一難去ってまた一難
「和人さん!今の音は……!」
戦闘の音を聞いてやってきたのだろう、レナードさんが慌てた様子で入って来た。そして一目見るなり部屋の惨状を見て絶句している。まぁ、結構暴れたしな。
俺を襲っていた痛みはナタリー?とか言う少女が気絶したと同時に消えた。どうやら少女が何かしら能力を使って痛みを与えていたようだな。
「何かこの少女が襲ってきてさ」
「え?……!嘘、でしょ……?」
「確かナタリー・ダークネスって名乗っていたよ」
「レオル帝国の勇者ですよ!まさか砦に侵入していたなんて……!」
ふと、ずっと疑問に思っていたことを思い出す。彼女は闇を司る勇者と言っていた。勇者と言うのはよくRPGでおなじみのあれだよな?魔王を倒す的なやつ。聞いてみるか。
「なぁ、レナードさん。勇者って……?」
「あ、はい。勇者と言うのは魔王を打ち倒した者たちの事です。彼らは神から力を与えられこの世界の守護をしています。……ですが、最近では自身が仕える国家の為に守るべき人々に剣を向けているのが現状です」
「となるとこの少女は」
「レオル帝国の命を受けてやってきたのでしょう。……ですがそうなると彼女だけ送られてきた可能性は低いですね。一緒に送られた兵がいるはずです。偵察隊を出さないと」
「サジタリア王国からの援軍とかはまだ来ないのか?」
「今は兵の再編中で到着にはあと数日かかるそうです」
「……そうなると敵の規模によっては撤退も考えないといけないな。流石に万とか来たら倒せる自信はない」
「そもそも勇者でもないのに軍勢を全滅できる方が可笑しいですが……」
レナードさんの的確な突っ込みに俺は苦笑した。




