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対神聖ゼルビア帝国戦争Ⅺ~ライオネス街道野戦Ⅸ~

「もう! 一体どうなっているのさ!」


 王国騎士団団長代理ミュレイは思わずそう叫んだ。横から奇襲を行ってきた魔王軍を返り討ちにした王国騎士団だったが気づけばウィスター王太子と国王が率いていた軍勢は壊滅し両者ともに討ち取られたという報告が届て居てきた。更には三万の増援がやってきたのである。南以外を全て敵と対峙している状況となったサジタリア王国軍はまさに絶体絶命の窮地に立たされていると言えた。


「ミュレイ! このままではゼルビア帝国への包囲が崩されるぞ!」

「分かっているよ! 増援に来た敵を叩くよ!」


 副長のパルパロイの言葉にミュレイは即答すると指示を出す。経験豊富なパルパロイの言葉は団長代理に付いたミュレイのみならず彼女の父の団長をも助けてきたがこの状況ではパルパロイに言われるまでもなくやるべきことは分かっていた。


「右翼の後方支援部隊も敵と対峙するだろうし僕たちは一番端の敵を攻撃するよ!」


 ミュレイが選んだのは一番近い位置にいたイグラシアの部隊だった。ミュレイを先頭に王国騎士団は向かって行く。彼らと対峙していた魔王軍は散り散りに逃亡しておりそれが他の部隊の動きを阻害しており王国騎士団の動きを阻む部隊はいなかった。


「イグラシア様、敵が向かってきます。恐らく、王国騎士団かと」

「そうか」


 副官の言葉にイグラシアは興味なさげに返答するが対応はきちんと行った。


「前面にオーガを、両翼に我が臣下を置け。敵を中央で受け止め両翼で包囲して叩き潰す」

「はっ!」


 イグラシアの言葉に従い一万の軍勢はその陣形を変えていく。縦長の長方形の陣形は口を開く様に前衛を両翼に広げていく。まるで花が咲くかの如き見事な動きは指揮官の力のみならず兵たちの統率性と練度の高さを物語っていた。

 そんなイグラシアの軍勢に対してミュレイが選んだのは王道だが最も攻撃力がある三角型の陣形。自身を戦闘に敵とぶつかりまるで釘が板に刺さるように敵の中を突破できる。しかし、それは同時にミュレイの力が試される陣形でもある。先頭の一人が突破できなければ潰れるのはこちらであり途中でミュレイが倒れれば一気に勢いを失っていくだろう。要は先頭の一人の力が重要視される陣形だった。

 この戦いはまさに戦国時代の武田信玄と徳川家康が戦った三方ヶ原の戦いを思わせた。その戦いでは鶴翼というイグラシアが用いた陣形と同じ形の陣形を駆使した徳川家康はミュレイと似た魚鱗と呼ばれる陣形を用いた武田信玄に敗北していた。

 そして、この戦いもミュレイがオーガで形成された中央分前衛部隊を叩き潰した事により同じ経緯をたどるだろう。しかし、それはイグラシアが何も手を打たなかった場合である。


「……よし、広域幻術を使用する! 味方は注意せよ!」

「はっ!」


 イグラシアはそう言うと両腕に魔力を込め霧へと変化させると自身へと向かってくる王国騎士団に向かってそれをぶつけたのだった。それはミュレイに直撃しその周囲を赤黒い霧で覆う事になった。


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