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BLゲームの主人公の弟であることに気がつきました(連載版)  作者: 花果 唯
本編

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第十一話 嵐

 放課後。

 いつも通りに空気が淀んでいて、居心地が悪い生徒会室に集まったのは、おなじみとなってしまったメンバー。

 青桐兄弟+僕だ。

 こんなキラキラした面倒な人達となじみたくなかったのだが……。

 会長という殿に呼び出されては、首平民は従うしかないのだ。


「真との関係が進展しない。何故だ……」


 この人の愚痴もいつも通りだ。つまり恋路に進展がない、ということだ。

 いや、あったら困るんだけどね。


 例のガキ大将スタイルで、パイプ椅子に座って踏ん反り返っている赤鬼を、見慣れてしまっていることもつらいなあ。


「いい加減諦めろよ、兄貴」


 僕の隣では、青鬼が優雅に足を組んで座っている。

 絵になりそうなくらい美しい佇まいで、少々癇に障る。


「あ、夏緋先輩の椅子の下にゴキ……」

「!!」


 僕が言い終わる前に、夏緋先輩は座っていた椅子から忽然と姿を消していた。

 何処にいるのかと思ったら、僕の後で顔を引き攣らせて立っていた。


「おい、始末しろ!」

「何を?」

「ゴキ……ああ、口にするのも嫌だ!」

「ゴキ……ゲンなペンが落ちてたんですよ、ほら」

「は?」


 椅子の下に落ちていたカラフルでポップな蛙柄のシャーペンを拾い、先輩に渡した。

 その瞬間、僕の脳天に衝撃が走った。


「イッタアアアァ!」

「ご機嫌なペンってなんだ? あ? ペンがスキップでもしてるのかよ、ああ!?」

「ほら、『GOKIGEN FROG』って書いてるじゃないですか! 痛っ、痛いって! 蹴るなって、怖いって! 暴力反対!」


 脳天への鉄拳、からの蹴り攻撃を食らう。

 一応蹴られているのは椅子だが、怖いって!

 蹴られるたびに椅子からずり落ちそうになる。

 猟奇的なイケメン怖すぎる!


「プリーズ! バイオレンス ストップ!」

「うるせえ!」

「おい、お前ら! じゃれてないで俺の悩みを真面目に聞け! 夏緋、お前も煩い!」


 じゃれているわけではないのだが……じゃれるにしてはハード過ぎるだろ!

 会長に煩いと言われ、荒ぶる夏緋大神はなんとか鎮まった。

 一応、お兄ちゃんの言うことは聞くんだな。エライネ。


「ふん」


 拗ねたのか、夏緋先輩は椅子には座らず、壁に凭れて腕を組んでいる。

「話には加わらないぞ」といわんばかりに、明後日の方向を見ているな……。

 面倒な青鬼は放っておこう。


「……で、何でしたっけ」

「お前な……。真の弟じゃなかったら蹴り飛ばしているぞ。だから、進展しないのは何故かという話だ」

「ああ、そうでしたーそうでしたー」


『何故兄と会長の仲が進展しないのか』


 そんなの簡単だ。

 兄と春兄はラブラブで、会長なんて眼中にないからだ。

 大体会長が振り向かせると意気込んでからそんなに日も経っていないし、進展する方がおかしい。

 会長のアピールは随時進行中だが、特に大きな出来事があったわけでもないしね。


「そんなにすぐ心変わりなんてしませんよ。兄ちゃんは一途なタイプだと思うし」

「確かに、真はそうだろうな……。その対象が俺ではないところが腹立たしいが」


 くっ……ワイルドイケメンのBL嫉妬、グッとくるな。

 会長の存在は迷惑だけど、周りからズバ抜けて格好いいのは確かだし、嫌いにはなれない……というか、目が離せない。

 結局はBL充させて貰っているしなあ……今回のようにね。


 ゲームでのエピソードを思い出し、現実と刷り合わせつつ腐の思考に浸りたいところだが今は我慢だ。


「相手の幸せを思って身を引くのも、ひとつの愛情の形だと思いますよ」

「それはあり得ない。真は俺が幸せにすればいい」

「んんっ」


 も……もうやめてくれ、格好いいのは分かったから!

 ちょっと応援したくなってくるのが怖い。

 会長×兄ちゃんも、『有り』なんだよなあ。

 ゲームの時で言えば大好きなルートだったし。

 あれがリアルで見聞きできるなら「少しくらい協力してもいいか……」という気になってくる……って、いやいやいや。

 駄目だ、毒されてきている!

