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神との対話

「神、だと?」


 俺は胡散臭いホスト風の男、アポロンを改めてみる。白いタキシードを着こみ、イケメンなれど何処か人を不快にさせる笑みを浮かべている。両脇には絶世の美女と呼ぶにふさわしい女性たちがアポロンに抱き着く様に座っている。アポロン達が座る席などの内装もホストクラブを想像させる雰囲気であり本人のうさん臭さも相まって神には見えない。

 だが、この空間の主である事は間違いないのだろう。アポロンは座っているだけだが俺が挑んでも近づく前に殺される未来が浮かんでくる。いや、それしか浮かんでこない。気づけば汗を流し全神経を使って相手の動きを注視していた。

 そんな俺を見て何が可笑しいのかアポロンはけらけらと笑いだした。


「ハハハ、そんなに警戒しなくても良いよ。別に俺は君を殺そうとか排除しようとかって気持ちはないからさ」

「……それを信じろと?」

「信じないと先に進めないよ?」


 俺の言葉にアポロンは即答する。あいつは形なりにでも神として認めさせない限りこの状況を続けるのだろう。神と言えるかはともかく俺なんて簡単に殺せる上位者である事には変わりはない。今は相手の言うとおりにするのが吉と言えるか。


「お? 少しは信用する気になったみたいだね。では改めて言うよ。俺はアポロン。この世界、君の板世界で流行っている異世界を管理する神だ。よろしくね~」

「……」

「返事くらいしてほしいけどまぁいいか。早速本題に入らせてもらうよ。君にはこれから試練を受けてもらう」

「試練だと?」

「君は僕がこの世界に呼んだ人間じゃない。どうして君がこの世界に迷い込んだのかは知らないけど今の君ではこれから起こる戦争についていくのは難しいだろうね」

「それは理解しているつもりだ」


 俺は人間としては強いがこの世界ではそれもあまり通じない。何故なら肉体を簡単に強化できる身体強化という魔法が存在するからだ。それがクレイナスに劣勢になる原因となった。勿論、それ以外の魔法も脅威だ。吸血鬼たちとの戦いで俺は満身創痍になって辛勝した。数がもう少し多かったか実力が高ければ俺は死んでいただろう。


「君も自分の力不足を理解しているようだね。だからそんな君に神からのプレゼントさ。これから行う試練を見事勝ち抜き力を強化するといい。試練を乗り越えられない場合は即座に君の体に意識を戻させる。そうなれば力を効率よく強化できる機会は二度と現れないだろうね」

「……一つ聞かせろ。何故俺にここまでする? お前にとって俺はこの世界に現れた害虫程度であるはずだ。にもかかわらず何故助ける?」


 害虫への対応は駆除だ。追い払う事はあれど放置する事はないと言っていいだろう。そんな俺の疑問に対しアポロンは笑みを浮かべながらこう言った。


「この世界に来た人物の中で君はとても面白いからね。俺が最初にこの世界に呼んだあいつと同程度くらいには興味があるんだよ。君がこの世界でどんな物語を紡ぎ、影響を与えるのか。俺はそれを見てみたい。その為には君がこの世界で生きていける実力を付けて欲しいのさ」

「……そうか」


 アポロンにとって俺は害虫ではないという事か。それが分かっただけでも有益な情報だったかもな。少なくとも、こいつは俺を排除しようと動く事は無い。今のところはな。そうなれば俺が言うべき答えは決まっている。


「良いだろう。その試練、受けてやる」


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