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天使の降臨祭・メインイベント3

「よっしゃぁ!」


 参加者の一人、茶髪の髪をポニーテールでまとめた健康的な娘が一番最初に塔にたどり着く。4番という事もありステージの真ん中に建てられた塔に一番近かった結果である。そして、所々に飛び出ている突起を掴み昇っていく。それと同時に他の参加者もたどり着き上り始める。8人全員が登れる程に太い塔だがそれも頂点に近づけば近づくほど細くなっていき最後には一人がやってという細さになる。必然的に妨害などが行われる事になる。

 そんな中、一人だけその場を動かなかった参加者がいる。ナタリーだ。彼女だけは塔をぼぅ、と眺めているのみで動く気配すらない。彼女の参加者とは思えない様子に観客や司会は困惑する。この競技は最初にたどり着いた者が優勝者となるのだ。それなのに彼女は動こうともしないでただ見ているだけなのだ。


【あ、あのー。ナタリーさん?もう競技は始まっていますが……】

「ハンデ」

【え!?】

「ハンデ」

【え、いや……】

「ハンデ」

【わ、分かりました!もう言わなくて大丈夫です!】


 何度もハンデと繰り返すナタリーに司会の方が折れる形で止める。と、同時にハンデというナタリーに司会は困惑する。

 彼は十年以上このメインイベントの司会を行ってきた為様々な参加者を見てきた。中には彼女のようにハンデを与えると言った者はいたがここまでではなかった。


「(彼女はそこまで自信があるのか?という事は何か切り札を持っているという事か。面白くなりそうだ)」


 予想外の動きに最初こそ困惑した司会もすぐに笑みを浮かべる。彼はナタリーがこの後どう動くのか楽しみになってきていた。とは言え彼は司会である。解説者がいない以上その役目もやらねばならない為彼女のみに構っているわけにはいかない。司会はナタリーから視界を外し他の参加者を見る。

 他の参加者は速い者で塔の三分の一を進んでいる。今のところ一番進んでいるのは4番と2番だ。2番は4番の後ろにピッタリと張り付く彼女の茶髪のポニーテールを掴んで落とそうとしている。4番は髪を引っ張られる痛みに耐えつつ2番に向けて蹴りを放ったりしているがその隙をつく様に髪を引っ張って来る為落ちそうになったりしていて上手く振り放す事が出来ていなかった。

 半分くらいまで行けば立って歩く事が出来るようになるためそれまでに4番は振り払いと考えているが2番のせいで全く進めていなかった。


「何だよ!邪魔すんな!」

「これはそう言う事も許される競技ですよ?嫌なら振り払ってみたらどうですか?」


 4番の怒号に2番は口角を上げて反論する。しかし、そんな二人は全く進まなくなり1番と6番に次々と追い抜かれていった。


「あっ!」

「っ!」


 抜かされてしまった4番は悲鳴にも似た声を上げて2番は聞こえない程度の舌打ちをする。そして、2番は思いっ切り髪を引っ張りそれと同時に4番の前に出ようとしたが4番は抜かされたせいで力を込めておらず髪を引っ張られた事で体を大きくのけぞらせた。


「「あっ……」」


 その結果、支えを失った2番は体勢を崩し塔から落下する。更に髪を掴まれていた4番も巻き込まれる形で落下した。


【あーっと!2番と4番が落下!二人は失格です!残り6人となりました】


 司会の言葉に参加者たちは更に加速する。ライバルの減少は残った者達の士気を上げるにきっかけとなったのである。


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