 春兄を裏切るようなことは出来ない。

 春兄だけじゃなく、兄の幸せまで壊してしまう。


「まあ、根気良くアピールするしかないんじゃないですか。多分無理ですけど」

「何か助言を寄越せ」

「無理」

「諦めろって」


 僕と夏緋先輩の気のない返事にも関わらず、会長はそれからも喋り続けた。

 元気だなあ。

 恋する乙女にも負けない情熱だけは認めよう。

 でも、僕は帰りたい。

 この会長放課後イベントは、いつまで続くのだろう。




 ※




 会長のBL恋愛相談室の後は、真っ直ぐ家に帰宅した。

 精神的に疲労が溜まったのか、身体が重い上、強い眠気に襲われていた。


 リビングに直行し、ソファに雪崩れ込む。

 部屋に行くのも億劫だからこのまま一眠りしてしまおう。

 制服を着替えていないから、また兄に叱られることになるだろう。

 そんなことを考えながら意識はゆっくりと沈んでいった。




『……きら』


 名前を呼ばれた気がしたが……誰だろう?


『央、大丈夫?』


 顔のすぐ近くで声がする。

 ゆっくり目を開けると、そこには子供の頃の僕に良く似た美少年がいた。

 小学生低学年くらいに見えるが、利発そうな落ち着きのある雰囲気を醸し出している。

 絶対僕ではない……兄だ。小さい頃の兄だ。

 そうか、これは夢だ。


『おかゆ、作ったよ』


 小さくても麗しい兄が持つお盆の上には、お粥が乗せられていた。 


『さけの?』


 ベッドに横になり、熱で顔を赤くしているのは、兄より更に小さい僕だ。

 どうやら風邪で寝込んでいるらしい。


『ごめん。鮭はなかったからたまごで我慢して』


 申し訳なさそうな顔の兄からお粥を受け取り、小さな僕はお粥を口にした。

 兄が見守る中口に運んだのだが、すぐに手を止め、首をかしげた。


『なんか……あまい?』

『え、あまい!?』


 驚いた兄は僕からスプーンを奪い、確かめるように口に運んだ。


『ほんとだ……出汁と塩を少し入れたつもりだったんだけど、間違ったみたい』

『でも、おいしいよ?』


 そう言うと止めていた手を再開させ、食べ始めた。

 無理に食べている様子もないから、本当に美味しいのだろう。

 だが、兄は心配そうにその様子を見つめていた。


『ほんとに? 無理したら気持ち悪くなるから、食べなくていいよ』

『たべる』


 結局、僕はお粥を残さず食べた。

 終始気まずそうに見守っていた兄も、空になった皿を見て安心したように微笑んだ。


 少し覚醒してきたのか、これは幼い頃の記憶であることを思い出した。

 兄ちゃんでも失敗することがあったんだなあ。

 風邪をひいたときも両親は不在が多く、いつも兄が看病をしてくれていた。


『良かった。熱、下がってきたね』


 兄の小さな手が僕の額に当てられた。

 なんだかくすぐったい。でも、気持ちいい。

 兄の手は落ち着くし、安心する。


 目を閉じて心地よい感覚に身を任せていると、いつの間にか手の感触は段々と大きくて確かなものに変化していた。


(ん? 冷たい……)


 冷やりとした感触を額に感じ、一気に目が覚めた。

 誰かが夢の中の兄と同じように僕の顔を覗き込み、額に手を当てていた。


「兄ちゃん……?」

「悪い、起こしてしまったか」


 目を開けるとそこには、蒼い瞳の凛々しくて端正な顔があった。

 兄ではなく、ダーリンの方だった。

 毎日来ている春兄がいるのは不思議じゃないが、兄の姿が見当たらない。


「あれ、兄ちゃんは?」

「近所の主婦の方々に捕まってな。俺は先に逃げて来た」


 なるほど、さすが兄ちゃん。

 オールジャンル、幅広い層で大人気だ。

 近所のお母様方は家事をしている兄のことを、よく気に掛けてくれる。

 僕の方はというと、「お兄ちゃんのお手伝いをしなさい」と良く叱られる。


「お前、ちょっと熱くないか? 熱があるだろ」

「え、そう?」


 それでさっき、おでこをペタペタ触っていたのか。

 確かに意識がぼんやりとしている。

 寝起きのせいかと思っていたが、どうやら違うようだ。


「風邪でもひいたんじゃないのか?」


 今度は手ではなく、春兄の頭が近づいてきた。

 何をする気だと驚いているうちに、春兄の額が僕の額に当てられた。

 こ、これは……おでこtoおでこ!

