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襲来3

「な、なんだこれはぁ!」


 レオル帝国皇帝ドリス・ハーテンス・ファーヴ・レオルは怒鳴り声をあげた。彼の視線の先には結界により防壁の下半分から煙が上に行かなくなり真っ黒な煙に包まれた帝都があった。悲鳴や怒声、苦しみの声が彼の耳に入って来るが全く気にしてはいない。彼にとって問題なのは”帝国であるレオル帝国の帝都が襲撃を受けている”と言う事でありそこに住む市民が苦しんでいようがどうでも良かった。


「今すぐ奴らを殺せぇ!」

「で、ですが城壁のバリスタは破壊され魔法を使える兵も帝都にいて今どうなっているのか……」

「ならば探し出して連れて来い!」


 ドリスは太い腹を揺らしながら怒り狂う。ここまで簡単にしてやられた状況に発狂しかけていたのである。とは言えこの状況の打開を図りたいのはこの場にいる全員が思っている事であり各々が独自に動き出していた。

 しかし、バリスタなどの抵抗できる物を破壊しつくした魔王軍がレオル帝国が動く事を良しとはしなかった。ドリスが近くにいた窓を吹き飛ばしながら竜人族が侵入してくる。その筆頭はエイザ=ルート・ガイデルギウス。魔王軍の第1将にしてこの竜騎士団を率いる総大将であった。

 エイザ=ルートは不可思議な紋様が描かれた剣を取り出すと横一線に払う。竜人族と言う最強の種族が放った一撃は彼女達と相対する者たちに剣風を起こす。


「何を……っ!」


 エイザ=ルートの謎の行動に不思議に思った一人の兵が前に出る。いや、出ようとした(・・・・・・)が出来なかった。彼はいきなりその場に倒れ込んだ。本人も何が起きたのか分からなかったが下半身が動かない事から立ち上がる事も出来なかった。やがて腹部に液体が触れる。妙に生暖かいそれに首だけを動かして後ろを除こうとする兵は驚愕の光景を目にした。

 自分のと思われる上半身を失った下半身がその場に立っていた。血を噴き出しながら周囲に血だまりを作っている。それに気づいた兵は悲鳴を上げようとしたが血を失った事による出血死で呆気なく死んでいった。

 それを見た誰もが逃げようとするが次の瞬間には同じように上半身と下半身を分断されその場に倒れ込んでいく。そして全員がまともな抵抗も出来ずにこの世から消えていった。

 今、この場で生き残っているのは皇帝であるドリスと侵攻してきた竜人族だけだった。


「まったく、ここまで弱いのか」


 エイザ=ルートは呆れたように呟くと剣をしまう。それはドリスを殺す気は無いという事か、それとも剣を用いずとも殺せるという合図なのかは恐怖で震えるドリスには分からなかった。ただ、一つだけ言えるのはエイザ=ルートはドリスを見て失望しているという事だ。侵入してきたエイザ=ルートの瞳はまるで汚物を見るように冷たくドリスは己の心臓をわしづかみにされている感覚を味わっていた。


「(これが……魔王軍!!)」

「さて、何時までもここに拘っている訳にはいかないからな。さっさと終わらせるか」


 恐怖で動けないドリスにゆっくりと近づくエイザ=ルート。ドリスは魔王軍の恐ろしさを今身をもって体験するのだった。










 数分後、竜人族は一斉に城を飛び出していった。全員が出るとワイバーンによる火炎で破壊と炎上が起こる。軍事大国の帝都は僅か十数分で死と焦土の都へと変貌するのだった。


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