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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
IF ありえた未来2

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小話集⑤

本編後日談

 学校が終わり、外での用事を済ませるとすぐに天地家を訪れた。

 アキはもう帰って来ているかな?

 元々は一緒に帰る予定だったけど、お互い用事が出来てしまった。

 でも用事はすぐに終わるし、後で会いたいとお願いした結果天地家で一緒に過ごすことになった。

 真兄が帰っていたら玄関の扉は開いているから中で待つように言われたのだけど……あ、開いた。


「お邪魔しまーす」


 玄関に並んでいた靴は二足。

 一つは見慣れたお兄ちゃんのものだからアキはまだ帰っていないみたい。

 靴を揃えて上がらせて貰うとリビングの方から雑談している声が聞こえた。

 お兄ちゃんと真兄ね。

 アキが帰ってくるまで話の仲間に入れて貰おう。


「いい加減にしろよ」


 扉の前まで来ると、真兄の苛立った声が聞こえた。

 どうしたのかな?

 扉を開けてこっそり中を覗いてみた。


「春樹、邪魔だって言っているだろう!」

「お前が構ってくれなきゃ暇なんだよ」


 !!

 わあっ……ここに風ちゃんがいたら大変なことになっていたと思う!

 話している内容はまだ『友達』と言える範疇のものだったけど……。

 ソファーの前にあるセンターテーブルに本を乗せて読んでいる真兄の背中にぴったりとお兄ちゃんがくっついていた。

 後ろから抱きついて、ページをめくる真兄の邪魔をしている。

 お兄ちゃん達がイチャついてるー!!


「やめろって。図書室で借りた本で明日返さなきゃいけないんだよ!」

「間に合わなかったらもう一度借りればいいじゃないか」


 お兄ちゃんは真兄から本を取り上げ、取り返そうとする真兄を見てにやにやしている。

 こんなお兄ちゃんを見るのは初めてだ。

 家や学校ではクールなお兄ちゃんがこんなになっちゃうんだな……。

 ずっと一緒だし、仲良しだなあ。


「はあ……いいなあ」


 私もアキとイチャイチャしたい!

 甘えて貰いたい!


「!!」

「雛!?」


 思わず出た呟きで二人が私に気づいた。

 すると真兄は直ぐさまお兄ちゃんを引きはがし、思い切り後ろに突き飛ばした。


「痛っ! 何すんだよ、真」

「うるさい!」


 お兄ちゃん、思い切りソファの角で頭をぶつけていたけど大丈夫?

 角といってもそんなに固いところじゃないから平気かな。

 そんなことより……。


「羨ましい……」


 アキと付き合い始めたけれど、まだ友達の延長線上を進み始めただけというか……。

 あまり恋人らしいことが出来ていない。

 周りの彼氏がいる友達の話を聞くと、羨ましくなってしまう。

 面白いと薦められて読んだ少女漫画は見るんじゃなかったと後悔した。

 ちょっと強引な男の子と意地っ張りな女の子のラブストーリーで素敵過ぎた。

 アキにこんなこと言われたい! という台詞もいっぱいで……ああ、私もアキとラブラブになりたいよ-!


 どうしたらいいの!?

 教えて真兄!

 真兄に目を向けると、見られていたことが恥ずかしかったのか顔が真っ赤になっていた。

 こういう可愛いところもお兄ちゃんを虜にしているのね?

 心の中でメモしなきゃ!

 照れを誤魔化しているのか少し挙動不審な様子で吹っ飛んだ本を拾っている真兄に詰め寄った。


「真兄、どうやったらアキもさっきのお兄ちゃんみたいに甘えてくれるようになるかな? 私もイチャイチャしたいの!」

「!」


 あ、本を落とした。

 本を持っていた手のまま固まっているけれど……どうしたの?


「真兄? 教えてってばー」


 服を少し摘まんで引っ張ってみたけど動かない。

 でも、顔はどんどん赤くなっていく。


「ひ、雛! 央はどうした!?」


 ソファに激突して倒れていたお兄ちゃんが復活したようだ。

 私と真兄の間に割って入ってきた。

 もう、真兄を隠さないでよ。


「もうすぐ帰って来ると思うよ。開いていたら中に入って待つように言われたの」

「そうか! だったら央の部屋で待っていたらどうだ?」

「んー……勝手に入ったら怒られるもん」


 一人でアキの部屋に入ってみたいとは思うけれど、絶対あとで不法侵入だ! って怒られちゃう。


「大丈夫だよな? 大丈夫だ!」


 お兄ちゃんは真兄に問いかけたけど、動かないままで返事はなかったよ?

 本当に勝手に部屋に行っていいのだろうか。


「いいから行け! 俺が行くように言ったって央にちゃんと伝えるから!」

「もう……分かったよ」


 私はお邪魔虫なのね?