 顔が近くて戸惑ってしまう。

 こういうことは、兄にだけやって欲しいものだ。


 照れてしまっているのか、熱のせいかは分からないが凄く顔が熱い。

 顔が熱を持っているのが分かる。

 関節が痛いし、涙腺が緩んでいる気もする。

 起き上がりたいのに力が入らない。


「春兄、引っ張って起こしてー」

「ったく、ガキか」


 春兄のバスケで鍛えられた逞しい腕に引っ張られて、勢いよく起き上がった。

 腕が抜けそうだ。

 痛い、凄く痛い。

 涙腺が緩んでいるのに痛みで更に泣きそうだ。

 もう少し、加減というものをしてくれないと!


「う、痛っ……」


 抗議の視線を向けると目が合った。


「!」

「?」


 春兄が一瞬驚いたように目を見開いた。

 すぐに逸らされてしまったがどうしたのだろう。

 まあいいや、それよりも……。


「力が強すぎて痛かったんですけど」

「だったら自分で起きろ。もういいから……部屋で寝ろ」

「そうする」


 もうすぐ兄も来るだろう。

 二人の時間の邪魔をするのも悪いし、自分もゆっくり眠りたい。

 大人しく部屋で寝ることにし、重い体を起こしてとぼとぼ歩き出した。


「……危ねえ。あの顔は反則だろ」

「うん?」

「なんでもない。早く行け!」

「何故キレたし……理不尽……」


 春兄に叱られつつリビングを出た。

 途中、玄関にご近所から貰ったと思われる野菜が置いてあるのが見えたが兄の姿は見えない。

 帰ってきているはずなのだが、トイレにでも行ってるのかな。


 亡者のような動きで、なんとか自分の部屋に到着。

 そのままベッドに倒れこんだ。




 ※※※




 目を覚ますと窓の景色は暗闇に染まっていた。

 時計を見ると、春兄と話した頃から四時間程経っていた。


 熱が上がってきたようでさっきよりも一層関節が痛いし寒気がする。

 本格的に風邪をひいてしまったようだ。

 項垂れているとドアが開き、ひょこっと兄が顔を見せた。

 やめて、我が兄ながら最高に可愛い。

 体調が悪いのによからぬ妄想に走ってしまいそうになるじゃないか。


「起きたみたいだね。風邪、大丈夫?」

「大丈夫……じゃないかも」


 素直に堪えると、兄が困ったように微笑んだ。


「そうみたいだな。熱、測ってみようか」


 そう言うと兄はドアから姿を消したが、体温計を手にしてすぐに戻ってきた。

 早速測る。

 すぐに体温計はピピッと計測完了を告げた。

 自分では見ずにそのまま兄に渡す。


「わあ……三十八度超えてる。明日は学校を休んで病院だな」

「はーい」

「じゃあ、お粥作ってくるから」

「お腹減ってない」

「無理はしなくていいけど、少しくらいは食べなきゃ。薬を飲む前に何か入れておいた方がいいよ」

「んじゃ、鮭のがいい」

「残念ながら、鮭はないな。卵で我慢して」


 デジャヴだ。

 さっき見た夢を思い出した。

 お互い大きくなったが、同じシチュエーションじゃないか。


「……砂糖と塩、間違えないでね」


 そう言うと兄はきょとんとしたが、少しすると思い出したようで微笑んだ。


「あー……そんなことがあったなあ。覚えていたんだ?」

「さっき夢で見て思い出した」

「へえ。懐かしいなあ」


 そう言って僕のおでこに手を置いた。

 冷たくて気持ちいし、やっぱり春兄より兄の手の方が落ち着く。


「そういえば、春兄は?」


 この時間だと帰っていることも多いが、稀に遅くまでいることもある。

 今日はどうなのだろう。

