アレフ
「ふぅ」
サジタリア王国王都アポロンの北東に位置する交易都市アレフ。ここは北部から流れる邪な物を王都から守る機能も有している。レオル帝国がベアード砦を抜きサジタリア王国内部に侵攻してきた際にはアレフは前線基地及び最終防衛拠点として機能する。今まで実際に起きた事はないがもし起きたとしたらサジタリア王国存亡の危機といえるだろう。
さて、ベアード砦を出て世界巡りの旅に出た鈴木和人はこのアレフに来ていた。途中で襲い掛かってきた魔物や盗賊を蹴散らしながら進む和人は初めての都市に気疲れを起こしていた。万を超える人が戦場でもないのにいるのは経験がなく和人は人込みに酔ってしまっていたのだ。
慌てて宿を借り部屋の中で体を休ませる和人。簡素なベッドに体を投げだし何をするわけでもなく天井をただ眺める。外からは都市の喧騒が聞こえており薄壁では和人を都市の人込みからは完全に解消してはくれなかった。
「……まさか、人込みがここまでキツイなんて……。今後は都市を避けるように進むしかないか」
今後の予定を立てているとコンコンと、和人の部屋の扉をノックする音が聞こえてきた。宿の者ではない。気配からそう感じた和人は手に入れたばかりの短刀を手に持ちゆっくりと扉に近づく。
「……」
「……失礼。私」
「っ!?」
扉にゆっくりと近づく和人の後ろから突然話しかけられる。ここには和人しかいないはずなのに。気付けば和人は後ろに向かって短刀を投げていた。投擲術も仕込まれた和人から放たれた短刀はブレなく後方に進み金属同士が奏でる衝突音と共に弾かれ地面へと落ちた。そしてそこで初めて和人は声の主の正体に気付いた。
「お前は……、ナタリー?」
「そう。久しぶり?こんにちは?」
ここにはいないはずのレオル帝国の勇者ナタリー・ダークネスの登場に和人は驚きナタリーは和人の驚きに首を傾げるのみだった。




