リブラ帝国戦線3
サジタリア王国の南部に位置するリブラ帝国は現在四つの国と戦争をしていた。
一つはリブラ帝国の南東部の半島を領土とするキレナイ公国。それと西部に位置するバルゲン王国、ルフト候国、トエデュナ王国である。
元々仲の悪いこれらはリブラ帝国から領土を得るべく同盟を結び侵攻したのである。キレナイ公国2万、三国からそれぞれ4000の3万2000の軍勢に対するのは軍人8000、徴兵された民間人1万の1万8000だった。おおよそ半数程度のリブラ帝国はサジタリア王国に救援を求めた。しかし、サジタリア王国はスコルピオン帝国への侵攻を優先し軍隊の派遣は行わなかったが勇者ハバト・マケイラを援軍として送った。そして、ハバト・マケイラは呆気なく戦線が崩壊したキレナイ公国戦線に配置されたが三日間の戦闘により重傷を負い後方に撤退した。
これによりキレナイ公国は侵攻を再開したがハバトとジェーンの活躍により戦力を半減されたキレナイ公国の進軍速度はとても遅かった。それでも、キレナイ公国戦線に全軍5000しか配置されていない為敵の侵攻を防ぐには至らなかった。
一方、西方戦線は互角の戦いが続いていた。隣国三国連合軍1万2000に対して1万と兵数ではほぼ互角の上リブラ帝国の軍人8000が全て動員されていた。その為キレナイ公国戦線とは違い戦線に動きはなかった。加えて、キレナイ公国が運用するような特殊兵器は存在していない事も影響しておりお互い歩兵のみの戦いとなっていた。
「大公、リブラ帝国が要求を吞みました」
「そうか」
キレナイ公国の首都キレナイは公国が都市国家だった頃から領地となっていた。その都市に存在する大公の館にてキレナイ公国の大公が部下から報告を受けていた。
「マカリを含む周辺地域の割譲。リブラ湾の漁業権の優先。賠償金の支払い……。他にも細かい事はありますが全て吞むそうです」
「ふむ、意外とリブラ帝国の衰退は早いようだな」
大公は部下からの報告にそう呟いた。キレナイ公国がリブラ帝国に要求した内容を全て呑むとは思っとらず侵攻しつつ落としどころを探す予定だった。しかし、結果はキレナイ公国の要求を全て呑むという結果だった。この時、マカリは陥落したばかりだったがそれでも早いと感じた。
「どうしますか?」
「マカリ周辺以外からは撤退させろ。こちらは約束通り西方の国々への支援は取りやめる。しばらくはリブラ帝国に圧力をかけるだけで利益になるだろうからな」
大公はそう言うと口角を上げるのだった。




