天使の降臨祭・1日目晩
祭りで活気に湧くケラースを見てあまり1日目が終了した。俺達は運良く入る事が出来た店で夕食を食べている。周囲は飲兵衛の笑い声やカップルの話し声、親子のほほえましい会話などが聞こえてくる。俺もエールを飲みながら食事を楽しむ。地球の様な洗練された料理ではないが場の雰囲気が美味な調味料となって料理の味を後押ししてくれている。
「明日は何をするか……」
「それなら演劇を見に行くのはどうですか?いくつかの場所でやっていたはずですよ」
「演劇か……」
メイアちゃんの提案は嬉しいが態々祭りで見るものか?と思ってしまう。とは言え祭りならではの演劇もあるのかもしれない。
「特にこれがおすすめですよ!」
そう言って手渡してきたのは一枚のポスターだ。行う演劇について書かれてよく見るような恋愛ものだ。旅人が偶々立ち寄った町の裕福な娘と愛を育む物語だ。その内容に俺は苦笑する。明らかに意識されているとしか言いようがない演劇に俺はメイアちゃんを見る。メイアちゃんが俺に好意を持ってくれているのは分かっているが、強引だったとは言え確かな繋がりを持ったナタリーがいる。彼女の思いには……、決して答える事は出来ない。
だからこそ、彼女がキラキラした目で俺を見ている姿には少し罪悪感を持ってしまう。もし、彼女が告白をしてきたらきちんと断ろう。きちんと断った方が立ち直りも早いだろうし彼女とてナタリーと俺を見ているんだ。自分の思いが通じる事はないという事は分かっているだろう。
「……ああ、そうだな。見に行くか。ナタリーはどうだ?」
「行く」
「っ!ならその時は案内しますね!」
笑顔でそう答えるメイアちゃんに俺はハハ、と苦笑するのだった。




