光誓会の花嫁だったのに金髪のイケメンと結婚できませんでした
金髪の王子様は、神の都合で消えました
——神が選ぶ。
そう聞いて、私は信じた。
それが“光誓会”に入った理由だった。
「あなたの結婚相手は、海外の信徒。金髪で青い目の青年です」
その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。
生まれて初めて“幸福”というものが、自分にも降りてくる気がした。
幼い頃から地味で、貧しく、誰からも選ばれなかった私に。
神が、王子様をくれるのだと。
合同結婚式の一か月前。
“国際マッチング”と呼ばれる会議があった。
花嫁候補の中でも特に「信仰心が厚い者」だけが、外国人信徒との結婚を許される。
私は選ばれた。
そう信じて疑わなかった。
通訳を通して届く相手のプロフィールには、
〈B-102:北欧出身・身長188cm・青い瞳〉
——と記されていた。
私は夜ごと祈った。
どうか、彼にふさわしい花嫁になれますように。
だが、式の前日。
担当の女性幹部が私を呼び出した。
「申し訳ありません。B-102番は、神の導きにより別の方と結ばれました」
「……え?」
「あなたは代わりに——B-718番と」
そこに記されたのは、
〈B-718:日本在住・身長162cm・再信仰組〉
再信仰組——つまり一度脱会して戻ってきた、要注意信徒。
私はそれを見て、思考が止まった。
合同結婚式当日。
花嫁衣装のまま、私は“背の高い王子様”の姿を探した。
だが壇上に立っていたのは、
猫背で汗を拭う小柄な男。
「今日からよろしくお願いします」
その声を聞いた瞬間、神の光が消えた気がした。
「神が決めたことに不満を持つのは罪です」
幹部はそう言った。
私は笑顔を作り、「はい」と答えた。
だが、心の中では叫んでいた。
——だったら最初から、夢なんて見せないで。
結婚生活は、寮の一室から始まった。
夫は信仰心だけは強かった。
毎朝3時に起きて祈り、仕事をせずに「布教活動」と称して街を歩く。
私は日中、光誓会の製品を売り歩き、
夜は寄付の帳簿をつけた。
一度だけ、「私たち、幸せなんでしょうか」と聞いたことがある。
彼は笑って言った。
「神に選ばれたんだから、幸せに決まってるよ」
その笑顔を見て、私はようやく悟った。
——この人も被害者なんだ。
半年後、夫は再び脱会した。
「やっぱり俺には信仰は無理だ」
そう言って出て行った。
幹部たちは私に言った。
「あなたが彼を支えきれなかったからです。
次の合同結婚式で、もう一度チャンスを与えましょう」
——チャンス?
ああ、そう。
神様の前では、私たちは永遠に“候補”でしかないのだ。
その夜、私は寮を出た。
街の明かりが眩しかった。
神の光よりも、ずっと現実的で、温かい。
ふと、ガラスに映る自分の顔を見て笑った。
「金髪の王子様なんて、いらなかったんだ」
そして私は、初めて自分の意志でパンを買った。
焼きたての匂いが、神よりも真実に思えた。
——私はもう、“選ばれない”生き方を選ぶ。




