吸血鬼軍団との死線・弐
「ごちゃごちゃ喋っていても仕方ねーだろ!さっさと殺そうぜ」
「マインラート、落ち着け」
俺を攻撃してきた奴、マインラートと言う男が俺とヴァープが話しているのを遮るように叫んだ。どうやらマインラートと言う奴はそこまで我慢強い方ではないようだ。ヴァープがなだめているのにも関わらずその目は俺の方しか向いていない。……これはある意味ではチャンスかもしれない。
「マインラートとか言ったか?さっさとかかって来いよ。それとも、腰抜けなのか?」
「ふ、ふざけるなァァァァァァァ!」
「っ!?馬鹿止せ!!」
マインラートが一直線に俺に突っ込んでくる。俺はそれを野球のボールを打つようなイメージで刀を振るう。マインラートはそれを体をひねる事で回避するが自然と自身の攻撃はキャンセルしなくてはならず一旦距離を取ろうとするがその暇を与えずに接近する。
突きの体勢を取り一気に突っ込む。狙うは心臓であり体制をまだ立て直せていないマインラートは回避もままならずに突き刺さる筈だった。しかし、俺の突きを防ぐように半透明の球体が出現しマインラートの前進を包み込んだ。岩すら切り裂ける俺の刀はまるで魔石で研ぐ前のように甲高い音を立ててはじき返された。
「マインラート!一人では無理だ!全員で行くぞ!総員!攻撃開始!」
この半透明の球体はヴァープが出した様だ。ヴァープはそれを解除すると全員に指示を出した。瞬間、マインラートには劣るがそれでも十分脅威と感じられる吸血鬼が一斉に襲いかかってきた。四方八方から剣や槍が突き出されてきて攻撃すらまともに出来なくなった。
さらに、後方から炎の球体や雷が向かってくる。よくよく観察すれば半数が後方で魔法攻撃を仕掛けてきている。どうやらヴァープが魔法による遠距離攻撃を行う者の指揮を担当しマインラート以下9名が俺に対して接近戦を展開するようだ。全員が実力者であり普通の人間なら数秒と持たないだろう。とは言え俺も似たような状況だ。防戦一方で攻撃がまともに出来ていない。
そして、そんな状況だったからだろうか?一人の吸血鬼が振り下ろして来た剣を受け止めた刀は半分から折れてしまった。地球から持ちこみ、水魔石で強化された俺の主武装にして相棒の刀が遂に限界に来たのだ。それを確認した吸血鬼たちは笑みを浮かべて一斉に向かってきた。




