表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/101

『赤の扉(会長を選択)』

※本日更新分3ページ目(こちらは分岐先なので1ページ目からお読みください)

 ……会長のいる生徒会室に来てしまった。

 夏緋先輩と別々に誘ってくるなんて、何の用事か分からず恐ろしい。

 僕はノックをする前に、そっと静かに扉を開き、中を覗いた。


 すると、窓際に立って外を見ている会長の姿が見えた。

 いつものふんぞり返って偉そうに座っている時とは違い、真剣な顔で外を見ていた。

 悩んでいる、というか……ちょっと不安げ?

 普段あまり見ない表情がかっこよく見えた。

 こういう姿はとても絵になる。

 いつまでも眺めていたいくらいだが、なんだか放っておいたら可哀想な気がしたので、小声で呼びかけてみた。


「かいちょー……」

「央!」


 もの凄い速さでこちらを見たのでびっくりした。怖っ!


「……来たか。当然だな」


 さっきまでの憂いが入った表情はどこかに飛んでいったようだ。

 いつもの見慣れた会長がそこにいた。

 いや、いつもより五割増しくらいの力強さと輝きがある。


「早く中に入れ。さっさと完全に中に入れ!」


 扉の隙間から覗くスタイルのままでいたら叱られた。

 どうしてそんなに急かすのだ。

 そう思いながらも大人しく従い、中に入って扉を閉めると、会長は満足そうに頷いた。


「これで確定だな」

「何がですか? というか、本日は僕に何用でございますか」

「お前、今日は誕生日だろう? おめでとう」

「! ありがとうございます……」


 会長に祝いの言葉を貰えるなんて驚きだ。

 そもそも、僕の誕生日を知っていたことにびっくりだ。


「喜べ。俺が祝ってやろう!」


 背景に「ドーン!」と書いていそうな感じで言われたが、嫌な予感しかしない。

 どこかに連れ回されて疲れるか、無理難題を強要される未来しか見えない。


「お気持ちだけで十分です。では……」

「待て!」


 扉を開けて出て行こうとしたら、詰め寄って来た会長に扉を抑えられた。

 逃げられない! クソっ! と思ったが、今の状態に気づいてハッとした。

 こ、こでは……会長の壁ドンだー!

 ゲームでも会長の壁ドンシーンはなかった。なんて貴重な光景!

 ……なんてわくわくしていたら――。


「まさか、夏緋のところに行こうとしているんじゃないだろうな? ……行かせるかよ」


 会長に更に詰め寄られてしまった。

 近い! 顔がイイ! 怖い!

 色んなドキドキが混じってパニックだ。


「行きません……会長に祝って貰えるなんてウレシイナ―……」


 僕の絞り出した言葉を聞いて、ようやく会長は離れた。


「そうだろう! 照れて俺に遠慮する必要はないからな」


 バシッと僕の肩を叩くと、会長はニカッと笑った。

 肩、痛いし! 照れて遠慮したんじゃないし!

 まったく……会長とは一緒にいたら、心臓がいくつあっても足りない。


「祝ってくれるって……。ここでケーキでも食べるんですか?」

「帰ったら真がお前のために、飯やケーキを用意しているんじゃないか? だったら食い物はやめた方がいいだろう」

「さすが! 兄への気配りは完璧ですね!」


 兄に関することの、会長の洞察力は凄すぎて感心してしまう。

 もう少しその気配りを僕にも回して欲しいものだ。


「妬いてるのか?」

「なっ……! 違います!」


 少し不機嫌になったのがバレたのか、訳の分からないことを言われた。

 決してヤキモチではない! 違うから!

 だからニヤニヤしてこっちを見るな!


「真のことに関するじゃなくて、『お前に関すること』だ。お前が真に叱られたら可哀想だろ?」

「……ふーん?」


 まあ、僕にも気を配っているということなら、ニヤニヤしているのは許してあげよう。

 そんなことを考えていると、会長が背後のロッカーから何かを取り出して持ってきた。


「これをお前に贈ろう」

「な、なんですか……」


 会長が差し出してきたのは、小さな紙袋だった。

 紙袋だが……どう見てもどこかのブランドのもの!

