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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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55/101

集合写真 ※追記 21:57

本日、コミカライズの2話が更新されております。

兄カップルが最高です。是非ご覧くださいませ!


★追記★ 21:57

コミカライズを担当してくださっている加奈先生がこの小話のイラストを描いてくださいました!

とても素敵なイラストだったので読者様方にも見て頂きたくて、掲載の許可を頂いてきました。

あとがきに載せさせていただいております!


 鬱&サイコな文章から何故か僕の個人情報引き出そうとする内容にシフトチェンジした柊メルマガによって、僕は用務員室に呼び出されていた。

 また既読スルーしてやろうかなと思ったが、メルマガの内容を見て無視するわけにはいかなくなった。


『俺だけ央の家に行っていないのは不公平だと思うから、行こうと思う。央だけいる日時を教えて』


『行こうと思う』って、勝手に決意するな。

 お伺いではなく、宣言というところがやばい。

 ちゃんと止めないと適当な時に来るだろうし、ついでに柊メルマガの解約手続きをしてしまおうと用務員に赴いたわけだが……。


「狭い」


 ソファーの中心に座る僕の隣には柊と楓がいる。

 そして、向かいのソファー中心には兄がいて、隣には春兄と会長だ。

 二つのソファーに男が六人、ギッチギチになって座っている。

 僕は立っていたいよ、優雅にスマホいじりながら立っている夏緋先輩みたいにな!


 現在、用務員室にゲームのキャラクターが集結している。

 こうなった経緯だが、まずは用務員室に向かう僕に気づき、楓が引っ付いてきた。

 そして、柊と会うのを嫌がる楓と用務員室に入って行く僕を目撃した兄カップルが、心配して様子を見に来てくれた。


 この時点でも充分カオスだったのに、会長が放送で僕を呼び始めたのだ。

 抜け出せる状況ではなく、スルーしていたら、女子から僕がここにいると情報を得た会長が乗り込んできた。

 そして兄を挟んで春兄とやいやい言い始めたので、回収係として夏緋先輩を呼び出し――今に至るというわけだ。


「『生徒会長』ってよほど暇なんだな。さっさと帰って昼寝でもしていろ」

「お前が一人で帰って、一人で寝ろ。なんなら今すぐ廊下で眠らせてやろうか? ああ?」


 会長、その握りしめている拳で人を眠らせるのはやめてください。

 普通に事件です。

 春兄も応戦態勢に入らないでくれ!

 兄に「止めて!」という願いを込めて視線を送ると、にこりと素敵な微笑みを返された。

 違う、そうじゃない。

 今は微笑みが欲しいんじゃない! と思ったが……兄ちゃんめ、僕の視線の意味が分かっているのにスルーしたな!?

 この微笑みは「もう、好きにさせよう」という方針の現れだな?

 最初は二人を諌めていた兄だったが、もう諦めたようだ。

「コーヒー飲みたいな」と思っていそうな顔をしているが、もう一頑張りしてくれませんか!


 この状況にため息をついていると、視界の端でフェードアウトして行く者が見えた。


「夏緋先輩、帰ったら明日から僕が夏緋先輩のことをストーキングしますからね。コバンザメのように張り付きますから」

「ちっ」

「あと音楽聴いてないで、自分の兄の動向を見張っていてくださいよ」

「ここの会話が耳に入ると耳が腐る」

「腐るかー!」


 僕は違う意味ですでに全身が腐っているけどな!

 ったく、すぐに逃げようとするんだから。

 会長の回収係として、ちゃんと待機して頂かないと困ります。


「央と真がここにいるなんて嬉しいよ。夢のようだ」


 対岸で春夏戦争が起きそうなのに、柊はお花が飛んでいるような空気を放って呟いた。

 お前は僕と兄以外を自分の世界から消したのか?


「でもどうしてだろう、生ゴミの袋を四枚持って来たくなるな……」


 もしかして、『生ゴミ』って僕と兄と自分以外の人のことですか?

 怖い、その発想シンプルに怖い。


「ねえ、アキラ。ここ、すっごくうるさい。早く帰ろうよ~」


 会長と春兄の殺気や、柊のサイコホラー発言が飛び交うこの空間を「うるさい」の一言で済ませられる楓もすごいな。


 でも、確かにこの状況では、柊メルマガの解約手続きはできないだろう。

 さっさと帰ってしまいたいが、その前にどうしてもやりたいことがある。


 それは……集合写真が撮りたーーい!!!!


