滅亡2
「すぐにでも援軍の兵を出すのだ。それとここにも攻めてくる可能性もある。決して油断しないように……」
ゾスマへの援軍を決めようとした時だった。都市中に鐘の音が響く。東にある鐘が4回鳴らされた。4回の意味するものはタウラス公国が攻めてきたというもの。マッタンがこの都市の領主になってから初めて聞いたものでマッタンはまさに今自分が言った事が現実となった事で顔を真っ青にする。しかし、すぐに気を取り直すと大きな声で叫ぶ。
「げ、迎撃せよ!ゾスマへの援軍はそれからだ!」
「は、はっ!」
騎士が部屋を出ていくのと同時に都市が混乱に陥るのはほぼ同じタイミングであった。
ボラネデより東、タウラス公国領より侵攻する軍勢の姿があった。凡そ二万の軍勢は正規軍とは思えない装いをしていた。鎧や服装は統一性や規則性がなくまるで”それしか着るものがなかった”と言わんばかりであり武器も一応槍と剣を装備しているがそれも刃こぼれが起きていたり少し古くなっていたりしていた。
そんな彼らだがれっきとしたタウラス公国の兵士たちでありタウラス公国屈指の港町アルバデランの常備軍である。にもかかわらず装備がバラバラなのは一重にアルバデランが陸軍よりも海軍に力を入れているためである。アルバデランはタウラス公国全体で食べられている魚介類の7割の水揚げ量を担っておりその関係上、海上での護衛に重きを置かざるを追えなかったのである。
軍船や海上で使用する武器のメンテナンスは優先的に行われ陸軍は後回しにされつつあった。とは言えアルバデランと隣接する都市はゾスマとボラネデくらいだがそれらとつなぐ道は獣道程度しかない為大規模な侵攻は行えず小規模なら今のままで十分であったのだ。
しかし、それにより急遽公国行政府よりボラネデへの侵攻を命じられた彼らの士気は低かった。まともに戦えば自分たちが負けるのは分かっていたからである。とは言えそれは陸に限る話だ。海では、海軍での士気は高かった。何せ自分たちの訓練の成果を発揮できるのだから。故に彼らは陸軍と並行してボラネデへと向かっていた。自分たちなら出来ると信じて。
こうしてレオル帝国滅亡の間際に起こった【ボラネデ陸上海上戦】が幕を開ける事となった。




