滅亡6
「隊長!領主館の制圧を完了しました!」
領主館の執務室に入って来たジュン・スギタニに対し部下であるオーパが敬礼しながら答えた。執務室はきれいな状態で残っているが部屋の中央にある領主が座っていた周辺は血だまりが出来ていた。その中心部には胸に大きな穴をあけたマッタンが仰向けに倒れており目を見開いたまま絶命していた。
「ご苦労。既に街も鎮圧が完了している。……ああ、ゾスマ侵攻軍も予定通りに陥落させたそうだ」
「そうですか。なら我らはこれより北上し帝都の制圧をすればいいのですね」
「そうだ。予定では魔王軍はレグルスに向かい殲滅しているころだ。それが終わればレオル帝国の主要都市は全て陥落、壊滅した事になる。そうなればレオル帝国という”国”は完全に消え去る」
ジュンはそう言うと執務室の机に腰かける。机には何かの書類が置いてあり死ぬ直前まで仕事を行っていた事を伺わせた。
「そう言えば隊長はエリダ様との仲はどうなってますか?そろそろ結婚する予定でしょ?」
「ああ、レオル帝国滅亡後に大々的に行われる予定だ。そうなれば確実に他の諸国に魔王軍との関係がバレる。まぁ、今の時点で大分怪しいがな」
「ちょっかいをかけてくる国なんていないでしょ。サジタリア王国はそれどころじゃないし二重帝国はそもそも外征する力がない。神聖アンドロメダ帝国は東にある国家と戦争中。国境を接する国がこれなんですよ?問題ないですよ。それ以外だとスコルピオン帝国とかがありそうですけどあの国はピスケス共和国との戦争で忙しいし間には魔王軍があります。態々突っ切ってまでこちらに来ようとはしませんよ」
「そうだと良いがな」
ジュンは暗く濁った瞳で天井を見ながらそう呟いた。”とあるきっかけ”からジュンは人間を信じていないし信頼もしないと決めている。人間なら何をしても可笑しくないという重いがある為ジュンは常に様々な事を想定し、対策を行っていた。それこそ、やりすぎと言われても可笑しくないくらいに……。