 答えを求めて兄の方に目を向けると、黙ったまま止まっていた。

 どうしたのだろう。

 思わず小首を傾げる。


「……春樹は帰ったよ」

「そっか」

「春樹が気になる?」

「うん? 気になるっていうか、まだいるのかなって思っただけ」

「そうか」


 返事をすると、兄は僕の部屋を出て行った。

 さっきの一瞬の間がなんだったのか気になったが、お粥を作ってきてくれた兄の様子はいつも通りだった。

 お粥もいつも通り美味しかった。




 ※




 朝起きると熱は少し下がっていたが、学校は休んで病院に行くことにした。

 昨夜のうちに楓と雛には「風邪で休むことになりそうだから、朝の迎えはいらない」と伝えていたのだが、心配してわざわざ顔を出してくれた。

 連絡した意味が無いじゃないかとも思ったが、ありがたいことだ。


 楓なんて、冷たいものなら食べられるだろうと、お手製のフルーツゼリーを作ってきてくれるという女子力の高さを見せつけていった。

 雛の負けた感が半端なかった。

 こんなところで女子力を争わなくてもいいと思うが……。


 家から一番近くにある総合病院で診て貰い、受けた診断は『風邪』だった。

 診察室に入ってすぐに「風邪ですね。薬飲んでゆっくり休んでください。はい、次ー」と追い出されるくらい普通の風邪だった。

 隣接している薬局に処方箋を出して薬を貰い、帰宅。

 兄が用意してくれていた昼食を食べて薬を飲み、一眠りすることにした。




「…………う?」


 暫く気持ちよく眠っていたが、スマホの着信音で目が覚めた。

 通知に表示されている名前は春兄だった。

 大きなあくびをしながら通話ボタンを押す。


『もしもし、央? 風邪は大丈夫か?』

「うん、平気」

『様子を見に行きたかったんだけど、真に止められてさ。寝かせておくから邪魔するなって』


 体調も大分良くなってきたし、退屈だったから来てくれても良かったのに。

 というか、僕を気にせず兄の部屋でイチャイチャすればいいのに。


『なあ、話は変わるが……真の機嫌が悪いんだけど、なんか知らないか?』

「え!?」


 驚きで思わず大きな声を出してしまった。

 兄の機嫌が悪い姿なんて、滅多に見られないレアなものだ。

 いつも穏やかに笑っている兄。

 怒っているときは必ず理由があるはずだが……特に心当たりはない。 

 朝もいつも通りだと思ったが……。

 昼食を作ってくれていたし、そんな様子は見当たらなかった。


「僕は心当たりないけど。春兄、何か兄ちゃんを怒らせるようなことしたんじゃない?」


 例えば無理なプレイを強いたとか。

 僕にはそれしか思い浮かばない。


「俺も心当たりがないんだけどなあ」


 やっぱり……僕はアッチ方面の問題だと思う。

 言えないけどね!


「ストレートに聞いてみれば?」

『聞いたけど、流されて終わりだ』

「じゃあ、本当に何もないんじゃない?」

『いや、多分何かはある』

「そう?」


 お兄ちゃんっ子としては、兄についてのことは負けたくないが、旦那様が言うのならそうなのだろう。

 でも、本当に心当たりが全くない。


「じゃあ、原因が分からないから機嫌が良くなるように何かしたら?」

『そうか。そういう手段もあるか。真の機嫌が良くなることか……。何だと思う?』


 愛を囁いてやればいいんじゃないか。

 もしくはプレゼント。

 あそこを労って円座クッションでも買ってやればいいのだ。

 ……なんてことも言えないが!


