散策・結
「まずは一つ目、貴方は何者だ?田舎の孤児院の院長としては不必要な実力を持っているようだが」
「やはりそこを聞いてきますか……」
マグカルドはある程度は想定していたのかあまり驚かずに話を始めた。
「……60年以上前にサジタリア王国には一人の少女が居ました。60年前のサジタリア王国は今とは違い周辺国との戦争に明け暮れていました」
内容は遥か昔の話だった。この話をするマグカルドの瞳には悲しみが宿っていた。
「領土は今よりも広かったとは言え敵は領土内部まで略奪や侵略が行わえていました。その為サジタリア王国に本当に安全な場所はありませんでした。そんな状況です。勇者の存在はとても重要な物でした。しかし、当時サジタリア王国には勇者となれる存在はいませんでした。勇者がどうやって選ばれるのか、知っていますか?」
「神から選ばれる、という事しか知らないな」
かつてベアード砦にいた頃にナタリーの襲撃を受けた際にレナードさんから聞いた話だ。だがそれ以上の事は知らないし今まで気にも留めていなかったからな。
「正確には神の一人、アポロン神によって任命されます。しかし、知っての通りアポロン神はかなりいい加減な神です。その為たまにとんでもない人を勇者に任命する事もあります。……三代目勇者の一人、カロスの時がまさにそれでした。カロスは得た勇者の力を自らの欲望の為に使いました。結果当時カロスを自国の勇者にしたジェミナイ連邦は大きく力を落としました」
「……成程」
サジタリア王国の王都と同じ名前の神か……。偶然だとは思うが勇者がそうやって選ばれていたのか。
「そう言えば今の勇者ハバト・マケイラは初代勇者の子孫だろ?ナタリーもそうだったって話していたし……」
「そこがアポロン神のいい加減な性格を表しています。詳しくは分かりませんが任命する仕事を半分の労力で済ますために二つは勇者の子孫から選んでいる、というのが通説となっています」
「マジか……。だとすると大分メンドクサイ性格をしているなその神は」
「ええ、私もそう思っています。そして、そのいい加減なせいである一人の少女が勇者に選ばれることになりました。その勇者の名前をフィオニー・マグカルドと言います。60年以上前に唐突に勇者に選ばれた農民の娘・・・・です」