 高級そうなのですが!


 受け取るのが怖かったが、会長からの圧も怖い。

 仕方なく、ただならぬ気配の紙袋を受け取った。

 あ、もしかして、袋はブランドのものだけど、中はお菓子……ではなかった。

 しっかりとした箱の中から出てきたのは――。


「腕時計! 絶対お高い! 怖っ!」


 僕が使わないけれど持っている、三千円くらいの腕時計とは重みが全然違う!

 ベルトが皮なのは分かるが、何の皮なのか分からない!

 とにかくお値段が高いということしか分からない!


「金のことを言うな。下品な奴だな。大した額じゃない。何十万もしねえよ」

「当たり前だ!」


 そんな額の物を貰ったら卒倒してしまう。

 友達に贈る誕生日プレゼントとしておかしい……うん?

 僕と会長って友達、になるのだろうか。

 会長はどんなつもりでこれをくれたのだろう。


「プレゼントだって言ってんだ。素直に受け取れ」


 本当に貰ってもいいのだろうか。

 プレゼントを受け取らないのも失礼だし、確かにかっこいい腕時計だけれど……。

 でも、僕に似合うかは別問題だ。

 ベルトの皮なんてワインレッドで大人な感じだ。


「色が派手ですね。会長みたい」

「!」


 そう呟くと、会長は一瞬驚いたあと、ニヤリと笑った。


「分かってるじゃないか。お前が俺のもんだって印だ」

「?」


 何を言われたのか分からなかった。

 しばらく考えて出て来た僕の解釈は……。


「え? この腕時計って……首輪的な発想? 怖いんですけど!」

「そこまで言ってないだろ! ぐだぐだ言ってないで貸せ!」


 会長はそう言って腕時計を奪うと、強引に腕につけた。


「おおー……!」


 自分の手首を見るとテンションが上がった。

 付けてみると意外に高級品! という感じはしなくて、思ったよりも馴染んだ。

 いいじゃん、これ!


 でも、会長のイメージカラーのものを身に着けておくなんて、ちょっと恥ずかしい……いや、かなり恥ずかしくなってきたぞ!

 学園だと目立つし、休みの日だけにしよう。


 まあ、気が向いたら学園にもしてこよう。

 見ていると段々嬉しくなってきて、ニヤニヤしてしまった。


「会長」

「うん?」

「ありがとうございます」


 笑顔でお礼を言うと、会長も嬉しそうに笑った。


「最初からそうやって素直に喜べ」


 ガシガシと頭を撫でられる。力が強い! 首折れるかなー。


「あ、そうだ! 会長。今夜、うちに泊まっていきます?」

「!」


 僕の質問を聞いた瞬間、会長が固まった。

 ……あ! なんだか「夜のお誘い」のような、変な聞き方をしてしまった!


「あ、いや、兄ちゃんが誕生日のお祝いでごちそうを作るから、誰か呼べって言うから!」


 恥ずかしくなって必死に取り繕っていると、会長の硬直が解けた。


「呼んだのは俺だけか?」

「そうですけど……」


 会長がまたニヤリと笑い、頷いた。


「行ってやる」


 断られなかったのは嬉しいけど、偉そうなのが腹立つな。


「あ、そうだ。注意事項があります! 兄ちゃんの部屋に入っちゃダメですからね!」

「安心しろ。お前の部屋の中で鍵を閉めておくつもりだ」

「はい? 僕の部屋を占拠するつもりですか?」

「部屋とお前を占拠するんだよ」

「どういう意味……あ、言わないでください……」


 嫌な予感がして質問を止めると、会長がニヤリと笑った。


 会長を家に呼んだのは、誤った選択だったかもしれない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