表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

光誓会の花嫁だったのに金髪のイケメンと結婚できませんでした

作者: すじお
掲載日:2025/10/30

金髪の王子様は、神の都合で消えました


——神が選ぶ。

そう聞いて、私は信じた。



それが“光誓会”に入った理由だった。


「あなたの結婚相手は、海外の信徒。金髪で青い目の青年です」


その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。

生まれて初めて“幸福”というものが、自分にも降りてくる気がした。

幼い頃から地味で、貧しく、誰からも選ばれなかった私に。

神が、王子様をくれるのだと。



合同結婚式の一か月前。

“国際マッチング”と呼ばれる会議があった。

花嫁候補の中でも特に「信仰心が厚い者」だけが、外国人信徒との結婚を許される。

私は選ばれた。

そう信じて疑わなかった。



通訳を通して届く相手のプロフィールには、

〈B-102:北欧出身・身長188cm・青い瞳〉

——と記されていた。


私は夜ごと祈った。

どうか、彼にふさわしい花嫁になれますように。



だが、式の前日。

担当の女性幹部が私を呼び出した。


「申し訳ありません。B-102番は、神の導きにより別の方と結ばれました」

「……え?」

「あなたは代わりに——B-718番と」

そこに記されたのは、



〈B-718:日本在住・身長162cm・再信仰組〉

再信仰組——つまり一度脱会して戻ってきた、要注意信徒。

私はそれを見て、思考が止まった。



合同結婚式当日。

花嫁衣装のまま、私は“背の高い王子様”の姿を探した。

だが壇上に立っていたのは、


猫背で汗を拭う小柄な男。


「今日からよろしくお願いします」



その声を聞いた瞬間、神の光が消えた気がした。


「神が決めたことに不満を持つのは罪です」


幹部はそう言った。

私は笑顔を作り、「はい」と答えた。

だが、心の中では叫んでいた。



——だったら最初から、夢なんて見せないで。



結婚生活は、寮の一室から始まった。


夫は信仰心だけは強かった。

毎朝3時に起きて祈り、仕事をせずに「布教活動」と称して街を歩く。


私は日中、光誓会の製品を売り歩き、

夜は寄付の帳簿をつけた。



一度だけ、「私たち、幸せなんでしょうか」と聞いたことがある。

彼は笑って言った。

「神に選ばれたんだから、幸せに決まってるよ」

その笑顔を見て、私はようやく悟った。 



——この人も被害者なんだ。


半年後、夫は再び脱会した。


「やっぱり俺には信仰は無理だ」


そう言って出て行った。

幹部たちは私に言った。


「あなたが彼を支えきれなかったからです。


次の合同結婚式で、もう一度チャンスを与えましょう」


——チャンス?


ああ、そう。

神様の前では、私たちは永遠に“候補”でしかないのだ。



その夜、私は寮を出た。

街の明かりが眩しかった。

神の光よりも、ずっと現実的で、温かい。

ふと、ガラスに映る自分の顔を見て笑った。


「金髪の王子様なんて、いらなかったんだ」


そして私は、初めて自分の意志でパンを買った。

焼きたての匂いが、神よりも真実に思えた。


——私はもう、“選ばれない”生き方を選ぶ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