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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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お泊り

本日、ComicWalkerとニコニコ漫画にてコミカライズ三話が更新されています。

楓がとっても可愛いので、ぜひご覧くださいませ!

ということで、楓ルートアフターになる楓小話です。

 今日は金曜日で、楓が我が家に泊まりに来た。


「楓。いらっしゃい」

「お、お邪魔します」

「もじもじしちゃって、またトイレか?」


 リビングのソファで寛いでいた兄に笑顔で迎え入れられ、照れている楓をからかう。


「違うって! その『トイレ?』って聞くの気に入ってるの? 毎回言ってない?」

「バレたか。気に入ってるんだ。お前がもじもじする度に言うからな」

「やめてよ」

「大体いつになったら兄ちゃんに慣れるんだよ」


 ほぼ同じ顔の僕と付き合っているのに、いつまでたっても慣れないのはおかしい。

 まだ兄ちゃんを意識しているのか?

 そんなはずはないと分かっているが……面白くない。


「……アキラ。もしかして……やきもち?」

「は? ちがっ……!」

「えー? でも、今すごーく不機嫌そうな顔してたよ? こんな顔」


 眉間に皺を寄せ、僕の真似を見せてくる。


「僕の表情のデフォルトは不機嫌フェイスなんだよ」

「そんなの嘘じゃん」

「……ふふ」

「! ほ、ほら。とりあえず、荷物置いて座れよ」


 言い合う僕らを微笑ましそうに見ている兄の視線に気づき、楓にひとまずくつろぐように促した。


 なんだろう……『母親に初めて付き合った人を紹介してる感』がする。

 居心地が悪いというか、気恥ずかしい。


「ボクが好きなのはアキラだよ」

「!」


 楓は荷物を置くために動く途中、こそっと僕の耳元に囁いていった。

 少女漫画か!

 楓はしっかりと赤くなってしまった僕を見て、満足そうにニコニコしている。

 お前、覚えてろよ!


「あ、真先輩。キッチン、お借りしてもいいですか? 今日はボクがご飯を作ります! 真先輩も休んでいてくださいね」

「楓……」


 材料も買ってきたようで、食材で膨らんだエコバッグを見せる楓に兄が感動している。


「央、楓を大事にするんだよ」

「はいはい」

「はいは一回」

「はーい」


 兄はすっかり息子に可愛い嫁が来た姑の気持ちになっているようだ。


「ほら、央も一緒にやる!」

「へーい」


 兄に促され、楓の隣に行ったが……。


「大丈夫。アキラは邪魔だから座ってて」

「言い方」


 好きだよ、と囁いた相手に平然と「邪魔」と言い放つこの小悪魔。

 楓のそういうオブラートに包まないスタイルも僕は好きですよ。




 ※




 楓が作った美味いご飯を食べ、一息ついた。

 おいしすぎていっぱい食べてしまったので、幸せ太りし始めた僕のメタボ問題も深刻化しそうだ。


 しばらく三人で談笑していたが、順番に風呂に入ることにした。

 今は楓が入っていて、僕と兄はリビングでまったりテレビを見ている。


「央」


 テレビも飽きてきて、スマホをいじっていると兄が改まって声をかけてきた。


「何?」

「今日、オレは春樹のところに泊まりに行こうか迷ったんだけど……」

「!」


 彼氏のお部屋にお泊り!?

 思わず立ち上がりそうになった。


「行けばいいじゃん!!!!」


 雛や櫻井家の人たちにバレないように、スリルを味わいながら励めばいいよ!


「そんなに熱くならなくても……。たしかにオレは邪魔だと思うけれどね? 保護者として家を空けるわけにはいかないし、二人にはまだ早いかなって……」

「?」


 兄ちゃんが邪魔?

 そんなことを思うはずがない……って、ああ。

 僕が「行けばいい」と言ったのは、楓と二人きりになりたいから、兄が邪魔だと思っての発言だと受け取ったのか。

 二人——僕と楓にはまだ早いって……。


「保健体育の話ですか」

「央。オレは真面目に話してるんだけど」

「ゴメンナサイ」


 別に茶化したつもりはなかったのだが、兄のお叱りモードを察知して謝った。

 ……でもなあ。

 要はまだヤるな、ってことだと思うが……素直に「はい、わかりました!」とは言えない。


「早いって言っても、僕と兄ちゃんは二つしか違わないじゃん。兄ちゃんはガンガンにヤッてるのに……。僕らは二年待てってこと?」


 別にするつもりはなかったけど、するなと言われるとムッとしてしまう。


「なっ……! そんなっ……には、してない……だろ……」


 僕の言葉に、兄の顔が赤くなった。

 やはり兄はこの手の話題の攻撃には弱い。


「そんなにはしていない」ということは、「やってることはやっている」ということだ。

 それに僕が観測しているだけでも、中々の頻度だと思いますが?


