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神の試練~ダンジョン攻略①~

「それじゃ早速始めようか」


 そう言うとアポロンは右手を鳴らす。すると白一色の空間は変わり石造りの洞窟へと変わる。三方向は壁で覆われており一か所だけ奥へと続く道があった。しかし、松明が一定間隔で備え付けられているが遠くまで見渡す事は出来なかった。


「見ての通りここは地下100階のダンジョンだよ。君の為に俺が特別に作ったダンジョンだ。こういった通路と大きな部屋で構成されているよ。最初のこの部屋以外には魔物がいっぱいいるよ。それらを倒すも倒さないも自由。ただし、次の階層に行くにはそこを守っているボスを倒さないといけない。ボスはとても強いよ。大体10層後の魔物並みの力と考えてもらえればいいよ」

「成程。武器はあるのか?」

「勿論。部屋に宝箱を置いてあるからそこから手に入れてね。因みに、宝箱に偽装した罠や魔物の場合もあるから気を付けてね~」

「分かった」


 そう言って俺は歩き始めた。後ろでアポロンが「頑張ってね~」と手を振っているのが分かる。



 ダンジョンは石造りの洞窟の様で幅は俺が手を伸ばした状態で二人分くらい余裕で入れそうな広さで高さも5メートルは余裕でありそうな高さだ。この通路で戦闘になったとしても十分に対応できるだろう。

 警戒しながら進んでいくと道は3つに分かれた。どれも奥の方までは見る事が出来ない。


「入るまでは分からないという事か」


 そう思った俺は右端の通路へと進路を決めた。そして、通路をくぐった時だった。突然後ろの道が壁で覆われ少し離れた場所の天井から鬼の如き魔物が現れた。あれは、オーガだな。ベアード砦で出会った最初の魔王軍幹部と同種のようだな。とは言えその時の奴よりも小柄ではあるが丸腰の俺にとっては楽観視できない相手だ。しかも相手はそれなりの巨体だ。脇を潜り抜ける事は難しそうだ。右手に持った棍棒がそれを補強している。序盤からいきなりピンチだ。


「ーーーーーッ!!!」


 オーガは奇声の如き雄たけびを上げて突進してくる。軽く地面が地響きを上げておりオーガの視線は俺に釘付けだった。少なくとも相手は俺は敵として認識しているという事だろう。それが分かっただけでもありがたいな。これで俺は魔物がいる限り気が抜けなくなったと言う訳だ。

 そんな事を考えているとオーガは右手を振り上げる。大きな隙だが1蹴りで抜けきる距離ではない。そうしているとオーガは俺めがけて棍棒を振り下ろしてくる。避けるのが難しいという程ではないが避けてもその衝撃は俺に向かってくるだろう。


「くっ!」

「ーー!!」


 棍棒を振り下ろすと同時に俺は地面に落ちていた石をオーガの目に当てる。オーガは突然の目の痛みで声を上げながら振り下ろした棍棒から手を放し目を抑える。その隙を突き俺はオーガの横を走りぬける。何処までも続く一本道だがやがて大きな部屋に出た。部屋には誰もおらず、奥の方に宝箱があった。


「さて、これが罠だったり魔物なら詰むが……」


 そう呟きながら宝箱を開ければ中には中型の剣が入っていた。両刃というよりも刀に近い曲刀だ。刀を使う俺に合わせた形なのか? いずれにしろこれで多少はまともに戦えるだろう。入って来た通路から物凄い勢いでオーガが来ているのが分かる。俺は気づかれないように入り口の横に立つと曲刀を構える。

 そして、オーガが部屋に入って来ると同時に俺は曲刀を横なぎに払い右足へと振り払った。硬い皮の感触が一瞬抵抗するもすぐに切れ、肉を切り裂いていく。骨に当たれば渾身の力で砕く様に切り裂くと残りの肉と皮を全てきり割いた。

 右足を失ったオーガは血を出汁ながら倒れ込み足の確認をしようとしている。その隙をつく形で背中の上に立つと心臓付近に狙いを定めて曲刀を真っすぐに突き刺す。オーガは激痛で絶叫を上げながら暴れ始めるが直ぐに曲刀の柄に足を置き体重を駆けながら蹴って上空に逃げる。更に深く刺さった事が止めとなったようで一瞬ビクンと動くとそのまま倒れ込んで起き上がる事は無かった。


「取り敢えずは最初の窮地を乗り越える事が出来たか……」


 俺はそう呟きながら改めてこのダンジョンが一筋縄ではいかない事を再認識させられるのだった。


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