「春兄が自分で考えなよ」

『冷たいな。助けてくれよ』

「しらない。僕、病人だし。おやすみー」

『おい、待て!』


 僕に甘えられても困る。

 甘える先を間違っているぞ。


「まあ、兄ちゃんの様子がおかしいか、よく見ておくよ」

『ああ、頼む。何か分かったら教えてくれ』

「了解しました」


 まだ大人しく寝ているように注意を受けた後、電話は終わった。


 喉の渇きを感じ、一階のリビングに下りた。

 お茶を飲みつつスマホをチェックしてみると、楓と雛、柊からも風邪を心配するメッセージが届いていた。

 看病しに来ると連絡があったが、のんびりしたかったので全部断った。

 暇だが、この面子が来ると絶対疲れる。


 そんなことをしていると、いつの間にか時間が経っていたようで兄が帰宅した。


「おかえり」

「ただいま、起きていていいのか?」

「大丈夫」


 春兄が言っていたことを思い出し、兄の様子を観察してみたが特に気になるようなところはない。

 やっぱり勘違いじゃないだろうか。

 気にせずどんどん強引にでもイチャイチャすればいいのだ。

 そうすれば、きっと春兄の疑念も払拭されるだろう。


「春兄来ても大丈夫だったのに」


 そう言うと、自分の部屋に行こうとしていた兄の足が止まった。

 こちらに背を向けているから顔は見えない。


「どうして?」

「さっき電話くれた」

「そう。来て欲しかったんだ?」

「うん、治ってきて暇だったし」


 どんどん連れてきて励めばいいよ。

 僕は自分の部屋に戻って聞き耳をたてるから。

 早くボイスレコーダーを買おう。


 そんなことを考えている間に、兄の自分の部屋に行ってしまったようで姿を消していた。


 兄は暫く自分の部屋から出てこなかった。

 いつもはすぐに降りてくるし、春兄が来ているとき以外はリビングに居てリビングの主のようになっているのに。

 勉強だってリビングでするくらいなのだ。


 僕がいるから、風邪がうつりたくないのだろうか。

 今までそんなこと気にしたことなかったが……。

 次第に眠くなったので、僕も自分の部屋に戻って一眠りしたのだった。




 ※





 丸一日寝て過ごし、熱は完全に下がった。

 倦怠感は少し残っているが、これくらいなら特に問題はない。

 一応マスクだけはつけて家を出た。


 ちなみに、迎えに来てくれた楓による雛の女子力勝負は今日も繰り広げられた。

 雛も負けじとコーヒーゼリーを作ってきたのだが、王者楓は食欲が少し出てきただろうからとかやくご飯のおにぎりを作ってきていた。


 ごめん雛、楓の勝利だ。

 朝ご飯を食べたからまだ両方食べていないが確かに食欲も出てきたし、なにより楓のかやくご飯のおにぎりは美味そうだった。

 コーヒーゼリーも好きだし、雛も僕が好きなことを知っているから作ってきてくれたのだろうけど、昨日楓のゼリーを食べたからなあ。

 やはり雛の負けた感が凄かった。

 大丈夫だ雛よ、お前は美少女だ。

 それでいいじゃないか。


 悔しそうな雛が明日も再挑戦するようなことを言っていたが、そろそろ僕がメタボになりそうなのでやめて欲しい。


 学校に着くと一日休んだだけなのに、クラスメイトや友達が心配して声を掛けてくれた。

 恵まれた環境だなと心の中でほろりと温かい涙を流している時に、それをぶち壊す「バンッ!」という破壊音が響いた。


 教室のドアが砕け散るんじゃないかという勢いで開けられた音――。

 その犯人はもちろん、前科のある赤鬼だ。


「天地央!」

「放課後に行けばいいんですよね! 分かってます、ええ、分かってますよ僕は!」


 お約束通りにフルネームを叫ばれた後、次に言われることが分かった僕は、少しでも会長とのやり取りを減らそうと食い気味に返事を返した。

 これで収拾がつくと思いきや……つかなかった。


「いや、今来い!」

「今!? HRが……」

「気にするな!」

「馬鹿か! しなきゃだめだろ!」


 会長に馬鹿と叫んだ瞬間、周りの空気がざわついた。

 しまった……一日空いて気が抜けてしまったのか、ここが会長のテリトリーだということを忘れていた。


「行きましょう! さあ、早く!」


 これ以上問題を増やしてしまわぬよう、そそくさと教室を抜け出した。

 会長の後をついていく。

 夢銀河スターの背中は今日も輝いていたが、いつも以上にキラキラと輝いている気がした。

 音符を飛ばしながらスキップでも始めるのではないかと思うくらい上機嫌だ。

 ……嫌な予感しかしない。

 会長は言いたくて堪らなかったのか、生徒会室に到着した途端に口を開いた。


「今度の日曜、真と出かける約束を取り付けたぞ!」

「え……ええええ!?」


 会長が喜んでいるということは、二人で出掛けるということだろう。

 それってつまり……!?


