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狙撃

~レオル帝国本陣守備兵~

「全く、たかがサジタリア王国の砦を落とすのに一万を必要とするとは。レオル帝国も落ちぶれたものだな」


 私はぐちぐちと皇帝陛下に聞かれたらヤバい事を言っている将軍のお傍にて守護をしている。現在我々はサジタリア王国のベアード砦まであと一日と言うところにまで迫ってきている。明日夜明けと共に出発し夜更け前に到着して明後日には攻撃をするというのが予定となっている。

 しかし、五千の兵を率いていたヒヒハト様は結局帰って来ず全滅したと風の噂で聞いた。確かベアード砦には二、三千の兵士かいなかったはずだ。それに加えてサジタリア王国は遥か北方のピスケス共和国に侵攻しているスコルピオン帝国を警戒して西部防衛に力を入れている。その為東部防衛はお粗末であると聞いている。ベアード砦にいる兵もレオル帝国の徴収した農民とほぼ同じ能力した保有していないという噂だ。そんな質、量ともに上回っているヒヒハト様が負ける、それも全滅するなんてあり得ない。サジタリア王国は勇者でも投入したのではないかというのが見解らしい。

 数日前にベアード砦に向かったはずの勇者様からの連絡もないが今は向かうしかない。


「俺としてはサジタリア王国よりも魔王をなんとかするべきだと思うのだがな……、そこのお前。何か飲み物を持ってこい」

「はっ!」


 将軍は愚痴を一旦止めて私に飲み物を持ってくるように命令してきた。私はそれを受けてその場を離れる。兵糧は本陣よりも後方にあるため持ってくるには急ぐ必要がある。

 その時だった。

 何かが破裂する大きな音が響いてきた。私は思わずその場に蹲る。敵襲か!?そう思いつつも心をわしづかみにされたような気持になっている私はその場を動くことができなかった。

 再び音が響く。一、二、三……。最初のも含めると四回音は響いた。どうやら音は収まったらしい。

 私は来た道を引き返し将軍の安否を確認する。飲み物はその後にでも持ってこよう。そう思っていたが 本陣に戻った私が目にしたのは頭部がなくなった将軍の遺体だった。周囲には同じように頭部を失っている三人の遺体があった。全員将軍を支えている参謀だ。

 私はここにきて先ほどの音が敵の攻撃であり一瞬にして我が軍の頭脳がやられたことを悟るのだった。


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