選択の朝
本来青桐兄弟はどちらかのルートしか選択できませんが、両方攻略が進んでいる状態のIFストーリーです。
どちらからも好感度が高い状態だと思って読み進めてくださいませ!
『選択の朝』 → 『青の扉(夏緋を選択)』『赤の扉(会長を選択)』の全三話です。
(本日はコミカライズを担当してくださっている加奈先生のお誕生日です!おめでとうございます!)
軽快に流れる電子音に起こされ、仕方なく目を開けた。
眠い……。
二度寝の誘惑と戦いつつ、スマホの目覚ましアラームを止める。
ホーム画面に戻ると、メッセージの受信通知があった。
寝ぼけたまま、いくつかあるメッセージを順番に開封していく。
「ふあぁ…………は?」
同じ苗字の人物二人からのメッセージを読んで、あくびが止まった。
一気に目が覚めてしまった。
それは「コピペしたのかな?」と思うほど、ほぼ同じ内容だった。
会長>>
『今日の放課後、生徒会室に来い。夏緋に呼ばれても絶対こっちに来いよ。来なかったら分かっているだろうな?』
夏緋先輩>>
『今日の放課後、昇降口のところで待っていろ。兄貴に呼ばれても気にするな。来なかったらどうなるか……分かるな?』
「どういうことだよ……」
僕は何を試されているのか。
ルートの分岐点っぽい選択肢を出してこないで欲しい。
ゲームだとここでセーブして、両方を見ることができるが、現実だとそうはいかない。
「二人で同じ場所に呼んでくれよ!」
わざわざ別で呼び出してくるなんて、ケンカでもしているのか?
生徒会室で集合! でいいいじゃないか。
「とにかくご飯を食べよう」
寝起きにストレスを与えられたので、兄の朝食で癒されたい。
部屋着のまま一階のキッチンへ向かった。
「あ。ホットサンドだ」
キッチンに入った途端に「いい匂いがする!」と思ったら、登場頻度の低い僕の好物がテーブルにあった。
一気にテンションが上がった。
「おはよう。央、お誕生日おめでとう!」
「! おおっ……」
兄に言われて、手に持っていたスマホの日付を見ると、確かに今日は誕生日だった。
そんな僕を見て兄が笑う。
「忘れてただろう?」
「すっかり!」
なるほど。ホットサンドは誕生日のお祝いも兼ねているのか。
「夜はごちそうにしような。何がいい?」
「肉」
「素材じゃなくて、料理名で言って欲しいんだけどなあ。あ、誰か呼んだらどうだ? 呼ばないなら、春樹と雛に声を掛けるけど……。賑やかな方がいいだろう?」
「うーん」
そう言われて頭に浮かんだのは、寝起きにストレス度の高い二択を迫って来た二人だ。
会いに行った方を誘おうかな。
「じゃあ……呼ぶ」
「分かった。あ、金曜だし、泊りでもいいからね。その方がゆっくりできるだろう?」
「おー……」
確かにその通りなのだが、赤か青か選んだ上、その相手をお泊り込みで家に誘うとなると、二択の重要度が増したというか……。
せっかくのホットサンドも、考えながら食べるとあまり楽しめなかった。
貴重なホットサンドなのに……!
登校中はもちろん、授業中も悩んだ。
『赤を取るのか! 青を取るのか! 失敗したら死ぬぞ!』
爆弾処理を迫られているようで、生きた心地がしなかった。
授業が終わるとカウントが減る恐怖――。
そして、とうとう放課後になってしまった。
「……どっちに行こうかな」
次話は『青の扉(夏緋を選択)』です。
会長推しの方、先に会長の方を読みたい方は、一覧に戻って『赤の扉(会長を選択)』を読んでください。