「デートってこと!?」

「そういうことだ。ふっ、はははは!!」


 湧き出る笑みを堪えきれないようで、ニヤニヤと高笑いが混じった気持ち悪い表情をしている。


「央、もうすぐだ! 本当にお前に兄と呼ばれる日も近い! 待っていろ、はははは!!」


 言いたいことを言うと、絶好調の高笑いを響かせながら去っていった。

 僕はその背中を、ポカーンと口を開けて見守った。


「嘘だろ……」


 言い様のない不安に襲われる。

 春兄が兄に異変を感じている中での、会長とのデート――。

 会長の誘いを受けるなんて、兄の心境に何か変化があったのかもしれない。

 何が起こっているのか全く見当もつかないが、何かあったことは確かなのだろう。


 僕はスマホを取り出し、急いで電話を掛けた。

 今はHRの時間だし、怒られると思うがどうしても今話したい。

 コール音は長く続いている。

 出ないつもりかもしれないし、気がついていないのかもしれない。

 しつこく諦めずに鳴らし続けていると、コール音が止まった。

 どうやら繋がったようだ。


『お前、今出れるような時間じゃ……』

「兄さん、事件です!」

『あ?』


 夏緋先輩が喋り始めたのは分かったが、我慢出来ずに被せて話しを始めた。

 デートの約束を取り付けて有頂天になっている会長のことを伝えると、夏緋先輩は重い息を吐いたあと、「今から合流しよう」と言って電話を切った。


 生徒会室で待っていると、思っていたよりも断然早くやって来てくれた夏緋先輩と緊急会議だ。


「どういうことだ? お前の兄貴のところは別れたのか?」

「それは絶対にないですっ! 絶対にっ!!」


「ありえない!」と全力で即答した。


「なんでそんなにお前が必死なんだよ……。まあいい、確認するぞ。オレは兄貴に諦めさせたい。お前は現状維持希望。つまりオレ達の利害は一致している。そうだな?」

「ウィ!」

「よし、なら手を貸せ。なんとかするぞ」

「お兄ちゃん、格好いい!」


 ――ゴツン


 脳が揺れ、鈍い音が響いた。痛い。


「ふざけてる場合じゃないだろうが」

「そうですけど……でも、暴力反対!」

「いいから聞け。話が進まないだろ。まず、その約束はなんとか破綻させよう」

「ちょっと可哀想……」

「お前はどっちの味方なんだ!」


 青鬼を怒らせてしまった。

 駄目だ、僕も動揺してしまって大切なことを見失いかけていたようだ。

 あんなにはしゃいでいる会長を見てしまったので心苦しいが、兄達の幸せには代えられない。


「心を鬼にして、鬼……茶鬼になります! 青鬼の傘下に入ってタンゴを踊ります!」

「何の話だ? お前、真面目に話をする気あるのか?」


 段々お怒りになってきているのが分かる。

 今のはふざけたつもりはなかったのだが、これ以上怒らせないように姿勢を正した。


「はあ、ったく。そうだな……お前、櫻井春樹にこの情報を流せるか?」

「ええ!? 出来るけど、話がややこしくなりません?」


 春兄に止めて貰おうという作戦か?

 でも、今の状態の二人では良い手だと思えない。


「そうかもしれないな。どちらかに断るような用事ができるといいが……。とりあえずお前、階段から落ちて入院でもするか?」


 恐ろしい笑みを浮かべて夏緋先輩が詰め寄ってきた。

 僕を階段まで連れて行って突き落とすつもりか?

 そんなことしたら普通に『事件』だからな!


「とりあえず、ってなんですか! 先輩がなんとかするんじゃないのかよ!」

「手っ取り早いだろうが」


 そこに授業開始を知らせるチャイムが鳴り響いた。

 HRはサボってしまったが、さすがに授業は戻った方がいいだろう。


「……まあ、兄貴の予定をなんとかできないか動いてみるから、お前も何か考えておけ。何かあったら連絡しろ」

「アイアイサー!」


 親分の指示を受け、頷いた。

「本当に分かっているのかよ……」と呟きながら、夏緋先輩は教室に戻っていった。

 失礼な、日本語くらいは分かるってば。 




 ※※※




『央。やっぱり真が俺に冷たい……』


 いつもより数段トーンの低い声だ。

 家に帰ってゴロゴロしていると、分かりやすく落ち込んでいる春兄から電話が入った。


『家に行かせてくれない。央、本当に心当たりはないか?』

「ええ!?」


 寝転がっていたのだが、思わず飛び起きてしまった。

 なんだって……大事件じゃないか!

 我が家に来ないということは、イコール二人が励まないということだ。

 僕の大事な栄養源が! 主食の米よりも大事な栄養源がなくなってしまう!


 会長の誘いを受けたこともおかしいし……。

 春兄はこのことを知っているのだろうか。

 知らない可能性のほうが高そうだし、僕が話して知ってしまったら大変なことになるかも……。


『お前からもさりげなく聞いてくれないか?』

「えー……?」


 果たして、僕が聞いて答えてくれるのだろうか。


『頼む』


 春兄からこんなに真剣に頼まれたことは初めてだ。

 二人の幸せの為だし、協力できることがあるなら喜んでやろう。


「分かった。聞いてみる」

『悪いな。助かる』


 安心したような春兄の声を聞いてから電話を切った。


「なんて聞こう」


 どういう風に聞けばいいだろう。

 何気ない会話の中で、さりげなく聞くことが出来たら一番いいのだろうけど、僕にそんな器用なことができるだろうか。

 何も考えずに素直に聞くのが一番かもしれない。

 そう思い、心の準備をした。


 日が落ち始め、窓の外が暗くなってきた。

 お腹の空き具合もそろそろ夕飯時であることを訴えている。

 兄が帰ってくる頃かなと思っていると、玄関のドアが開く音がした。


「ただいま」


 兄が帰ってきたようだ。

 夕飯材料を買ってきたようで、大きな荷物を肩にかけていた。

 兄の顔をこっそり覗き見たがいつも通りの麗しさで、機嫌が悪そうには見えない。

 やっぱり春兄の勘違いじゃないだろうか。

 とにかく、一度確認してみよう。

 台所のテーブルに荷物を置き、冷蔵庫に食材を片付けている兄に話し掛けた。


「なあ、兄ちゃん?」

「うん?」

「なんかさ……もしかして春兄とケンカ……とかしてる?」


 春兄の名前を出した瞬間、兄の動きが止まった。

 顔を見ると、無表情……いや、少し目つきが鋭い?

