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―ここは一体どこなのだろうか?


 俺は永遠に続くとも思える暗い空間を前にそう思ってしまった。ケラースの町で吸血鬼を相手に奮戦し、全員を打ち倒す事に成功したがその代償に体中に傷を負い意識を失ってしまった。そして、それから目を覚ましたと思ったらこの空間だ。ここには時間の感覚が分かる物がないからどれくらいの時間が経過しているのか分からないが確実に一日、二日は経過していると思っている。

 早く目を覚まさないといけないのにその手掛かりすら見つからない。きっと今頃ナタリーは心配しているだろう。意識を失う前に見えたナタリーは泣きそうになりながらこちらを見ていたからな。


「くそ、早くここから出ないと……!」 


 歩いても走っても続くこの空間はとても広い。壁はなく地面があるだけだ。地面も堅いが何処か柔らかい様な不思議な材質でここを何処か特定するには至っていない。

 そして、俺は最悪の想定も浮かんでいたが考えないようにしていた。しかし、こうも続いてくるとその想像が頭の中で大きくなっていく。


―本当はここは死後の世界で自分は既に死んでいるのにそれを受け入れられず、ずっとこのような空間にいるのではないか?


 そんな嫌な想像を振り払い出口があると信じて歩き続ける。今の俺にはそれしか道はないから。永遠に歩き、走り続ける。疲れを全くこの空間では体を動かす事は一種の気晴らしになっている。何も感じないこの空間では体が動いているという事実がとても貴重だからだ。


「……へぇ、心が折れてないんだ」

「っ!!!!????」


 俺はその言葉にとっさに構える。武器になりそうなものは持っていないが己の肉体でも十分に凶器になりえる。そんな俺に声をかけて来た者はくすくすと笑い始める。


「そんなに警戒しないでよ。話が出来ないじゃん」

「……こんなおかしな空間で話かけてくる。更に姿を見せない時点で怪しさ以外の何も感じない」

「……ああ、確かにそうだね。じゃぁ、姿を見せるよ」


 そう言うと俺の目の前の空間が突如割けそこから明るい空間が姿を現した。後方に魚が泳ぐ水槽が一面に広がり、その前には高級そうな椅子とテーブルに豪華な料理とアルコール。そしてそれらと共に両脇に美女を侍るホストのような人物がいた。

 ホスト風の男は俺をニヤニヤしながら見る。その顔は下品に嗤っているが整った顔立ちをしておりそれ相応の態度をすれば誰もが見惚れる整った顔をしていた。


「やぁ、初めまして。俺はアポロン。君がやってきた世界を管理している神様だよ」


 ホスト風の男、アポロンはそう自己紹介を行うのだった。


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