 そんなに必死に追い出さないでも邪魔はしないのに。

 真兄にアドバイスを貰えなかったことは名残惜しいけれど、リビングを出て二階のアキの部屋へと移動した。


 この部屋は子供の頃はよく出入りしていたけど、大きくなってからは殆どない。

 一人でお邪魔しちゃうなんて初めてだ。


「入らせて頂きますっ」


 アキはいないと分かっているのに緊張してしまう。

 怒られてしまうかもしれないという緊張なのか、好きな人の部屋に一人で入るというドキドキなのかは分からないけど落ち着かない。

 ゆっくり扉を開けて中に入り、静かに閉めた。

 泥棒のような動きをしてしまった。

 だって……いけないことをしているような気がして!


 そしてここには、更に悪いことをしてしまうようにいくつも罠が仕掛けられている。

 色々見てみたい……でも勝手に触っちゃだめ!!

 またベッドで寝たいなあ。

 今度は一緒に…………って変なことじゃないから!!

 お昼寝とか! 一緒にゴロゴロしたいだけなの!!


「~~~~!!」


 誰に言い訳しているのか分からないけれど、恥ずかしすぎて顔を覆ってしまった。

 本当に変な意味じゃないの!!


「はあ……落ち着こっ」


 床にペタンと正座した。


「はあ」


 一息ついて部屋の中をぐるりと見回した。

 片付いていて私の部屋より綺麗だ。

 『彼氏の部屋をお片付け』とかしたかったなあ……勝手にしたら怒られそうだけど。


「あ」


 ベッドの上にジャージの上着が脱ぎ捨てられているのを見つけた。

 洗濯しなくてもいいのかな?

 分からないけど一応畳んじゃおう。


「ふふっ」


 お嫁さんになったみたいで凄く楽しい!

 長い時間をかけて綺麗に畳んだ。


「アキ、まだかなー。……スマホ見よ」


 何かしていないと落ちつかない。

 スマホの画面を操作し、写真フォルダを開いた

 写真は大好きだからいっぱいあるけれど、アキの写真は一纏めにしている。

 あの写真見たいな……この部屋で撮った寝顔……あ、あった!


「えへへ」


 これを見るとにやけてしまう。

 綺麗で格好いい。

 撮った頃はまだ片想いだったけれど、今では彼氏だ。

 幸せ過ぎてどこまでもにやけてしまう!

 でもやっぱりイチャイチャしたいです……。


「……何ニヤニヤしてんだよ」

「! アキ!? お、おかえり!」


 突然画面が暗くなったと思ったら、アキが目の前に立っていた。

 いつの間に帰ってきたの!?

 写真に夢中になり過ぎたのか、扉が開いたことも気がつかなかった。


「あっ! それ!!」

「!!」


 アキにスマホの画面を見られてしまった。

 わあ、怒られちゃうかな!?

 それに消されちゃうかも!?

 慌ててスマホを背中に隠した。


「盗撮だぞ!」

「ごめんなさい!」

「消せ!」

「やだ!」


 これは絶対に消さない!


「……。じゃあ、これも消せないなあ?」


 眉間に皺を寄せて私を見下ろしていたアキが悪い笑みを浮かべ、制服のポケットから取り出したスマホを操作し始めた。

 え? 何?


「これ、だーれだ?」


 そう言うと私にスマホの画面を向けた。

 そこに写っていたのは……。


「え!? 何でー!?」


 気持ちよさそうに眠っている私だった。

 画面を占領しているのは殆ど私の寝顔だけど、少しだけ写っている景色を見るとアキの部屋だと分かった。

 布団もこの部屋のものだし……ここで寝ちゃった時に撮られちゃったの!?


「お前がそれを撮っている時に僕は起きていたんだよ。撮られたって分かったからすぐに撮り返してやった」

「そうだったの!? 消してよ!」

「そっちが消したらな」

「うぅっ!」


 なんて難しい選択を迫るの!

 私の寝顔の写真をアキが持っているなんて恥ずかしいけれど……アキの寝顔の写真を捨てるなんて出来ない!


「消……さない!!」

「じゃあ僕も消さないけど?」

「いいもんっ」

「ふうん?」


 そう言うとこの話題はもういいのか、私の横を通り過ぎて机に向かった。

 うー、私はまだすっきりしていない。

 アキの写真は消さないで私の写真だけ消して貰えないかなあ。


「雛さ、また兄ちゃんに何か言っただろ?」

「え? 言ってないよ?」


 なんのことだろう?

 心当たりは全くないのだけれど、アキの顔は私を疑ったままだ。

 私、また何か余計なことを言っちゃったのかな?

 アキには度々怒られてしまう。

 気をつけているつもりだったんだけど、今日は何が駄目だったんだろう。

 分からないから、さっきあったことを全部話しちゃおう。


「あのね」

「うん?」

「お兄ちゃんが真兄に甘えてるところを見ちゃって……」

「えっ!?」


 鞄を机に置こうとしていたアキが素早い動きで振り返り、私を見た。

 あまりにも機敏な動きでびっくりしてしまった。

 何!?

 もう駄目なところがあったの!?


「どういう風に? 詳しく!」

「えっ? えっ?」


 凄く真剣な表情だ。

 気をつけなきゃいけない大事なポイントでもあるの?

