登校
「ふぁ~・・・」
私は登校中に女子としてはややおしとやかさに欠ける大きめのあくびをした。
「どうしたんですか?そんな大きなあくびをして」
私のあくびは別に珍しいわけではないのだが、友達の理奈が聞いてきた。
「昨日机の上で寝ちゃってさ・・・そしたら3時30分に目が覚めちゃって」
「あーその時間は寝なおすと遅刻しちゃうし起きてるにはあとから辛い時間ですね」
プロフィールを読んできたのでは?と思うほどの私の感じたことが返ってきた。まぁそんなことはスルーしよう。
「それでまたゲームしてたんだけど」
「またEoPですか?好きですねー」
EoPとは今世界で流行っているオンラインゲームEden of Peaceのことだ。自分で1からパラメーターを作成、豊富な職、面白いチャットシステムやハードの種類の多さなどから絶大な人気を得ている。ちなみにEoPの中ではそれぞれのアバターにランキングがつけられる。そのランキングのトップ100に入る人たちを上位ランカーと呼ばれ、1人いるいないでクエストの成功率が大きく変わるほどの実力者と言われている。かくいう私もやりこみまくりのヘビープレイヤーで1週間前に99位にランクインしたのだ。
「何言ってるの理奈!EoPはすごいんだから!低用量なのにあの画質!それからあの自由度の高い戦闘シス・・・」
全部言い切る前に理奈に口をふさがれてしまった。
「あのゲームの良さは私もわかってます。そんなに大声を出すとばれてしまいますよ?」
私はハッとして周りに誰もいないことを確認して安心した。そう、私こと石原 花がとんでもないゲーマーであることは一部の女子以外は知らないのだ。
「私を含め花立会(花を立派な女の子にしようの会)は花のそういうところを心配しているのですよ」
いつのまにか花立会なんてものまでできてしまい、私としてはやや過保護ではないかと思う。たしかに花立会ができてからはいろいろ変わったこともあったので文句はいえないのだが。
「もう・・・そういえば今日転校生がくる日だっけ?」
「えぇ、そうですよ。たしか男子という噂ですが・・・花に近づこうものなら転校初日からブラックリスト入りですよ・・・」
そのブラックな理奈の発言はスルーして私たちは学校へ向かった。