王都動乱・終
なぜ……、こんな事になってしまったんだ……。
薄れゆく意識の中俺は茫然とそんなことを考えていた。
6年に渡り入念な準備をして実行した反乱は実質一人の男によって失敗した。俺と同じ転生者と思われる男……。俺の誘いを断り愚かな国家についた奴。
殺してやりたいが四肢を失った今の俺では無理だ。
王国騎士団団長代理ミュレイによって右腕を切り落とされその隙に一気に接近したアイツに両足を切断された。残った左腕で魔法を発動しようとしたが後方で魔法を使っている女に俺の腕より太い黒い棘を地面から出現させて根元からえぐり取られた。意識を保っているのがやっとで周囲の確認すらできない。
一体俺が何をしたというのか……。この国をより良い道に進ませたくてこの反乱を起こしたというのに……。アイツも何故国についたんだ……。日本に住んでいたなら分かる筈だ。治安の良い街になんでも手に入る素晴らしい環境。自衛隊と言う平和を打ち破る軍隊さえなければまさに理想郷と言えた。俺はその理想郷をこの国でも作りたかったのに……。
再び死ぬ俺がどうなるのか、それは分からない。だけどどうせ、次に生まれ変われるなら……、もう一度、あの日本に……。
「あーあ。死んじゃったよ」
一人の男がふかふかのソファに体を預けながらそう言った。両隣に絶世の美女を侍らせ彼の後方にデカい水槽がある様はまるでマフィアのボスを思い浮かばせる光景だった。
そんな男は今まで見ていた画面にもう一度目を向ける。そこには彼が転生させた男が四肢を失った姿で死んでいた。彼にとってはどうでもいい存在だが自分が関わった男が死にそうという事で急遽覗くことにしたのだ。男の死に彼は少し悲し気にしていた。
「アポロン様、最高神ゼウス様がお呼びです」
「へ?親父が!?直ぐに行くよ!」
しかし、自らの父親の名前が出てくると表情は笑顔になりその場を離れていった。既に彼、アポロンの頭の中には死んでいった男の事などなくなっており男の魂は管理者に忘れられたことにより転生も出来ず永遠に世界の狭間を彷徨う事となるのだった。




