天使の降臨祭・1日目昼
「出る」
「え?」
「出る」
「いや……」
「出る」
「分かった!分かったから詰め寄るな」
圧力をかけるように顔を近づけてくるナタリーに俺は肩を掴んで押し返す。何がナタリーをここまで必死にさせたのかは分からない。それでもナタリーの願いを叶えてあげたいと言う気持ちが湧いてくる。
「メイアちゃん。エントリーは何処で行えるんだ?」
「それならこっちです」
そう言ってメイアちゃんの案内のもとやってきたのは教会と思わしき建物だ。見るからに宗教関係の建物だが大丈夫なのだろうか?
「すいません。この日とが最終日のメインイベントにエントリーしたいそうです」
「かしこまりました。では名前を書いてください」
「ん……」
メイアちゃんは教会の前に張られた天幕の一つに向かうとナタリーのエントリー希望を話す。ナタリーはエントリーシートと思われる紙に自身の名前を書き始めるがふとナタリーの正体が露見しないか、という不安に駆られた。メイアちゃんは知らなかったようだがこの人たちもそうだとは限らない。今まで問題なかったのが不思議なくらいだ。
そう思って声をかけようとしたら名前の蘭には『ナタリー』とだけ書かれており受付の人はそれを受け取りエントリー完了だと告げている。どうやら名前だけでも問題はなかったようだな。今後はナタリーの姓は言わないようにした方が良いかもしれないな。
そんな風に一人で思っているとエントリー完了の証なのかバッジを持って戻って来る。仮面越しからでも分かるドヤ顔をするナタリー。
「優勝は確実」
「随分と余裕だな」
「当然」
一体何が彼女にここまでの自信を与えているのか分からないがナタリーがやる気になっているんだ。相棒としては応援するしかないだろうな。
メインイベントがどんな事をするのかは分からないが勇者であるナタリーなら大抵の事は楽々クリアできるだろうな。そこまで考えて彼女が自信にあふれている理由の一端を知れた気がした。




