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出発

「カズトさん。ありがとうございました」


 魔王軍の幹部、魔性のクレイナスとの戦闘から3日が経過した。あれからクレイナスが出したと思わしきゾンビは消えていた。しかし、噛まれたりしてゾンビになった者は消えなかった。俺は村に降りてそう言った者達を倒していきこれ以上の被害の拡大を防いだ。

 その結果判明したことは村人は全滅し、廃村となったことだ。幸い被害はこの村だけのようでゾンビは全て村の中にいたから全て駆除出来たとは思う。

 マグカルドとリーンはその間死んでしまった子供達の埋葬を行っていた。火葬してから孤児院の近くにある墓に骨を納めていた。ゾンビやスケルトンが出る世界だ。土葬では直ぐに復活してしまうらしい。

 それと、ナタリーは朝になると漸く起きた。事態を把握したときはとても驚いていたな。まぁ、自分を眠らせることが出来るなんて夢にも思わなかったのだろう。実際俺もクレイナスに聞くまでは半信半疑だったからな。

 そして、今日俺達は村を出る。元々一泊の予定だったが2日も延びてしまったからな。


「これからどうするんだ?」

「このままここで孤児院を続けて行こうと思ってますが……、最悪の場合は王都に行こうと考えています。知人を頼れば仕事も見つかるでしょうし」

「それがいいかもな。ここは少し不便だし何より村はなくなってしまったんだ。今後は生活するのも厳しくなるだろうからな」


 俺達を見送るために降りてきたマグカルドとリーンと向き合いながら話す。昨日までずっと悲しみにくれていたリーンも少し暗い表情をしているが俺に笑みを浮かべてくれた。


「カズトさん……。ありがとうございました」

「……いや、お礼は良いよ。仕方ないとはいえ子供を殺したことは代わりないのだから」

「そんなことないです。あのままだったら私は死んでいました。それに、カズトさんのおかげで被害を少なくできたのです。だからお礼を言わせてください。本当に、ありがとうございました」

「……」


 リーンの言葉に俺は自然と目を細める。この子はとても強い子だ。家族だった子供達を失った悲しみを克服しようとしている。

 ……もし、ナタリーやレナードさんが死んだとき俺は正気でいられるだろうか?俺に好意を持ってくれたレナードさん。体を重ね、今では心強い相棒となったナタリー。この世界に来てから得ることのできた素晴らしい彼女達の死を、俺は受け入れることが出来るのだろうか……?

 いや、今そんな事を考えるべきではないな。将来の事なんて深く考えても分からないんだから。


「それじゃ、そろそろ行くよ」

「もし、戻ってくるときは顔を見せに来てください。院長先生と一緒に待ってますから」

「ああ、そのときは立ち寄らせて貰おう」


 リーンとマグカルドに見送られながら俺とナタリーは西へと歩き出すのだった。


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