 少し緊張しながら見た光景を伝えた。


「お兄ちゃんがね、真兄が本を読んでいるところを後ろからギュッ!ってしてたの」

「!! ……それだけか?」

「えっと、その後はー……。真兄は本に集中していてお兄ちゃんを相手にしていなくて。退屈になったお兄ちゃんは構って欲しいからって真兄から本を取り上げたの。真兄は怒ったんだけど、結局は本を取り合いながらイチャイチャしてるって感じだった」

「へえ……………………けしからんな」


 ぽつりと呟くとアキは私に背を向けた。

 片手で口元を押さえているのが見えるけど……やっぱりお兄ちゃん達の仲が良いところを男の子のアキが聞くと心中複雑なのかな。

 話を続けていいのか躊躇ったけど、まだ私の何が悪かったのか分かっていない。

 最後まで話すことにした。

 ……ちょっと言うのが恥ずかしいけど。


「ベタベタしないタイプのお兄ちゃんを、あんなにデレデレさせちゃう秘訣は何かなーって思って……」


 遠回しにアキにデレデレして欲しいと告白しているようで……赤くなりそう!


「それをストレートに聞いたのか?」


 両手で頬を押さえているとアキがこちらに身体を向けた。

 顔が熱いのに……見ないでよっ。


「うっ、うん」

「それで兄ちゃんはなんて言ったんだ?」

「固まっちゃって教えてくれなかった」

「まあ……そうだろうな……」


 そう呟いたアキの声は呆れているようだった。


「聞いちゃ駄目だった?」

「それぐらいだったらいいと思うけど……。でも、出来るだけソッとしてやってくれよ。兄ちゃん、春兄とのことを言われるのは恥ずかしいみたいだからさ」

「うん……分かった」


 さっきも顔が真っ赤になっていたのに聞いてしまった。

 照れている真兄は可愛かったから、余計に詰め寄っちゃったくらいだ。

 うーん……反省。


 それに、真兄の真似ばかりじゃ駄目だよね。

 甘えて欲しいからってそう仕向けるように考えるのは、告白して貰えるのを待っていた頃と同じだ。

 ……よしっ!


「アキ!」


 勢いよく立ち上がると、ブレザーを脱いでいる途中の背中に飛びついた。


「なんだよ!? 急にどうした!?」

「頑張ってるの!」

「はあ?」


 自分で考えて、甘えて貰えるように頑張るし、イチャイチャしたい時も自分から動く!

 凄く恥ずかしいけど!


「……なんか気合いが入っているところを悪いけどさ、とりあえずブレザーをハンガーに掛けさせてくれよ」

「あ、ごめん!」


 脱ぎかけのブレザーの上からギュッとしちゃったから皺になったかも!

 慌てて離れるとアキはブレザーの袖から手を抜き、ハンガーに掛けた。

 ああ……それ、私がやりたかったな……。

 旦那様のスーツのジャケットを脱がせてあげる奥様みたいで素敵だったのに、気づくのが遅かった。

 楓君なら自然にしてそうだな……ってライバルのことを考えてどうするの!

 負けないんだから、闘志が湧いてきた!


「ニヤニヤしてると思ったら今度は怖い顔をして、何を百面相してるんだよ」

「なんでもないの! ……あっ!」


 考えている間にアキは床に座っていた。

 ええー……とりあえずハンガーに掛けるって言ったのに!

 座ってしまったらさっきの続きが出来ないじゃん!

 ベタベタしたくなかったのかな……悲しくなってきた。


「雛。ん」

「ん?」


 下に向けてしまっていた視線をアキに向けると、何か用があるのか手招きしていた。

 でも……何?

 首を傾げると『はあ』と大きく溜息をつかれた。

 なんなの!?


「早く来いよ」

「え?」


 広げた足の間の床をポンポンと軽く叩き、両手を広げている。

 え、それって……!


「……そこに座って良いの?」


 お兄ちゃん達がしていた『後ろからギュッ』をやってくれるの!?


「やりたかったんだろ?」

「うんっ!!」


 凄くて飛び跳ねたくなった。

 いきなりドンと座るのは恥ずかしかったから少し躊躇しながらアキの前に座った。

 途中にちらっとアキを見たら、平気そうにはしているけれど少し顔が赤い気がした。

 ふふっ、アキも恥ずかしいのかと思うと、私の照れは少し和らいだ。

 思い切って凭れてみると、顎に頭をぶつけてしまって怒られちゃったけど……話してよかった、やったっ!


「ねえ、写真撮っていい?」

「駄目」


 話す距離も近い。

 アキの声が直接耳に届いているようでドキドキしちゃう。


「一枚だけいいでしょ? ……って、ああっ!」


 カメラを起動しようとしていたら、お兄ちゃんが真兄から本を奪った時のように手に持っていたスマホをアキに奪われた。


「これは没収だ。ついでにさっきの写真消しておこうっと」

「駄目だよ!?  絶対に消しちゃ駄目! 返して!」


 これもさっきのお兄ちゃん達のようだ。

 羨ましいと思っていたけれど、同じことが出来ちゃった。

 この調子で、お兄ちゃん達よりもっと仲良しになっちゃおう。


 この後、素敵だった少女漫画を見せてトキメク場面を再現して欲しいとお願いしたんだけど、それは却下されちゃいました。


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