 明らかに兄の纏っている空気が変わった。


「!」


 その変化を目にして心臓が大きく波打った。

 まずい、これは……これは『駄目な時』の顔だ。

 久しぶりに見る、絶対に茶化してはいけない時の表情だ。

 春兄が言っていた通り、『確かに怒っている』とようやく理解出来た。

 春兄の勘は正しかった。


「春樹が何か言っていた?」

「そ、そう言うわけじゃないけど……」


 滅多に怒らない兄が怒っていると分かった瞬間から動悸が止まらない。

 余計に怒らせるようなことは絶対したくない。

 話を止めたいが春兄と約束してしまったし、聞かないわけにはいかない。

 腫れ物に触るように慎重に口を開いた。


「何かあったの? 二人には仲良くしていて欲しいなあって……」


 僕の話を聞いている兄の眉間の皺がより一層深くなっていくのが見えた。

 あー……まずい。


「央には関係ない」


 遮るように言い放たれた言葉は凄く冷たかった。

 内容も言い方も、何もかもが冷たかった。

 心臓がきゅっと痛くなり、頭も真っ白になりそうだ。

 でも、春兄から託された使命を果たしたいし、僕だって早くいつもの二人に戻って欲しい。

 簡単に引き下がるわけにはいかない。


「……ごめん。で、でもっ」

「関係ないって言っているだろ。口を挟んでこなくていい!」


 怒気を孕んだ強い口調だった。

 怯えたわけじゃないが、驚きと兄の気迫に圧されて思わず身体が強張った。

 普段からまったくケンカをしないわけではないけれど、ちょっとムッとするだけですぐ忘れるような程度だ。


 でも、今のは喧嘩じゃなくて拒絶されたようだった。

 僕にとって兄は『兄』というだけではなく、母でもあり父でもあり、誰より大好きで尊敬する人だ。

 そんな兄に冷たくされ、高校生にもなって情けないが泣きそうになってしまった。


「ごめん、なさい……」


 肩を落として俯いてしまう。

 ごめん春兄、これ以上この話をするのは無理だ。

 それに涙を堪えるのが難しくなってしまう。

 『部屋に戻って落ち着こう』そう考えていた時――。


「真」


 突如聞こえた声に反応して振り返ると、そこには……。

 怖い顔をして立っている春兄がいた。


「悪い。勝手に上がらせて貰った」


 僕の頭にポンと手を乗せてから通り過ぎ、兄の方に近づく春兄。

 春兄の手が優しくて嬉しかったが、それよりも空気がピリピリしていてどうしていいか分からない。


「今の言い方はないんじゃないか?」

「……勝手に入ってくるな」


 二人は険しい顔をし、睨み合っている。

 こんな二人を見るのは初めてだ。

 オロオロと二人の顔を見ることしか出来ない。


「央は俺やお前のことを心配して言ってくれているんだぞ」

「お前が言わせたんじゃないのか?」


 兄は馬鹿にしたように鼻を鳴らして、春兄に背を向けた。

 ああ、兄ちゃんがこんな悪態をつくなんて……。


「何をしにきたのか知らないけど、早く帰れよ」

「お前……何にそんなに苛々しているんだよ」


 春兄の声が荒々しくなってきた。


「煩い。オレのことは放っておいてくれ。二人で仲良くやってればいい」

「はあ? 何を言っているんだ。大体最近のお前の態度は何だ。言いたいことがあるならはっきり……」

「煩いって言っているだろ!」


 兄が声を荒げて、春兄の言葉を遮った。

 僕は兄の大きな声を聞いて心臓が縮んだような感覚に陥り、思わずぎゅっと目を閉じた。


 兄と春兄、二人の間に沈黙が流れる。

 時間が止まったようだったが春兄が大きな溜息をつき、再び時は流れ出した。


「お前、ちょっと頭冷やせ。央、行くぞ。……央?」


 僕は二人のやりとりを最後まで聞かず、自分の部屋に向かっていた。

 駄目だ、辛くて聞いていられなかった。

 本当は仲の良い二人が、あんな風に睨み合っているところは見ていられない。

 兄に拒絶されている悲しみや、二人の険悪なところを見たショックで我慢しきれないくらい悲しくなった。

 部屋に着くとすぐに鍵を閉め、急いでスマホを取り出し縋るように電話をかけた。

 相手にはすぐに繋がった。


『どうした、何かあったか?』

「夏緋先輩……」


 そっけなくて冷たく感じる声が、今日は別人のように温かく聞こえる。

 それが更に我慢している涙腺を攻撃してくる。


「僕、泣きそうです」

『はあ?』


 先輩の呆れたような溜息が聞こえてくる。

 でも、棘は感じられない。


『……オレには、既に泣いているように聞こえるがな』

「気のせいです」


 鼻をすすりながら返事をした。

 まだ目から流れていないぞ。

 下を見たり、瞬きをしたらアウトだけど、まだセーフだ。


『で、何があった? 話せることは全部話してみろ』


 『話したくないことは話さなくていいから、聞いて欲しいことだけ聞いてやる』と言ってくれたような気がして更に涙がこみ上げてきた。


 何故だ、こんな時に限って嫌がらせのように鬼が優しいなんて!