「へー? ……あ、楓」


 兄に生ぬるい視線を送っていたのだが、少し開いたリビングの扉の向こうに、風呂から出てきた楓の姿を見つけた。

 驚いた兄が振り向き、楓を見た。


「あ……えっと、ボク、何も聞いてないです!」


 そう言いながらリビングに入ってきた楓の顔は赤い。

 その顔はどう見ても聞いていただろう。

 というか、「聞いていない」と言えるのは「聞いていたから」だ。


「…………っ」


 すべてを悟った兄は何も言わず自室へと逃げて行った。


「えっとー……」


 楓が困惑しているが、何度かあったことだし大丈夫です。


 それにしても、以前の楓なら、こんなことを聞いてしまったら号泣していただろう。

 でも、今は「すごいこと聞いちゃった」という感じでうろたえているだけのように見えるので、本当に兄への未練はないようだ。

 思わず僕の隣に腰を下ろした楓の頭をなでなでしてしまった。

 風呂上がりでいつもよりも更に触り心地がいいな。


「ん?」

「なんでもないよ」




 ※




 僕も風呂から上がると、楓を連れて自分の部屋に戻った。

 前回楓が泊まった時はリビングに布団を敷いて、兄も入れて川の字になって寝たが、今回はここで寝る。


「やっとここで寝ることができる!」


 楓は嬉しそうに僕のベッドにダイブした。

 そういえば、楓と関係がこじれそうになった時に、ここで寝たかったとか雛が使ったことがあるのが気に入らないとか言っていたな。

 そんなことを思い出していると、楓がベッドの上でゴロゴロと転がり始めた。


「お前、何やってんの。シーツがしわくちゃになるだろ」

「んー? マーキング?」


 においをつけて縄張りを主張するのか?

 僕の縄張りなのですが……。


「ほら、アキラも来て!」


 寝転がっている楓が、ここに来いと自分の真横を叩く。


「ゲームするんじゃなかったのか?」

「するけど、ソシャゲだし寝転がってやろうよ」

「そうだな」


 スマホを持って楓の隣に寝転がる。

 二人で寝ると狭いが、この距離感が心地よい。

 なんだかいいにおいもする。

 シャンプーとかボディソープのにおいかな?

 今日は同じものを使っているはずなのに、楓から漂うにおいはやたらいいにおいだと感じる。


「アキラと同じにおいなのが嬉しいなあ」

「!」


 楓もにおいについて気になったようだ。

 同じようなことを考えていたのかと思うと、また気恥ずかしくなった。

 というか、うつぶせになって僕の枕を抱え込み、足をバタバタしているのが可愛いな。

 僕はジャージにTシャツだが、楓はちゃんとパジャマを着ている。

 水色の柄のないシンプルなパジャマだけれど、もこっとした生地が可愛い。

 短パンで生足が見えているのもポイントが高いぞ。


「ねえ、アキラー」

「ん?」

「さっき真先輩に反論してたのは、その……す、するつもりだったってこと?」


 さっきの話? するつもり?

 一瞬何のことかと迷ったが、すぐに思い至った。


「え、いや。まー……」


 楓は僕と兄のやり取りを、最初の方から聞いていたようだ。

 だから、するつもりだったのに止められて、腹が立ったから言い返したように聞こえたのかもしれない。

 下心がまったくなかったわけではないが、兄もいるし……。

 その時の空気に任せる、という感じでいた。


「いずれはそういうこともあるかなあって……」

「ボクはいつでもいいけど」

「!」


 これは……誘われている?

 楓は余裕のある表情をしているが、耳が赤い。

 平気なふりをしているが、かなり勇気を振り絞っているのが分かる。

 ……どうしよう、可愛い……こいつ、可愛いが過ぎる!

 今日はドキドキさせられてばかりいるが……負けていられないな。


「かえ……秋人」

「え? …………っ!」


 うつぶせでいた楓を転がして仰向けにする。

 そして、楓の顔の横に手をつき、覆いかぶさった。


「アキラ……」


 僕を見上げる楓のきれいな目を見ていると、前回押し倒した時のことを思い出した。

 あの時は楓に誘導されてそうなったが、今は違う。

 僕らの関係も変わり、友人から恋人になった。


 どういうことをすればいいか、薄い本で得た知識がある。

 こういうことになったとき、腐った気持ちが沸き立ってにやにやしないか心配だったが大丈夫だった。


 そしてキドキが最高潮になった瞬間…………軽快な電子音が部屋に響いた。


「…………」

「…………」


 僕のスマホが鳴っている。最悪だ。

 無視をしようかと思ったが、電話がかかってきているようで、着信音が鳴り続けている。

 誰だ! タイミングが最悪だぞって、春兄いいいい!

 なんだよ、もう!


「でたら?」


 苦笑いの楓に促され、通話ボタンを押した。

 すると春兄のゆるい声が聞こえてきた。


『あ~、央? お前はこの時間だとゲームでもしていただろ? 真に電話しても出なかったんだけどさあ。あいつ、珍しくもう寝てる?』


 確かにいつもだとゲームをしている時間だけが……。

 まったく、このカップルは……毎日会っているのに、まだ話すことがあるのか!

 寝る前に声が聞きたい、か?

 最高だ! 尊い!


 だが! だがしかし! 今はちょっと泣きたい!


 というか、兄ちゃんはまだ照れているのか!?

 どうして春兄の電話をスルーするのだ!

 兄への抗議も込め、やけくそ気味に叫んだ。


「明日、兄ちゃんが春兄のところにお泊りに行きたいらしいよ!!!!」


 それだけ伝えると、すぐに切ってやった。

 すると僕の叫びが聞こえていたのか、隣の部屋が騒がしくなった。


 兄ちゃん、明日は絶対櫻井家にお泊りしてください。


 隣の部屋を睨んでいると、楓が笑い出した。


「あーあ、今回はお預けかなあ? ……でも、明日は二人きりだね?」


 今日は健全に遊ぼう。…………多分。僕が我慢できたら。


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