第六将イグラシア
新たに幹部となったアダリーシアは式典を終えて自分の矢化に戻る途中だった。日の当たる場所は避けて歩く彼女。”克服している”とは言え日光が苦手なのに代わりはなくあまり当たらないような動きで歩いていく。
「あーちゃん!」
そこへ、アダリーシアに声をかける者が現れた。その声を聴いて彼女はうんざりする。彼女を”あーちゃん”と呼び気安く話しかける人物は一人しかいなかった。
彼女は背中に衝撃を感じつつ倒れないように足に力を入れて踏ん張る。その突進を行った人物は彼女の細い腰に手を回し顔を背中に押し付けていた。そのままぐりぐりと頭を横に動かしていると流石に鬱陶しく感じた彼女によって鉄拳が振り下ろされた。
「ぴぎゃっ!?」
「何のようだイグラシア」
拳骨をくらい涙目の女性、イグラシアに彼女は冷めた目で見ながら問いかける。第六将となったイグラシアは浅黒い肌を持つドワーフの様な魔族だった。黒い髪をベリーショートで整え、どこか元気溢れる、快活な娘というイメージを醸し出している。
「もーう! 痛いじゃん!」
「いきなり抱き着くからだ」
「別にいいじゃん。これくらいスキンシップだよ、スキンシップくらいいいでしょ?」
「……」
イグラシアの言葉にアダリーシアは冷めた目で見る。彼女視点ではイグラシアと親しい間柄ではなかった。単純に親同士が仲が良かったからその関係でイグラシアの方から迫ってきていただけであった。
故に、イグラシアがこうしてベタベタしてくるのは鬱陶しく思っていたがそれを直接言っても止める事は無かったため半分諦めていた。
「……あーちゃん。私達、幹部になったね」
「ああ」
「私達は貴方のお父さんを殺した相手の捜索と抹殺が最初の仕事だって。サジタリア王国から出ないうちに始末しないといけないんだって」
「簡単だな」
「もう! あーちゃんはなんでこんな自信満々なのー!?」
イグラシアの言葉にアダリーシアは即答し、彼女はあり得ないとばかりに声を上げるのだった。




