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散文集

ずっと昔に

作者:

ずっと昔に、ひとりの馬鹿者がいた。

馬鹿者は世界が平和になればいいと思い、旅に出た。


ずっと昔に、ひとりの馬鹿者が歩いていた。

馬鹿者は争いを止めるために歩いていた。

争いあう人々の間に立ち、右からも左からも上からも下からも前からも後ろからも殴られ、蹴られ、

それでも馬鹿者は争いあう人々の間に立った。


ずっと昔に、ひとりの馬鹿者が立っていた。

馬鹿者は何も持たずに立っていた。

何かを持つことが争いの元だと知って、馬鹿者は全てを捨ててきたのだ。

立っている馬鹿者には誰も目もくれない。

何も持たなければ争わずに済むのだと馬鹿者は嬉しかった。


ずっと昔に、ひとりの馬鹿者が死んでいた。

馬鹿者には何もなかった。

親類も、縁者も、住む家も、友達も、食べるものも、着飾るものも、何もなかった。

世界が平和になればいいと思った、一人の馬鹿者の、心だけがいつでも平和だった。


ずっと昔に、ひとりの馬鹿者が死んでいた。

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