 だって、実写版主人公と攻略キャラ大集合だぞ!?

 こんなカオスな状況で「仲良く集合写真を撮ろう!」なんて不可能かもしれないが……。

 僕は欲望に忠実に生きる!


「はい!!!!」


 全員を黙らせる大声で突然挙手をした僕に、みんな「?」となっている。


「はい、央」


 シーンと静まり、停止した用務員室を動かしてくれたのは兄だった。

 教師のように、僕を指名してくれたのだ。

 さすが、兄ちゃん! 空気が読める!


「集合写真撮って、解散しましょう!」


 再びみんなの頭に「?」が出ているが、気にしない。

 秩序も何もない連中を動かせるのは勢いだけだ!


「楓と柊さん、起立! はい、あっちに移動! 夏緋先輩もそこに! ほらほら、キビキビ動いて早く終わらせましょう!」


 僕の勢いに圧され、イケメン達が動く。

 春兄、兄、会長が座るソファの後ろに、柊、楓、夏緋先輩に立って貰う。

 はあ……素晴らしい光景だ!


「撮りますよ!」

「央も入らないと――」


 兄が僕を呼んだが、手の平を向けて静止した。


「僕は結構です」


 せっかくゲームのキャラクターが揃っているのに、僕が入ったら台無しだ。

 それに僕は今スマホの写真設定をしていて忙しいです。

 絶対に最高の一枚に仕上げなければならない。

 余計な光や影、ブレは絶対に許さない。


「タイマーにして……」

「僕は結構です!!」


 強い意志を宿したこの目を見ろ!

 絶対にここから動かん!


「青桐、もっと真から離れろ。真、こっちに移動しろ」

「真がそっちに行くと俺とお前が並ぶだろう! どうしてお前とくっつかねばならんのだ!」

「まったく……」


 また春兄と会長がうるさくなってきたので、さっさと撮ってしまおう。


「撮りますね! はい、チーズ!」


 カシャカシャカシャカシャと高速で鳴り続けるシャッター音が響いた。


「……央、撮りすぎじゃない?」

「連写機能で思う存分連写しました」


 だって、一枚だけ撮って、失敗したら泣ける。

 百枚くらいは撮ったから、家に帰ったらベストな一枚を選ぼう。


「!?」


 写真が撮れているか確認していると、僕のスマホがなくなった!

 何だ!? と思ったら、夏緋先輩が僕からスマホを奪っていた。


「撮ってやるから、お前も入れ」

「え? 僕は……」

「オレが入ってお前がいないとか、意味分からないだろ」


 そう言うとみんながいる方に突き飛ばされた。

 ええー……夏緋先輩、気づかいの紳士じゃん……押された背中がすごく痛いけど……。


「アキラ! 早く来て~!」


 楓に手を引かれ、楓と柊の間に立った。

 僕がここにこの面子の中にいてもいいのだろうかとドキドキするなあ。


「あ、夏緋先輩、連写してくださいね。画質は最高で。明るさは+2にしてください」

「しっかり注文はつけるのかよ」


 めんどくせえと言いつつ、きっちり要望通りにしてくれる夏緋先輩は神だ。


「わああああ……」


 夏緋先輩が撮ってくれた写真を見て感嘆の声をあげる。


 兄に「せっかくだから、笑顔でいるように!」と念を押された春兄と会長が大人しくしてくれたので、僕が入って撮った写真はいい感じの集合写真になった。

 宝ができた……僕が死んだときには必ず棺に入れてください……。


 最初に撮った写真も凄くいい!

 春兄と会長の関係性が見えるし、二人の間で困っている兄ちゃんも可愛いし、僕が写真に入ることを断ったからちょっと拗ねている楓もイイし、カメラのレンズというよりジーっと僕を見ている柊も、柊らしくて笑ってしまう。

 そしてやっぱり、みんな顔がイイ!


「みんなかっこいいなあ」


 写真を見てにこにこしながら、しみじみ呟いてしまった。

 幸せすぎる!

 はあ……この世界に生まれてよかったわー!


「…………」

「?」


 やけに周囲が静かだな? と思って、スマホの画面から顔をあげると、何故かみんながほわほわした感じで僕を見ていた。WHY?


「お前は可愛いな」


 そしてみんなから順番に頭をなでなでされた。WHY!?


 よく分からんが……。


 今日はお宝をゲットできた、たいへん良き日である!



(加奈先生、ありがとうございました!)

挿絵(By みてみん)


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