 あんなに冷たい氷使いだったのに……。


 これがイケメンという生き物なのか。

 ただのイケメンAとか、モブだとか言って本当にごめんなさい。


 夏緋先輩の潜在能力に脱帽しつつ、僕はさっき起こった出来事を伝えた。

 感情が高ぶっているせいか、支離滅裂で自分でも何を言いたいのか分からないようなことを口走ったが、夏緋先輩は短い相槌を打ちながら聞いてくれた。


 伝わったかどうかは分からないが、僕は胸の中に溜まったものを全部吐き出して少し楽になった。

 夏緋先輩はどう思ったのか言葉を待っていると、少しの沈黙の後に声が聞こえ始めた。


『話を聞いていて分かったことは……』

「何か分かったんですか!?」

『ああ、お前が引くぐらいブラコンだということがな』

「おい。人のこと言えない奴が言うな!」

『オレとお前を一緒にするな!』


 ブラコンについて否定はしない。

 でも、夏緋先輩には言われたくない。

 もっと的確な考察やアドバイスが貰えると思っていたのに、期待していたのと違う。

 口を尖らせて反論するかどうか迷っていると、夏緋先輩がゆっくりと話し始めた。


『お前の兄にとって二人の関係は、誰にも口を出して欲しくないことなのかもな。お前は心配かもしれないが、櫻井春樹に任せて黙って見守った方がいいんじゃないか』


 期待外れだとがっかりしていたが、それは早計だったようで、ちゃんとした意見をくれた。

 そして、それは凄く納得出来るものだった。


「そっか……」


 確かにそうかもしれない。

 余計なお世話だったのかも。


「そうですね、そうします」

『ああ』


 心が大分楽になり、安堵の溜息が出た。

 焦らないで兄の様子を見守り、機会を見て仲直りをしよう。


『兄貴の方はオレが見張ってなんとかする。今の状態で兄貴が関わっていったら、碌なことにならないからな』

「そうですね。お願いします!」

『全く……こっちはこっちで親に……特に母親にバレたら洒落にならないことになりそうだから、早く諦めさせたいんだがな』

「そうなんですか?」


 青桐家の事情……か。

 大変そうだな。

 両親についてはこれから先のことを考えると大事な問題だから気苦労も多いだろう。


『あの人は世間体を気にする。バレたらどうなるか。まず間違いなく華四季園にはいられなくなるだろうな』

「え、転校させられるってことですか?」

『ああ。恐らく海外に』

「そこまで!?」


 ゲームには登場しなかったのでどんな両親か分からないが、会長と夏緋先輩をこの世に生み出したのだから凄い人達に違いない。


「そういえば、夏緋先輩は留学していたんですよね? 何かやらかしてしまったんですか?」

『お前な……。まあ、ある意味そうかもしれない。留学が自分の意思ではなかったことは確かだ』

「そうなんですか……」


 何か色々あったんだろうな。

 だから余計に会長のことが心配なのだろう。


『まあ、なるようにしかならないが最善はつくそう』

「はい!」


 夏緋先輩の言う通りだ。

 本当になるようにしかならないが、自分が出来ることをやろう。


『……もう、大丈夫か?』


 穏やかな声が耳に入ってきた。

 心配してくれていたようだ。

 話している間もわざとふざけて和ませてくれていた気がする。

 恐ろしいイケメン力だ。


「はい、ありがとうございました! 夏緋先輩のおかげでダムは決壊せずにすみました。やっぱり、持つべきものは同じブラコンの友ですね!」

『お前と一緒にするなと言っているだろう!』

「はははっ」


 電話をかけた時とは違い、切る時は笑っていることができた。

 本当に夏緋先輩のおかげで元気になった。

 兄のことを考えると少し苦しくなるけど、なんとかやれると思う。

 早く兄達が励んで、僕が傍観する楽しい日常を取り戻したい。


「大丈夫、頑張ろう」


 無意識に呟いていた。

 いや、無理に頑張るのは良くないかもしれない。

 今回のように、余計なお世話をしてしまうかもしれない。

 夏緋親分に相談しながら程々に頑張ろう、そう思った。


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