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エミリー・フラン・サジタリア

「初めまして、私はサジタリア王国第二王女エミリー・フラン・サジタリアといいます」

「……鈴木和人です」


 俺は目の前の少女、サジタリア王国の王女と面会していた。場所は女将さんが用意してくれた宿の一室。周囲にはまだ誰も泊まっていないとの事だが人避けの意味も兼ねて食堂で酒盛りが行われている。因みにその資金は王女のポケットマネーらしい。王都は今何処の店も開いていなかったため王女の名前と大金を払う事で食材を手に入れたらしい。確実に一般の人では手に入らない金がさらっと動いたがそこに誰も突っ込んではいなかった。因みにナタリーはそっちに行ってしまったため俺は一人で王女とその護衛の計三名がこの部屋にいる。


「さて、今回尋ねさせてもらったのは今回、反乱の鎮圧に貢献した和人さんを一目見ておきたかったのです」


 王女はそう言って笑みを浮かべるがそれだけ(・・・・)の為に来るわけがない。それだけの為にここまで人払いを済ませる必要はない。宿屋の前で顔を見てお礼を言うなりするだけで十分なのだから。

 故にこの王女の話した内容はあくまで建前。本題は別にあると見た方がよさそうだな。


「……それで、和人さんは貴族というものに興味はありませんか?」

「貴族、ですか。あまり興味はないですね」

「それは残念です。和人さんなら侯爵の地位を与えても問題ないくらいの実力を持っていますのに……」

「単純な武力で貴族の地位が手に入るのならこの国は貴族だらけでしょうね」

「勿論貴族になるのに必要な条件はほかにもあります。ですが和人さんはその条件もクリアしています。貴方が望むのであれば先ずは男爵からですが直ぐに用意できますよ?」


 成程、王女は俺にこの国にとどまって欲しいのか。貴族になれば迂闊に他国に行くことは出来ない。何か工作でもするのではないかとその国に思われるだろうし最悪の場合戦争の原因になるだろう。俺にとってそれはデメリットしかなかった。その為俺の答えは決まっていた。


「いえ、お断りさせていただきます。自分は世界中を旅することが好きなので一つの国に縛られるのは嫌なんですよ」

「そうなんですか?ですが貴族になれば様々な恩恵がありますよ?」


 王女はそう言って食い下がって来るが正直どうでもいい。ぶっちゃけこれ以上話しても無意味なだけだろうな。そう思い俺は直ぐに行動に移した。


「王女様、私はサジタリア王国という国に愛国心などありませんし貴族になりたいとも思っていません。自分にとってはいい迷惑です」

「……」


 俺の言葉に王女はうつむき黙った。どれくらい沈黙していたのかは分からなかったがやがて王女は顔を上げた。


「……分かりました。本日は大変失礼いたしました」


 王女はこれ以上の勧誘は無意味と思った様で立ち上がり軽く頭を下げて部屋の出口に向かっていく。どうやら無事に王女からの勧誘を捌けたようだ。しかし、王女は扉を開ける前に立ち止まりこちらに声をかけてきた。


「あ、そうでした。和人さん、もし次にサジタリア王国にいらっしゃった時には是非教えてください。日出国(・・・)の事について話しましょう」

「っ!?」


 その言葉に驚く俺を見て笑みを浮かべる王女は扉を開け部屋の外へと出ていくのだった。


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