建国と同盟における各国の状況4
「では諸君、これより定例会議を行う」
西方魔族連合帝都デモングラードの連合行政府の一室にて幹部を集めた定例会議が開始されていた。議題に上がる内容は様々であり今回は魔帝国と神聖ゼルビア帝国の件に関してだった。
司会とを務め、最終決定権を持つ連合皇帝ヴァン4世が幹部を見渡す。そんな彼の横には皇后であるナタリヤ・ヴロフヴィッツが優雅に座りお茶を飲んでいる。この場において最も最年長であり影響力を持つ彼女だが定例会議では毎回興味なさげに参加しているのみだった。故に定例会議にただ参加しているだけの彼女に話しかける人物はいなかった。
「議題は魔帝国に関してだ。知っての通り奴らは我らと同じ魔族、という事になっている。我らの本質は全く違うが一応共闘関係を築いてきた」
だが、と皇帝は続ける。
「今回の件は看過できない。魔帝国、魔国の後継国家を名乗る以上我らが国家を認める事はないだろう」
「とは言え距離があるから直ぐには攻めて来ないのでは?」
皇帝の言葉に意見を言ったのは幹部の一人であるラグーチンである。様々な魔法を使えることや人に取り入るのが上手く政界入りして僅か数年で幹部の一人にまでのし上がってきていた。能力主義の西方魔族連合でもここまで早く出世する人物はいなかったほどだ。
そんな彼だが幹部としてやっていくには充分な実力を持っている為他の者達はあっという間に出世した事への嫉妬はあれど不満は特になかった。
「直ぐに攻めて来ないというのは同意ですが私としては対応する事はたくさんあると思いますよ」
そんなラグーチンに答えたのはニコライと言う人物である。彼はノームと呼ばれる精霊族の族長であり西方魔族連合においてドーマと呼ばれる議会のトップに君臨していた。
「例えば工作員による妨害工作。種族間の対立を煽ったり暗殺や施設への攻撃など我が国の国力を削ぐ方法は存在します」
「それについては私から報告があります」
ニコライのたとえ話に続き話すのは西方魔族連合の諜報機関”魔族委員会”を指揮するリビヤである。好青年の様な顔立ちをしたその男は紙の束を持って立ち上がった。
「まず魔帝国の工作員と思われる者をこれまでに20名、捕縛しています。捕縛できずに殺害した数はその倍以上の52名。逃がしてしまった者も30名以上います。これらは今年に入ってからの数字であり特にこれらの半数は魔帝国建国前後に起こった出来事です」
「何か情報は得られたか?」
「残念ながら今のところは。拘束した20名中8名は死亡、4名は尋問薬の過剰投与により廃人になったため処分しました。残った8名に関してはこれから尋問する予定です」
「魔帝国の工作員をいくら尋問したところで大した情報は持っていないだろう。最終的に殺すような方向で尋問を行え」
「かしこまりました」
リビヤは自分の報告を終えると席に戻る。
その後も様々な報告が上がっていき会議は滞りなく進んでいった。そして、最後にヴァン4世が立ち上がって言う。
「魔帝国の介入はこれで明らかとなった。12大国を滅ぼした時はその力が我らに向けられるだろう。その時、我らは返り討ちにするだけの力を持っていなければいけない。各々、西方魔族連合の国力増大の為に心血を注げ!」
「「「はっ!」」」




