけど」

「お前な……。褒めているようで褒めてないだろ」

「僕は事実だけを言ってます!」


 イケメンなのも狂暴なのも間違いない。

 そう言えば、会長が成績も優秀なことは設定で知っているけれど、夏緋先輩の学業面は分からない。


「もしかして……夏緋先輩って赤点ばかりとか?」

「お前、耳以外もなくしたいのか?」

「ひっ!」


 夏緋先輩がとうとう立ち上がったことで危機感を覚えた僕は、すぐに対策をした。


「やめてください! 夏緋先輩のパーカーを醤油漬けにしますよ!」


 僕は夏緋先輩が床に畳んで置いていたパーカーを人質に取り、テーブルに備え付けてある醤油さしを指さした。

 本当にやったらお店を汚して迷惑をかけるし、醤油で遊ぶなんて駄目だから、もちろん実行するつもりはない。


「お前! 絶対やめろよ!」


 夏緋先輩は汚れるのが嫌なのか、思った以上に焦っている。

 こんなところでも潔癖が出たのだろうか。


「そんなに慌てるなんて……まさか、このパーカーが夏緋先輩の本体とか? 醤油をかけてみたら分かりますかね!」

「汚すなって言ってんだよ!」


 夏緋先輩が本体を取り返しに来たので、僕はそれを抱えこんだ。


「返して欲しかったら、暴力は封印してください!」

「まだなんもしてないだろうが!」

「まだって言ってるのが怖いんですー!」

「お前ら、俺が片付けやってる間にじゃれているとはいい度胸だ……」


 片づけを戻って来た夏希ちゃんが本気で怒っていると察知した弟組は、何ごともなかったかのように大人しく座った。


 やっぱり、怒るお兄ちゃんって怖いよね。

 弟あるあるだ。


コミカライズに続き、小説の方も重版して頂けました!

書店の方はでは難しいと思いますが、通販ではお買い求め頂けるようになりましたのでご報告です!

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