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ベアード砦

話を再構成しました。

 俺が救った形になったウィルトニアさんと共にベアード砦を目指す。ベアード砦はここから数時間でつく距離にあるらしい。

 それと、ウィルトニアさんにはありのままを伝えた。当初こそ半信半疑だったが俺が双眼鏡や銃を見せると一応の納得はしてくれた。……本来ならばこう言う事は言わない方が良いかもしれないが記憶喪失というには状況的に怪しすぎるし適当に言えば確実にボロが出そうだからな。


「そう言う事ならこの周辺を少しお教えしましょう」


 ウィルトニアさんは意外と優しかった。この場合は騙されやすいといえばいいのか……。とにかくウィルトニアさんから教えてもらった結果様々な事を知ることが出来た。

 まず、山賊の言っていた通りここはサジタリア王国とレオル帝国の国境線に位置しており今はサジタリア王国領にいる事。サジタリア王国はかつては周辺諸国を飲み込むほどの強大な力を持った国だったが500年前から衰退しており現在はサジタリア王国から分離独立したレオル帝国によって少しずつ押し込まれているらしい。サジタリア王国はレオル帝国よりも国力、軍事力、経済力とあらゆる面で劣っておりレオル帝国が本気で攻めてくれば滅亡は免れないらしい。しかし、レオル帝国は三代前から愚帝続きで国力をすり減らし続けており更に国境を作っている山脈により広い国境線のわりに進行できるルートが限られている事、北と東から圧迫を受けている事が滅亡を免れているらしい。

 特に北の脅威、魔王は厄介なようだ。


「魔王は1000年前に出現してから一度も現れた事がないんです。……魔王を名乗る者なら大量に現れましたが」

「ん?何か違うのか?」

「はい、魔王は圧倒的な力を保有しています。それを基準として魔王か否かを決めているのです」

「つまり魔王になれなかった者は基準値に満たなかったという訳か」

「その通りです。……ですが、今の魔王が基準値に達しているかは我々では判断できません。かつては亜人(デミヒューマン)と呼ばれる者たちが判断していたのですが魔王出現とともに周辺の亜人(デミヒューマン)は皆魔王の下に集ってしまいまして……」

「成程ね」


 だがそうなると魔王としての基準値を満たしている可能性があるな。亜人達が従うという事はそう言う事だろうし。というかサジタリア王国は大丈夫なのか?


「我が国は幸い赤道山脈によって隔てられているので直接の脅威は今のところ少ないですね。稀に山脈を超えて襲ってくることがありますが稀ですし」

「そうなると先ほどウィルトニアさんを襲っていた奴らはその魔王の手先か?」

「レナードで構いませんよ。そうですね……、あれは魔王軍の尖兵であるゴブリンだと思います」

「ゴブリンね……。そう言えばウィ……、レナードさんは何故レオル帝国に?」

「呼ばれた、というより罠にはめられてしまいまして……」


 話によるとレオル帝国がサジタリア王国と和平を結びたいと言ってきたらしい。魔王軍に備えるために西側の脅威を取り除いておきたいとの事でサジタリア王国はこれを喜び外交官を向かわせたが奇襲され外交官を逃がすためにレナードさんが殿となっていたらしい。そして十分に時間を稼ぎ逃げている途中にゴブリンの襲撃を受けた、と。レオル帝国の愚行は失笑もんだな。こんなだまし討ちをして何がしたいのやら……。

 そんな風に話していると漸くベアード砦に到着した。ベアード砦は石造りで出来た立派な要塞だった。駐在しているのは三千ほどでそのすべてが東部辺境騎士団の団員らしい。


「団長!ご無事でしたか!」

「ええ、こちらの方のおかげで無事に戻ってこれました」


 そう言ってレナードさんが俺を紹介する。団員たちは次々と俺にお礼を言ってくるがこの様子をみる限り部下には慕われているようだ。


「それで、和人さんはこの後はどうする予定なのですか?」

「特に決めてはいないんだよな。旅はしてみたいと思っているけど」


 ずっと施設に閉じ込められていた関係から知識だけは大量に持っているがそこに経験はない。だから俺は様々な事を経験してみたいと思っている。とはいえこの状況になるなんて想定していなかったから全く予定は決まってないけどな。


「それなら暫くはここに泊まっていかれてはどうですか?知識ならいろいろと教えることが出来ますしじっくりと目的地を決めてから動いても良いと思います」

「そうだな……。それじゃ好意に甘えさせてもらおうかな」

「ふふ、それは良かったですわ」


 レナードさんはそう言って笑みを浮かべる。

 こうして俺はベアード砦への滞在が決まり暫くの間ご厄介になるのだった。


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