魔王軍幹部との死闘・三
クレイナスの手刀による突きを刀で弾きつつ体を動かす事で回避する。クレイナスの突きは俺の後ろにあった木とぶつかると同時に触れた個所を中心に爆砕させた。それだけで当たれば俺の肉体を粉々に砕けるであろう威力を持っている事を思い知らされる。
クレイナスとの戦闘は既に数十分が続いている。俺の攻撃はクレイナスの強力な身体能力の前に弾かれ相手の魔法、肉弾戦は俺を殺すには充分な必殺の威力を誇っている。魔王軍の幹部というだけはある実力に俺は少しずつ消耗していた。
刀以外での攻撃もできればいいのかもしれないが急いでいたせいもあって銃器類は全て部屋の中だ。今から取りに行ってもその隙をついて俺は殺されるだろう。そうなれば本末転倒だ。
「ふふ、意外と粘りますねぇ。勇者でもないのにここまで戦える人間がいるとは思いませんでしたよ。貴方、その事を誇っていいのですよ?」
「は、こんな状況で何を誇れというのやら。誇れと言うのならお前を倒してからだな」
「あら~?それなら一生誇る事は出来ませんよ~?」
クレイナスは馬鹿にしたように笑いながらこちらを見てくる。実際実力差というか能力の差は歴然だ。幸いクレイナスは能力はあるが技量は無いようでどこか能力に振り回されている感じがする。その為ここまで戦う事が出来ていた。
俺が刀を握りクレイナスの攻撃に備えた時だった。
「リーヴス!」
「……あらぁ?」
突然聞こえてきた言葉にクレイナスは驚きで目を見開き声の方を見る。俺もそちらを向けば孤児院の中から出てきたマグカルドがいた。どうやら外の様子を見に来たようだな。
マグカルドはクレイナスを睨みつけながら手に持った杖を突き付けた。
「リーヴス……。これは貴方の仕業なの?」
「ええ、そうですよ~。院長先生」
「……リーヴス、いえ。クレイナス!貴方を見逃すわけにはいきません!」
「ふふ、最弱の勇者と言われた貴方に勝てますかぁ?」
マグカルドの強い意志にクレイナスは小馬鹿にしたように笑っている。しかし、それは俺にとって好都合だ。
クレイナスの隙をつく形で刀を振り下ろす。マグカルドは俺とは反対方向にある為必然的に俺に背中を向ける形になっていた。
しかし……
「くっ!?」
「ふふ、私に奇襲は聞きませんよ~?」
クレイナスの背中を覆うように黒い球体がまとわりつき俺の攻撃を防いだ。そしてそんな奇襲を失敗した俺にくすくすとクレイナスが笑っていた。
そして、その球体から再び棘が出てくる。俺は後方に大きく下がる事で回避するがあと一歩遅ければ突き刺さっていただろう。
「あらあら。決められなかったようですね」
「ちっ!」
俺は舌打ちをして刀を構えるとクレイナスを睨みつけた。




