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ベアード砦攻防戦1

「弓兵は壁の上に立て!槍兵は弓兵の護衛だ!それ以外は城門を囲むように地上で待機!」


 壁の上からレナードさんの声が聞こえてくる。どうやら陣頭指揮を執っているらしい。俺も壁に登り魔王軍の姿を見る。確かに魔王軍と思われる軍勢がこちらに向かってきている。前回のレオル帝国軍五千もそれなりの規模だったが三万という軍勢は精神的に来るものがある。周りを見れば顔を青くしている騎士の姿もある。だが流石はレナードさん配下の騎士か。顔を青くしつつも逃げ出す者は皆無だった。


「ゴブリン?スケルトン?それともオーク?」


 ふと、後ろから声が聞こえてくる。後ろを振り向けば地下牢を出てきてからずっと後を付いてきたナタリー・ダークネスがいた。恐らく敵兵を聞いているのだろうが……、魔王軍を見るのはこれが初めてだから区別なんてつかないぞ。


「さあな。自分で確認したらどうだ?」

「……目から鱗」


 それだけ呟くとナタリー・ダークネスは初めて俺の前に出た。魔王軍を見ているようだが目の周りが薄っすらと光っている事から魔法を使用していると思われる。


「……和人さん。本当に大丈夫なのですか?」

「正直半信半疑だがここまで来た以上信じるしかないだろ」

「……最悪の場合を想定して撤退する準備は済ませています」

「分かった」


 レナードさんも一騎士団を率いる身。ただの憶測を信じず最悪も想定するか。


「……敵、ゴブリン。後は将と思われるオーガ。だけ」

「事前の偵察通りか。そのオーガ?という奴はどのくらい強い?」

「少なくともゴブリンを瞬殺出来る実力は持っています」


 レナードさんの答えに俺は渋い顔をする。一体だけとは言えそんなのがいるのかよ。城門どころか城壁すら破壊してきそうだな。そう思っているとナタリー・ダークネスがフルフルと首を左右に振る。


「違う。多分普通のとは、違う」

「それって、まさか……!」

「多分十二将の一人」

「十二将?なんだそりゃ?」

「魔王軍の幹部。十二人いる。全員化け物。勇者と、ほぼ互角?接戦?そんな感じ」

「マジか。厄介だな」


 何でそんなのがこんな砦に向かってくるんだよ。

 そう思いつつ魔王軍の様子を伺っていると矢の届かない範囲で魔王軍は止まった。更に魔王軍の中核を成すゴブリンよりもでかい個体が足音を立てて軍の前に出てきた。恐らくあれがオーガという奴なんだろうな。


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